ある国の成長率と株式のリターンに相関はない?

水瀬ケンイチ

今朝の日経新聞に、米国バンガードCIOソーター氏のインタビュー記事「国力、株価を左右せず」が掲載されていました。
いわく、データを分析すると、ある国の長期的なGDP成長率が長期的な株式のリターンに影響を与えるとは限らないとのこと。

先日書いたブログ記事「バンガードの海外ETFラインナップが追加!?」で紹介したモーニングスターの対談記事でも、ソーター氏が同じようなことを話していましたが、今朝の日経新聞の記事の方が突っ込んだ内容になっていました。

【日経新聞2011年3月1日朝刊7面より引用】
――長期的な問題として、人口減少が日本の成長力を低下させるリスクに関心が集まっています。

「出生率の低さや高齢化が今後の成長力を押し下げ、デフレ圧力がかかる。そのことには注意が必要だろうが、日本の株価の足を引っ張るとは単純に言えない。知っておくべきことは、ある国の長期的な国内総生産(GDP)成長率が長期的な株式のリターンに影響を与えるとは限らない点だ。過去約100年にわたるデータを分析したうえでの結論だ」

「例えば1900~2009年の間に、米国の国力が英国を上回ったが、両国の株式のリターンはほぼ同じだった。ある国の成長力が下がっても、その国の上場企業の株価にマイナスになるとは限らない」

――理由は何ですか。

「成長率に対する期待が高い国ほど、それが足元の株価に織り込まれ割高になってしまうことが1つ。さらにGDP成長率の構成要素と、その国の上場企業の利益成長の源泉が必ずしも一致しないこと、なども理由だとみている」
【引用おわり】

これは悩ましい問題です。
いろいろなところで、「GDP成長率と株式のリターンは連動する」と書かれているのを目にしてきました。
一方で、この記事のように「相関はない」という意見もあります。



例を挙げてみます。まずは「相関が高い」派の意見から。

ニッセイ基礎研究所 年金ストラテジー (Vol.158) August 2009
「つまり、名目 GDP 成長率が高くなると、株式投資収益率はもちろん、国債流通利回りも上昇するから、長期投資家にとっては望ましい。(中略)株式投資収益率と名目 GDP 成長率の関係が深いことは当然だろう。経済活動が良好なら、企業の活動水準が高まり、それを反映して株価が上昇し、増配も行われるからだ」

平成22年度 年次経済財政報告(経済財政政策担当大臣報告)
「日本の場合、名目GDP成長率よりも実質GDP成長率の方が株価との相関係数は高い。株価が景気を映す鏡だとすれば、日本の株価が映しているのは、名目ではなく実質成長率で見た景気状況といえる。名目成長率の方がより「景気実感」に近いともいわれるが、株価との関連でいえば、景気実感よりも実質的な経済パフォーマンスにより連動しているということになる」

ほぼ確実に世界の経済成長があなたの財産に変わる最も賢いETF海外投資法(北村慶著)
「投資のリターンを高めるためには、経済成長が著しい国の株式や債券に投資すべきである」


国やシンクタンクなどでも、「GDP成長率と株式のリターンの相関は高い」と言っているようです。
一方、「相関はない」「相関は低い」派の意見はどうでしょうか?


株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす(ジェレミー・シーゲル著)
「高い成長率は、かならずしも高いリターンを意味しない。国外企業であっても、国内企業であってもおなじことだ。投資家リターンの基本原則にあるとおり、肝心なのは、成長率が期待に対してどうだったかであって、成長率そのものの水準ではない」

2010年2月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙
中国は絶好の投資先か?高成長国への投資が好成績を上げるとは限らない

「研究対象とした19カ国を見る限り、GDP(国内総生産)の実質成長率と実質ベースの株価上昇率との間には長期的にはややマイナスの相関関係が存在する。経済の伸び率が最も低い南アフリカ共和国の平均株価上昇率は2番目に高く、イタリアは平均の半分程度のGDP伸び率ながら平均の4倍近い株価上昇率を記録している」

■米国バンガードCIOソーター氏(上記の今日の日経新聞記事)
「知っておくべきことは、ある国の長期的な国内総生産(GDP)成長率が長期的な株式のリターンに影響を与えるとは限らない」


GDPの成長率とその国の株式市場への投資収益率は相関が高いのかどうか、専門家の間でも意見が分かれているようです。
個人的には、「分からない」というのが本当のところです。
データもいくつか当たりましたが、国の違いやデータ取得時期や期間の違いによって、結果はまちまちです。

ただ、いろいろと文献を見ていくと、どうも「程度問題」のような気がしてきました。
「一般にはGDP成長率と株価が連動すると言われているが、連動しないこともあるので注意」くらいでしょうか。
ただ、不振の日本株を語る時には「相関なし」と主張して、好調の新興国株を語る時には「相関あり」と主張して、意見を使い分けるのはよくないと思います。

いち個人投資家としては、学者ではないのだから、GDP成長率と株価が厳密な意味で相関が高いかどうかは、あまり興味はありません。どこに投資すれば資産が増やせるかに興味があるわけです。
GDPとの相関よりも、日本株式・先進国株式・新興国株式の期待リターンがプラスであることが重要。しかし、どこがどれだけ上がるかは実はよく分からない。ゆえに、世界全体に分散しておく。
そんなざっくりとした理解を胸に、GDPと株価を観察していればいいのではないかと思っています。

※言わずもがなですが、投資判断は自己責任でお願いします。
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Posted by水瀬ケンイチ