個人向け国債の商品性見直しは財務省の巧みな戦略

水瀬ケンイチ

財務省は個人向け国債の商品性を見直すと決めたそうです。

【日経新聞2010年12月23日朝刊1面より引用】
個人向け国債金利高めに 10年物 金融機関依存薄める
財務省は22日、個人向け国債の商品性を見直す方針を決めた。10年物(変動金利型)の金利について、現在の「基準金利マイナス0.8%」から「基準金利×0.66%」に変更。低金利下で民間の預金などより高めの金利が付くようにする。5年物(固定金利型)は発行から2年間は中途換金できないルールを改めて、1年後から換金できるようにする。低迷する個人向けをテコ入れし、金融機関などに偏った保有構造を改める狙いだ。
【引用おわり】

個人向け国債変動10の商品性が、

現方式 基準金利-0.8%
新方式 基準金利×0.66

のように変わるようです。
これにより、基準金利が2.35%までであれば、現方式よりも新方式の方が金利が高くなります。
記事では、「低迷する個人向けをテコ入れし、金融機関などに偏った保有構造を改める狙い」と書かれていますが、個人的には、「将来の金利急上昇時の国のダメージ軽減」が狙いのような気がします。



確かに、現在の低金利状態にあって、個人向け国債の目先の金利が高くなるのは個人投資家にとって魅力的でしょう。
基準金利が1.2%だと仮定すると、商品性変更により0.4%だった金利が0.79%になり、約2倍です。
しかし、しょせんは0コンマ○%の違いでしかありません。

基準金利が2.35%を超えると新方式は現方式よりも金利が低くなり始めます。
そして、基準金利が3%、5%、10%と大きく上がった場合を考えると、新方式の不利さがどんどん大きくなっていくのがわかります。

基準金利3%の場合 現方式2.20% 新方式1.98% その差0.22%
基準金利5%の場合 現方式4.20% 新方式3.30% その差0.90%
基準金利10%の場合 現方式9.20% 新方式6.60% その差2.60%

個人的には、せっかくの変動金利債の良さが減ってしまったように感じます。
日本国債が暴落し金利が急上昇する可能性がどの程度あるかはいろいろ言われていますが、万が一そうなった場合、国は金利負担のダメージを大きく軽減できるようになります。
財務省は、目先の小さな金利上昇をエサに個人向け国債をたくさん売り、かつ、将来の大きな金利上昇リスクも軽減するという巧みな戦略を採ったと言えると思います。

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Posted by水瀬ケンイチ