ホームカントリーバイアスについての研究あれこれ

水瀬ケンイチ

2010年5月30日の記事「日本国民としての誇りはないのか」は、主に「ホームカントリーバイアス」についてのお話でしたが、予想以上に反響が大きかったので驚きました。

そもそも、ホームカントリーバイアスとは、投資家が何らかの理由によって海外投資に慎重になり、国内資産の投資に偏ってしまう傾向のことです。
今まで、個人的にはホームカントリーバイアスは避けるべき「心の癖」だと思っていましたが、いろいろな理由で肯定されてもいいものなのかもしれないと思いなおしたというお話でした。
でも、いろいろな理由って具体的に何だ?

そこで、ホームカントリーバイアスについての研究レポートを集めてみました。




■年金投資におけるHome Country Bias(ホームカントリーバイアス)について
(1998年4月 大和銀行 企業年金レポート)
http://www.resona-gr.co.jp/resona-tb/info/note/pdf/9804.pdf

かなり古いレポートですが、MPT(現代ポートフォリオ理論)とホームカントリーバイアスの関係について書かれています。
ホームカントリーバイアスの要因として、

・国内情報の入手の容易さ
・国の文化の相違
・投資家のリスク許容度の違い
・外貨建て資産に関する運用規制(リーガルリストルール)の存在

をあげています。
いずれも、それなりに合理的な要因ということができると思います。


■グローバル・マンデート運用の台頭とビジネスへの示唆
(2008年11月 野村総研 Financial Information Technology Focus)
http://www.nri.co.jp/opinion/kinyu_itf/2008/pdf/itf20081104.pdf

日本の年金におけるホームカントリーバイアス是正の動きについてのレポートです。
グローバル・マンデートとは、国際分散を徹底するより高次な視点から国内株式と外国株式の区別自体を廃し、「グローバル株式」という単一のアセットクラスとして運用するという考え方のことだそうです。


■ホームアセット・バイアスが生じる要因(1)~(3)
(2010年1月、2月、4月 ニッセイ基礎研究所 ニッセイ年金ストラテジー)
http://www.nli-research.co.jp/report/pension_strategy/2010/Vol163/str1001d.pdf
http://www.nli-research.co.jp/report/pension_strategy/2010/Vol164/str1002d.pdf
http://www.nli-research.co.jp/report/pension_strategy/2010/Vol166/str1004c.pdf

ここでいうホームアセットバイアス=ホームカントリーバイアスです。
このレポートでは、ホームカントリーバイアスの要因として、

・情報収集コストの存在
・情報の非対称性
・行動経済学的要因
・為替リスクの存在

をあげ、それぞれを検証しています。
私が思っていた「心の癖」というのは「行動経済学的要因」に含まれるようです。
ちなみに、レポートは(3)の先もまだ続くようですので、今後のレポートにも注目していたいと思います。


盛りだくさんですがこれらのレポートを読んでいただければ、是非はともかく、ホームカントリーバイアスにも一定の合理性があることがわかると思います。
また、一方で日本の年金においてそれを解消しようとする動きもあるようです。

ただ、これらのレポートは主に日本の年金を対象とした研究になっており、必ずしも個人投資家に当てはまるものばかりでもありません。
個人においては、特に「ある企業を応援したい」という考えがあるかもしれませんし、日本全体が過小評価されているという個人的見通しがあってもおかしくありません。

それらを踏まえたうえで、ホームカントリーバイアスを排除してアセットアロケーションを決めるか、受け入れてアセットアロケーションを決めるか、投資家各人が判断すればいいと思います。

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Posted by水瀬ケンイチ