ネット証券4社共同プログラム『資産倍増プロジェクト』への落胆と期待

水瀬ケンイチ

ネット証券4社共同プログラム『資産倍増プロジェクト』に対する評価がガタガタのようです。

基本的な理念はよかったと思います。
資産倍増プロジェクト公式サイトにはこうあります。

資産倍増プロジェクトとは?
1960年に池田内閣が立ち上げた「所得倍増計画」は、10年間で国民所得を倍増させることを目標に掲げ、さまざまな政策によって当時の高度経済成長を実現させました。所得水準が伸び悩む現在、お客様の資産形成を全力で支援していくことが証券会社の果たすべき役割だと考え、今回、投資信託を取扱うネット証券4社が集まりました。このネット証券4社は、お客様の資産倍増を目指し、今後共同でさまざまなプログラムを実施してまいります。この企業の枠組みを超えた「資産倍増プロジェクト」に、ぜひご期待ください!


なかなか良いことが書いてあります。
大いに期待した個人投資家も多かったのではないでしょうか。

私は今年の3月に当ブログで「ネット証券4社共同プログラム『資産倍増プロジェクト』に求めたいこと」という記事を書き、その中で「資産形成層に向けた正しい知識を広めてほしい」という要望を表明していました。
具体的には、コスト、分散、リスク、シンプル、税金という資産運用の基本的要素について、ネット証券4社をあげて啓発してほしいと書きました。(別にインデックスファンドだけにしろとは言ってませんよ^^;)
まぁ個人ブログの意見など関係者は誰も見ていないかもしれませんし、これも世の中に数ある資産運用の考え方のひとつに過ぎません。でも、それでもいいと思って書きました。

予定されていた大規模イベントは東日本大震災の影響で中止になってしまいましたが、資産倍増プロジェクト専用投信が次々と発表されはじめました。

第1弾の投信、「日本応援株ファンド(日本株)」はなかなか良い商品だと思いました。
日本株のアクティブファンドで、販売手数料はなし(ノーロード)で信託報酬は年率1.05%とアクティブファンドとしては低く、しかも2年間は年率0.46%を東日本大震災復興のために寄付するといいます。

ところが、第2弾あたりから雲行きが怪しくなってきます。


「新興国中小型株ファンド」。
その名のとおり新興国の中小型株アクティブファンドです。
新興国&中小型株という超ハイリスク分野にいきなり飛び込んできた感じがしました。
販売手数料はなし(ノーロード)ですが、信託報酬は年率1.995%と「高っ!」と言わざるを得ません。
この辺で、「資産倍増プロジェクトって、投資家じゃなくてネット証券の資産倍増プロジェクトなのでは?」という揶揄をネット上でちらほら見かけるようになってきました。

とはいえ、新興国の成長には期待が高まっているし、投資家側がハイリスクであることと高コストであることを承知したうえで更なるパフォーマンス向上を狙い、リスク許容度の範囲内で投資するにはアリなのかなとは思いました。
でも、果たしてこれが、資産倍増プロジェクトの理念に沿ったものなのかどうか、少し疑問を持ち始めました。

そして、第3弾です。
「ネット証券専用ファンドシリーズ 新興市場日本株 レアル型」。
信託報酬は年率1.657%と、日本株式のアクティブファンドとしてはやや高い部類です。
日本の新興市場株式のアクティブファンドなのですが、毎月分配型&レアルヘッジ&ファンドオブファンズというコンボできました。
投資対象が国内資産なのに、わざわざブラジルレアルでヘッジするという珍妙な仕上がりです。

これは、私がブログ記事「ネット証券4社共同プログラム『資産倍増プロジェクト』に求めたいこと」の中で求めていた、コスト(アクティブファンドとしても信託報酬がやや高い部類)、分散(投資対象が一国の新興市場とニッチ)、リスク(日本の新興市場は資産形成層のコアになりうる信頼性があるのか?)、シンプル(なぜ日本株投信にファンドオブファンズ?なぜ国内資産を外貨でヘッジ?)、税金(毎月分配は頻繁な課税により投資効率が悪い)という基本的要素のすべてで落第と言えると思います。

同記事の中で、「ネット証券の販売シェアを30%にあげるのに手っ取り早いのは、今、大手証券や銀行が売りまくっている「毎月分配型」や「通貨選択型」の投資信託を少しコストを下げて、ネット証券で売るというようなことではないかと思います(やめてくださいね)」とも書きました。
思いっきり該当していて、なんだか悲しくなりました。

「お客様の資産形成を全力で支援していくことが証券会社の果たすべき役割」と言ってたのに、毎月分配型や通貨選択型は、現在、主に資産形成を終えた高齢者層に受けている商品です(これも良いことなのか微妙ですが)。
でも、まぁ、販売側からしたら、どんなに立派な理念を掲げていても売れなきゃしょうがないわけだし、実際売れるかもしれないし、対面販売で今売れているものをマーケティングして新規設定したらこうなったというだけのことなんだろうなぁ……_| ̄|○

などと凹んでいたら、rennyさんのブログにびっくりするようなことが書いてありました。
rennyの備忘録
「ネット証券専用ファンドシリーズ 新興市場日本株 レアル型」は醜悪そのもの

特筆すべきは、そのコメント欄に、資産倍増プロジェクト公式サイトのインタビュー記事に出演していたカン・チュンド氏と竹川美奈子氏がそれぞれこう書かれていたことです。

カン・チュンド氏
「すっごく残念です..。なにか新しいことが始まる期待でわたしの胸は膨らんでいたのですが、急激に萎んでしまいました..。4社共同の難しさが露呈してしまった格好です。未来にチャレンジするよりも、(安全パイな)現実に逃げてしまった感があります..。」

竹川美奈子氏
「私もカンさんと同じです・・・。正直、落ち込んでます・・・。
と同時に、今回のことで「自分で調べて行動する個人投資家が増えていく」ことの大切さを改めて実感しています。今まで以上に頑張らなくてはいけませんね-。」


自プロジェクトの広告塔にこんなコメントさせるような商品を出して、これからいったいどうするのでしょうか。

もっとも、ネット証券4社共同プログラム『資産倍増プロジェクト』の活動は、専用投信の新規設定だけではないようです。
専用投信設定ではいまいち調整がうまくいかなかったかもしれないが、別のプログラムではなにか良いことをしてくれるのではないか?
そんな(淡い)期待を持って、これからの活動も注視しようと思っています。
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Posted by水瀬ケンイチ