インデックス投資への「過剰期待」と「過小評価」 その1

インデックス投資がほんの少しは浸透してきたからなのか、ここのところインデックス投資についてのブログや本が増えてきました。

だいたいどれも「長期」「分散」「低コスト」をうたい、インデックス投資の優位性を分かりやすく説明しています。
いずれも投資の要諦でありとても大事なことなのですが、分かりやすくするために説明を簡略化した情報が増えてくることで、個人投資家の間でインデックス投資に対する「過剰期待」と「過小評価」が表れてきているのではないかと感じています。

自分もそれに引っかかっているかもしれませんので、ここらで整理しておきたいと思います。
インデックス投資にもいろいろありますが、ひとまずここでは「インデックスファンドの積み立てによる国際分散投資」と定義して、個人的によく見かける過剰期待と過小評価の例をそれぞれ列挙してみます。

まずは過剰期待から。

≪インデックス投資に対する過剰期待≫

(1)インデックスファンドならすべて良い
→インデックスファンドの中にも、コスト、トラッキングエラー、継続性などの面において、相対的に良いインデックスファンドと悪いインデックスファンドがある

(2)インデックス投資ならマイナスにはならない
→よく分散したインデックス投資でも、ポートフォリオの損益がマイナスになることはある(マイナスになってもマイナス幅が小さくなるリスク低減効果はある)

(3)期待リターン分の利益が毎年コンスタントに出る
→各インデックスの期待リターンとその発生確率は、概ね左右対称の釣鐘型の分布になり、1年後の実際のリターンは上にも下にもブレる(ざっくり半分の確率で期待リターンを下回る)。預貯金の利率とインデックス投資の期待リターンを同列に扱うのは実態に合わない

(4)過去のデータからリスクと期待リターンが自動的に計算できる
→各インデックスの過去のデータから、ポートフォリオのリスクはある程度計算できても、期待リターンには人の考えや予測の余地が入る。またその期待リターンがアセットアロケーションに与える影響が小さくない

(5)期待リターンの複利で増える
→単利ではないが、ポートフォリオのリスクが高いと、長期では期待リターンの複利に届かない確率が高くなる(期待リターンよりも低い複利になる)

(6)効率的フロンティアは不変
→効率的フロンティアを算出するための係数(相関係数など)は日々変動しているので、効率的フロンティアはどんどん変わっていってしまうもの

思いつくのはこんなところでしょうか。他にもあるかもしれません。
「ええ~そうなの?」「話が違うじゃないか」と思われたかたもいらっしゃると思います。
私も知ってびっくりしたことがいくつかあります。
分かりやすく優位性を説明しようとすると、上記のような誤解が生まれるという副作用もあるようです。
通り一遍のインデックス投資解説に飽きてきたら、少し細かい事柄にも着目していくと、意外な事実があって驚かされることがあります。

次回は、逆の「過小評価」について整理したいと思います。

(次回に続く)
関連記事


  





コメント

データの示し方による過剰期待

過剰期待の中で深刻なのは「インデックス投資ならマイナスにならない」だろうと思います。

これは、たぶん、インデックス投資を推奨する人のデータの示し方と解釈の考え方に問題があるように思います。たとえば、A,B、C、Dのアセットクラスに適当な割合を決めたポートフォリオのリターンを過去何十年か(期間の取り方もつごうのいいものを取ることが多いが)について示して、「ホラ、○○年持つとマイナスにならないでしょ!」と示したような顔をするやり方です。

仮に運用期間が20年あるとすれば、100年分のデータを取っても、独立な「20年間の運用」の事象数は5つだけです。5が全てOKであっても、とても証明になどなりません。しかも、この際、配分は、後知恵で決めることができる(たとえば、金利低下期の債券が入っているとシャープレシオはとても有利に作れる)。

私の記憶では、これは、二十年前に三流証券会社が「シミュレーション」などと称して配っていたレポートによくあった、都合のいいデータのつまみ食いと同じ手口です。しかし、「(ほぼ)絶対マイナスにならない」というメッセージはシンプルで強力なので、読者も食いつきやすいし、B級入門書(読者がではなく、著者の質がB級以下の本という意味です)の著者もこのストーリーを使いたがる、ということなのではないでしょうか。(この点、水瀬さんと私のようなキマジメな著者は苦労することになります)

我々に出来るのは、今後のリスクと期待リターンについてせいぜいもっともらしいと思われる数値を推定(つまり予想)して、その推定の信頼度も疑った上で、論理的にはどんな比率がベストか計算する程度のことです。いわゆる機関投資家がやっているのも、その程度のことでしかありません。

いろんな意見があって。。。

わかりやすさと網羅性ってトレードオフな気がしています。
(かと言って、意図的に誤解させて優位性を示すのは反則とも思いますが)

ここしばらく、インデックスなりアクティブなり、長期なり短期なり、色々な意見を聞いて、情報に埋もれてしまった感じもあります...

結局、いろんな人がいろんな想いを話すので、決める前まではしっかり吟味して、決めたあとは簡単にブレないようにする必要があるかなと。

でもブレないっていうのも、「他人の話を聞くだけ聞いて吟味はしない」ということでもありそうで、悩ましいです...

意思決定の強さってことでしょうか。


過小評価の記事、期待してます。

出口

あとは、出口戦略について(あんまり?)語られてないところも期待値を上げてるような気がします。
取り崩す時期の市況が悪ければ、パフォーマンスを一気に下げますので。

私の周りも・・

私の周りでも最近、インデックスによる国債分散投資を行っている方が増えてきているなあ と感じています。よいことですよね。

それにしても、以前水瀬さんもおっしゃってましたが、楽天証券ブログ【山崎元「ホンネの投資教室」】は本当に貴重な情報を出し惜しみせずに書いて頂いて有難いです。

独協大学の学生さんはホント羨ましい・・。私も社会人コースのようなものがあればお金を払ってでも是非とも参加したいものです。

最近気になるのは

色々な本を読むと複利の曲線が描かれて元手と運用収益が区別されず常にプラスになって、最終的にウン億円やウン千万円に到達するような絵を見かけます。天の邪鬼な自分は「ホントかぁ?」と、疑ってしまいます。ウン億円へ到達するにはそれなりの投資額が必要なのに前後のページ「1000円で分散投資」みたいな記事があり、勘違いさせるのでは?と。インデックスでも何でも得意不得意があることはキチンと理解しないと火傷しますね。勉強すればメリットはたくさん出てきて頭に残り易いですが、本当は、デメリットにこそ目を向ける必要があるのでしょうね。インデックス投資家が書く「インデックス投資の限界 これ以上いきません」といった本があったらすぐ買うのですが( ̄▽ ̄;)そんなの見当たらないですしね。そういった意味でも今回の記事は自身の考えを纏めさせてもらうのに大変参考になりました。

最近は信じられないようなQ&Aが登場

4の場合はですが、過去のデータから期待リターンを想定する場合は、例えば50年も経っていればその国の経済成長率やインフレ率なども変わってくるので、単純に過去のデータをそのまま持ってくるのは問題かも知れません。
そんな時は保守的な予想をしている年金基金を参考にしています。
最近のOKWaveのQ&Aでも出てきましたが、あるFPがお勧めしている変額年金保険の期待収益率年8.1%、運用コスト2.8%、実質期待収益率5.2%と言う物です。
このFPは分かっているのかどうかは真相は不明ですが、驚きを隠せません。
これも恐らく過去の都合のよいデータを取って期待収益率を出したのだろうと考えていますが・・・

5については、過去の野村ファンドネット証券や野村の401Kの説明でも複利の事が度々出てきているので、これはインデックスに限らないと思います。

それから、出口戦略の件も書かれているので補足しておきますが、恐らく出口戦略については正しい知識が無いと市況が良くてもパフォーマンスを落とします。
つまり、4で推定した期待リターンが正しくて、仮に複利計算の通りになったとした時でも失敗する事は十分考えられると思います。

真夜中のブログ更新だったから、夜行性の山崎さんから一番コメントが入りましたねっ!…というのは冗談ですが、こういうブレーキタイプの記事は貴重ですね。

実際にはインデックス投資をしていないのに、その当たり前のデメリットや不確実性を列挙して否定するだけの記事はたまに見かけますが、今回のエントリは実践者による冷静な現実直視(前提確認)だからこそ、読み手にしっかり伝わるんだと思います。

半分以上の人が、期待リターンに届かない

(3)「ざっくり半分の確率で期待リターンを下回る」
→誤りです。
特に全額インデックス株ように、リスクが20%程度あると、
期待値と、中央値(=半分の確率値)と、最頻値は大きくズレます。
つまり、少数勝ち組と、多数負け組に分かれます。

ちょっと話が違いますが、友人でも「銀行が売ってるんだから」
「プロが運用してるのに何で?」という人がいます。
インデックス投資も魔法の杖でも何でもなく無難に分散投資出来る
良いツールという認識で購入出来ればいいのですが、どうしても
「リスクが低い」と誤解されることもあるんじゃないかと思います。
それは単一の個別株との比較やアクティブFに比べコストが有利という
ことなのですが、そこらをもうちょっと強調していかないと、やっぱり
投資なんてしても損するだけじゃんってなってしまうのかもしれませんね

全ては「仮定」の話

以前、相続関連の税制改正セミナーに参加した時、
某証券会社主催だったので第二部で生前贈与をインデックスの積立投資で
しませんかという軽いノリのセミナーも付帯していたのですが、
内容がまぁなんというか・・・セルサイドの都合の良い意見が
多く散りばめられたセミナー資料と内容で、正直呆れてしまいました。

更に言えば、リスク説明なんて殆どなく、
年率ウン%が毎年得られるような書き方をされていて、
これは相当の人間が誤解するだろうなと。
(「仮定の話」としての注釈はありますが、
なら逆のパターンも記載してしかるべきではないかと。)

暦年贈与の非課税枠を利用した生前贈与による相続税対策の場合、
連年贈与認定回避には当然ながら毎年拠出額を変更する必要があり、
それもまた定期積立とは違うじゃないかと突っ込みたい所でした。

つまりは全てに置いて「儲ける事」「儲かる事」が前提に来ていて、
「損する可能性」「確実性があるわけではない」というリスク面が
おざなりになっている部分が結構多いのではないかな、
と思った次第です。

>山崎元さん

「インデックス投資ならマイナスにはならない」という思い込みはかなり根強いようで、あちこちで見聞きします。
逆に、「もはやインデックス投資ではプラスにならない」と強弁する人たちもいたりして、話がややこしくなります。
本を書く機会をいただきつくづく思いましたが、物事を正しく伝えることは本当に難しいですね。


>PETさん

投資に唯一無二の正解はない以上、いろいろな情報を見て、自分がいちばん納得できる方法をやるということに尽きるのではないでしょうか。


>ひでさん

「出口戦略」を何と捉えるかにもよりますが、運用終盤での暴落に備えるという意味では、年齢やリスク許容度に応じたアセットアロケーションの変更(具体的には債券クラスへのシフト)がよく言われていますよね。

資産の取り崩し方という意味では、以下をご参考まで。
http://randomwalker.blog19.fc2.com/blog-entry-1502.html


>かずちんさん

山崎さんの出し惜しみのなさはすごいですね。
本の内容をどんどんブログや無料セミナーで公開されるのでこっちが「飯の種なのに大丈夫なのだろうか?」と余計な心配をしてしまうくらいです。


>胴長兄ちゃんさん

参考になったのであれば幸いです。
今は思い出せませんが、まだまだ他にもありそうなので、思いついたらまた書くかもしれません。


>タカちゃんさん

期待収益率年8.1%って、どんなハイリスク運用なんでしょう?(^^;
いろいろなFPさんがいるものですね。

出口戦略の失敗というのは、リタイアして国民年金・国民健康保険になった際の、資産売却益が保険料などに及ぼす悪影響の話でしょうか?


>虫とり小僧さん

ブレーキタイプの記事を書くのは、自分を振り返ることにもなり、けっこう好きです。

インデックス投資に対する否定意見については、的を射たものもあれば的外れなものもあると思います。
的外れなものについては、その2の記事にも書きましたのでよろしければご覧ください。
http://randomwalker.blog19.fc2.com/blog-entry-1721.html


>Kさん

だから「ざっくり」なのですが…こういう簡略化した説明が過剰期待や誤解を生むんですよね。反省。


>宮さん

「インデックス投資も魔法の杖でも何でもなく無難に分散投資出来る
良いツール」というのは過剰期待も過小評価もないナイス表現だと思います。
ブログで使わせていただいてよろしいでしょうか?


>楽天家業さん

プロはプロでも、リスクを隠しつつウソを言わずに金融商品を売る「プロ」にご用心、ですね。

水瀬さん

ブログで使わせていただいてよろしいでしょうか?
→はい。自由にお使いください^^;

コメントの投稿

※現在、コメント欄の運用は停止しております。書き込まれても反映されませんのであらかじめご了承ください。

非公開コメント

トラックバック

件数別ランキングの2大勢力

JUGEMテーマ:資産運用 -----------------------------------------------------当ブログにはじめてお越しの方、お時間が許せばご覧下さい。(長文です)当ブログにはじめてお越しの方へ (2010年10月)-----------------------------------------------------【STAM ...

広告

ブログ内検索

ファンドで選ぶ証券会社

楽天証券
・主要インデックスファンド購入可(たわらノーロード、三井住友DC専用、ニッセイ、インデックスe、SMT、eMAXIS、Funds-i等)
・投信積み立てもスポット購入も月100円から
・海外ETF購入可(Vanguard、iShares等)
・海外ETFの特定口座対応&外貨での入出金可
今なら、各種取引で最大130,000円分獲得キャンペーン実施中(2017/08/31まで)

SBI証券
・主要インデックスファンド購入可(たわらノーロード、三井住友DC専用、ニッセイ、インデックスe、SMT、eMAXIS、Funds-i、EXE-i等)
・投信積み立てもスポット購入も月100円から
・海外ETF購入可(Vanguard、iShares等)
・海外ETFの特定口座対応&外貨での入出金可
今なら、総合口座開設&各種お取引で最大100,000円プレゼントキャンペーン実施中!(2017/08/31まで)

マネックス証券
・主要インデックスファンド購入可(たわらノーロード、三井住友DC専用、ニッセイ、SMT、eMAXIS、Funds-i等)
・投信積み立てもスポット購入も月1,000円から
・海外ETF購入可(Vanguard、iShares等)
・海外ETFの手数料ネット証券最安、特定口座対応
・米国ETF手数料実質無料サービス「ゼロETF」あり

カブドットコム証券
・一部インデックスファンド購入可(SMT、eMAXIS、Funds-iなど)
・投信積み立ては月500円から
・海外ETFの取り扱いはないが、所定の国内ETFが売買手数料無料の「フリーETF」サービスあり

セゾン投信
・これ1本でVanguardの超低コストインデックスファンド8本に国際分散投資できる「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」が購入可
・投信積み立ては月5,000円から

人気記事ランキング

ブログパーツ

逆アクセスランキング

アクセスランキング

過去記事(月別)

RSSフィード

カウンター(2006.1.27設置)