その個人向け社債はほんとうに投資に値するのか?

水瀬ケンイチ

個人向けのSBI債の人気が出すぎて、毎回売出しから数分で瞬間蒸発してしまうので、今後は抽選になるそうです。

SBI債に限らず、個人向け社債というのはそんなに良い金融商品なのでしょうか。
私は大いに疑問です。

日経新聞を読んでいるかたはわかると思いますが、いろいろな大企業が「○百億円起債する」というニュース自体はよく見かけます。
いち読者としては「へ~そうなんだ」くらいにしか思いませんが、考えてみると、そこで記事になっているいろいろな企業の社債を、個人投資家である私が買えるという話を聞いたことがありません。
自分が口座を開いている証券会社では、個人が買える社債は一部の銘柄(ほんの数銘柄)に偏っており、先ほどのニュースに出ているようなバラエティに富んだ企業の社債は見当たりません。

何故でしょうか?



それは、基本的に社債はプロの間で取引されているものだからです。
そもそも社債は、取引所に上場されていて誰でも売買できる株式と違って、相対取引です。
誰がどこでどんな条件で売っているのか、なかなか掴みづらいところがあります。
売り出された社債は相対取引により、大きなロット(億単位)でプロの間で取引されています。
信用リスクが低い多くの大企業は、プロ向けに社債を発行するのがいちばん効率がよいのです。

取引が小口になると稼動がかかるうえにコストがかさみます。
(社債の券面が1億円未満だと、「社債管理者」の設置が義務付けられています)
では何故、企業はそんな稼動とコストをかけてまで、個人向け社債を発行するのでしょうか?
いろいろな理由があると思いますが、いちばん大きな理由は、

その発行条件では、プロの間では誰からも相手にされないから

だと思います。
つまり、発行企業が持つ信用リスクが、社債の利率・期間と見合わないと見なされているということです。
発行企業はできるだけ低コストで資金調達したいでしょうから、まずはプロ向けに社債を発行しようとします。
そこでは、相手にされないような条件(利率・期間)しか提示できない場合に、「それなら個人で向けで」という段階を踏むと思われます。
当然、管理コストは上がるので条件はますます悪くなります。

こうした現実の「仕組み」を考えると、個人に回ってくる社債は、もしかしたら「残り物」である可能性があります。
「どうせ素人は企業の信用リスクを適正に算定することなどできないだろうし、利率を定期預金よりちょっと高めにしてやれば喜んで飛びついてくるだろう」
そんなことを発行企業が考えているかどうかは知るよしもありませんが、そういう企業もなくはないでしょう。
なぜならそれは、低コストで資金調達をしたい発行企業としては合理的な判断だからです。

こういうことを書くと、「じゃあお前はSBIホールディングスが1年以内に倒産するとでも思っているのか?」という反論が聞こえてきそうですが、倒産かそうではないか、白か黒かの二元論ではなく、リスクに見合ったフェアな条件ではない取引の可能性があるのは?ということです。

もちろん、発行企業の信用リスクを把握した上で、それでもなお個人向け社債の条件が魅力的だと考えるのならば、何も申しあげる事はありません。
発行企業もいろいろで条件も様々でしょうから、なかにはフェアな条件の個人向け社債もあると思います。
ただ、長い間高格付けを誇っていた東京電力債も、あっという間にあんなになってしまう世の中です。信用リスクの見積もりは個人には相当難しいと言わざるを得ません。

少なくとも、個人向け社債の利率を、定期預金などと同列に比較して、「これはお得だ」という判断をすることは避けた方がよいと思われます。


※言わずもがなですが、投資判断は自己責任でお願いいたします。また、記事中に出てくる企業名はあくまで例としてあげただけであり、特定企業に対する他意はありません。

関連記事


投資判断は自己責任でお願いします。当ブログの情報により投資判断を誤ったとしても、管理人は責任を負えません。また、当ブログ内容の無断転載を禁じます。

Posted by水瀬ケンイチ