よく引き合いに出される数字や言葉を疑ってみる

水瀬ケンイチ

日本の個人金融資産1400兆円は過大評価で、正味466兆円との見方があるようです。

ロイター 2011/07/01より引用】
日本の個人金融資産は過大評価、正味金融資産は466兆円=「財産白書」
船井財産コンサルタンツは1日、国内で初めて、資産家・富裕層、企業・法人のオーナーに特化した財産に関する調査リポート「財産白書」を発表した。
日本国民の保有する金融資産額は、日銀の資金循環勘定にある「家計資産総額」から不動産等を差し引いた1400兆円という数値がしばしば引用されるが、白書によると、これには個人事業主の事業性資金が含まれており、いわゆる個人の資産という概念から、差し引いて考えるべきとの見方を示している。
【引用おわり】

よく言われる個人金融資産1400兆円には、個人事業主の事業性資産が含まれているとの指摘は初めて聞きました。
日本国債が暴落しない理由として、この個人金融資産1400兆円という数字が引き合いに出されることが多いのですが、それが実は466兆円しかないということになると、ちょっと事情が変わってきてしまうような気がします。
まぁ、個人事業主の事業性資産だって国民の資産には変わりないのだから、立派な拠り所だという意見もあろうかと思いますが。

1400兆円の話はともかく、一般的によく新聞やニュースで用いられている数字や言葉について、本当にそれが正しいのかを疑ってみるというスタンスはとても大切だと思います。



似たような話が、インデックス投資においてもあります。
投資本やマネー誌の中でよく用いられる数字あるいは言葉について、詳しく調べてみると、実は論拠があやしいものが相当数あります。

例えば、「アセットアロケーションが投資成果の8~9割を決める」という数字がよく使われます(私も使っていました)。
しかし、もう少し細かく見ると、アセットアロケーションが8~9割を決めるのは「ファンドの時系列変動」に対してであって、「ファンド間のリターン格差」に対しては、69%(イボットソン・アソシエイツ・ジャパン)、40%(米国イボットソン)、15%(企業年金連合会)と説明力の数字にバラつきがあります。
投資本やマネー誌で用いられる際、アセットアロケーションの過大評価になっていないか、注意する必要がありそうです。
<出典>「ポリシー・アセットアロケーションの説明力」(イボットソン・アソシエイツ・ジャパン 小松原宰明著)

また、「ファンドは複利で増えていく」とよく言われます。
年率の期待リターンで右肩上がりに二次曲線的に伸びていくグラフを見たことがあるかたも多いと思います。
相互リンクブログ「ファンドの海」のイーノ氏は、ファンドは単利ではないがリスクが高いとリターンが削られ、期待リターンの複利には及ばない可能性が高くなることを証明して見せました。
これにも驚かされました。
(だからといって増えない=投資の意味がないということではないのでご注意)
<出典> 投資信託のブログ|ファンドの海
2009/08/08 連載:リスク資産の複利確率(28)~最終回「総集編」

冒頭の話に戻りますが、「日本の個人資産が1400兆円」という言葉が出てきた時に、「実は正味466兆円しかないかもしれない」ということを頭の片隅に置きながら、それに続く話を聞くと、より客観的に捉えることができるかもしれません。
きっと思考停止していたアタマが働きだします。

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Posted by水瀬ケンイチ