証券優遇税制が廃止?でもその理由が…

水瀬ケンイチ

政府税調専門委で証券優遇税制を廃止すべきとの認識で一致したそうです。

【日経新聞2010年10月22日朝刊4面より引用】
証券優遇税制「廃止を」 政府税調専門委 市場活性に疑問
政府税制調査会の専門家委員会(委員長・神野直彦東大名誉教授)は21日開いた会合で、金融所得課税や相続税などの税制改革の課題について議論した。2011年末に期限を迎える証券優遇税制を巡っては、予定通り12年1月から廃止すべきだとの認識で一致。終了後に記者会見した神野氏によると、富裕層に有利な仕組みとなっていることに批判の声が相次いだほか、市場の活性化につながっているか効果が見えにくいとの指摘が出たという。
【引用おわり】

最終的には政治家で構成する政府税制調査会が12月中旬までに、専門家委の意見を参考にしながら判断するので、これで決定というわけではありませんが、聞こえてくるのがあまり筋の良い話ではありません。

たしかに、主要国の株式譲渡益課税の制度と比較すると、日本の証券税制はかなり優遇されていると思います。
これは意外と知られていない事実です。
<関連情報>
財務省WEBサイト 主要国の株式譲渡益課税の概要

しかし、政府税調専門委が言っている「市場活性に疑問」というのは理由としてどうかと思います。
現在、世界経済は100年に一度と言われた世界金融危機の影響で停滞しています。新興国の伸長でなんとか持ちこたえているものの先進国経済はまだガタガタというのが実態だと思っています。
そんな中、日本の株式市場が活性化しないのは一国の税制がどうのこうのというレベルではなく、世界経済の大きな流れの問題ではないでしょうか。
それなのに、現在の市況を見て、証券優遇税制に効果があるとかないとか論じるのはおかしな話です。



また、よく出てくる「富裕層に有利な仕組みとなっていることに批判」という話ですが、これもどうかと思います。
いろいろな意見が出て当然だと思いますが、いちインデックス投資家としては、「証券投資=富裕層」という発想自体が、若干偏った見方のように見えます。

例えば、株式インデックスファンドに1万円投資することは、金持ちだけの投資でもなんでもありません。言わば、僕たち庶民の投資だと思います。
普通のサラリーマンが毎月の給料の中から少しずつ積み立て投資をしている。これも立派な証券投資の姿です。
今や、1万円どころか1,000円から投信積み立てができるようになっており、証券投資=富裕層だけのものという発想自体がもう古いと言わざるをえません。

そもそも、僕たちの大切な年金をあずかるGPIFが証券投資をしているのですから、ほとんどの日本人が証券優遇税制の恩恵にあずかっていると言えます。
証券優遇税制は、「みんなに有利な仕組みになっている」というのが実態だと思います。

そう考えると、政府税調専門委は証券投資の実態を知らないのではないかという疑惑が出てきます。
メンバーを調べてみたところ、神野委員長を除く専門家委員会のメンバーは次の通り。

池上岳彦・立大教授
井手英策・慶大准教授
植田和弘・京大教授
大沢真理・東大教授
翁百合・日本総合研究所理事
関口智・立大准教授
田近栄治・一橋大教授
辻山栄子・早大教授
中里実・東大教授
三木義一・立命館大教授

政府税調専門委のメンバーは、ほぼ学者だけでした。
勝手な想像ですが、投信1,000円積み立てなどご存じなさそうです。
この方々が、証券投資の実態を正しく把握したうえで判断できているとは到底思えないのですが…。

証券優遇税制はその名のとおり優遇税制であることは間違いないですが、証券業界や金融庁から延長や恒久化を求める声がある中で、それを廃止するには、実態に則したきちんとした理屈がないといけないと思います。
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Posted by水瀬ケンイチ