世界市場ポートフォリオは効率的か?

水瀬ケンイチ

日本を含むグローバル株式指数をベンチマークとする株式運用(いわゆる世界市場ポートフォリオ)が広がりを見せていることに対する反論レポートです。

ニッセイ基礎研究所 ニッセイ年金ストラテジー
2010年12月号(vol.174) グローバル株式指数による運用は効率的か?

上記ニッセイのレポートでは、ざっくりまとめると、

・年金ポートフォリオの株式の国内比率は低下傾向を辿っている
・先進国のなかでも急速に進展しつつある少子高齢化など国内経済の相対的な低成長を見越した動き
・一方で世界市場ポートフォリオ(国内比率は10%)が広がりを見せていることも関係
・前提となるCAPM理論が間違っている
・株式の国内比率が10%となる外国株式の期待リターン水準は14%
・過去のパフォーマンスを見ても世界市場ポートフォリオはリターン・リスクの関係が効率的ではない
・少なくとも、グローバル株式指数による運用が全ての年金に共通する運用効率の改善策ではない

と指摘しています。

ハリー・マーコウィッツ、ジェームズ・トービン、ウィリアム・シャープと続くモダン・ポートフォリオ理論によると、CAPM理論が正しいなら世の中に効率的ポートフォリオはひとつしかなく、それは株式市場の縮小コピーであるということになっています。(臆病者のための株入門・橘玲著より)
それが、世界市場ポートフォリオということになります。
投資商品で言ったら海外ETFの「VT」や「ACWI」などが該当します。



世界市場ポートフォリオの場合、日本株式の比率は10%程度です。
しかし、上記レポートでは、日本株式比率が10%でいいためには、外国株式の期待リターン水準が14%ないといけないという図表が出ています。いくらなんでも現実的ではない水準です。
また、世界市場ポートフォリオより、日本株:外国株が50%:50%のポートフォリオの方が効率的だというグラフが出ています。
かなりの部分で世界市場ポートフォリオが否定されています。

おそらく、効率的市場仮説やCAPM理論を厳密に信じている人たちからすれば、このレポートは受け入れられないでしょう。
一方で、市場は効率的でもないしCAPMは間違っていると考えている人たちからすれば、このレポートは納得かもしれません。

個人的には、効率的市場仮説については、「ウォール街のランダム・ウォーカー」のバートン・マルキールと同じ「中間の立場」です。市場は情報をすばやく織り込むものの完全ではないという感じでしょうか。CAPMも美しいとは思いますがちょっと無理筋のような気がします。
だから、上記レポートはなるほどねと思う反面、効率的なポートフォリオを計算するのに、前提となるリスク・期待リターン・相関係数の数値に何を使うかでポートフォリオは大きく変わってくるので、上記レポートに出ている計算をそのまま信じることできないなと感じます。

自分が納得できるデータを使い、自分が許容できるリスク水準の中でなるべく高いリターンが見込めるようなポートフォリオを作ればよいと考えています。
その際に、世界市場ポートフォリオを参考にすることはあっていいと思いますし、運用の手間も考慮に入れると、人によっては世界市場ポートフォリオがしっくりくるという場合もあると思います。

また、実際の個人投資家の運用の場合、株式クラスの中身より、株式:債券の比率や、そもそもリスク性資産に資産の何割を投資するのかの方が、よほどリスク改善に寄与すると思われるので、株式クラスだけ捉えてその中身をギチギチと議論するのはやや不毛のような気がしています。


※言わずもがなですが、投資判断は自己責任でお願いします。

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Posted by水瀬ケンイチ