日本でインデックスファンドが広がらない本当の理由

水瀬ケンイチ

モーニングスターに、「日本では広がらないパッシブファンド」と題したコラムが掲載されています。(注:パッシブファンド=インデックスファンドです)

モーニングスター アナリストの視点(ファンド)
2011-07-14 日本では広がらないパッシブファンド

詳しくは上記コラムをご覧いただきたいのですが、内容をひと言でまとめると……いや、実際に日米のパッシブファンドの純資産額と投資信託全体に対する純資産額シェアの推移のグラフを見てもらった方が一目瞭然です。

国内のパッシブファンドの純資産額とシェアの推移
日本のパッシブファンドの純資産額と投資信託全体に対する純資産額シェアの推移

米国のパッシブファンドの純資産額とシェアの推移
米国のパッシブファンドの純資産額と投資信託全体に対する純資産額シェアの推移
(モーニングスター アナリストの視点(ファンド)2011-07-14より)

若干、グラフのマジック(日本のグラフはシェアの目盛りが5%~30%で、米国のグラフはシェアの目盛りが5%~15%で、米国の右肩上がり感がより強調されているとか)はあるものの、インデックスファンドのシェア推移のトレンドが見事に逆さまです。

コラムでは、日本でインデックスファンドが広がらない理由として、日本の投資家が、分配金利回りを重視する傾向にあるからだと結論付けています。
もちろんそれもあるでしょう。
しかしながら、私の見方は少し違います。



ひとことで言えば、日本のインデックスファンドのシェアが低いのは、「証券業界の投資家誘導の結果」だと考えています。

つまり、日本の投資家が自らの意思で分配金利回りを重視しているのではなく、証券業界側が意図的にそう誘導しているためだと考えています。
なぜ、証券業界が投資家の目を分配金利回りに向けさせているかといえば、それは言うまでもなく、高い手数料(販売手数料・信託報酬)が取れる投信だからです。
日本の投信は、その資産額の低迷をよそに、手数料だけは勢いよく右肩上がりになっています。
<関連記事>(特にコスト右肩上がりのグラフに注目!)
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高分配金を謳う「毎月分配型」の投信は、資産の自動取り崩しという高齢者のニーズにマッチしているから売れるのだという意見がある一方、証券業界が行動ファイナンスでいうところの「時間選好率の歪み」(報酬を早く受け取ることの時間的価値評価が直近重視に歪む傾向)をマーケティングに悪用し、投資家の目をコストから逸らせる目的があるのではないかという意見もあります。
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最近になって証券業界は、「毎月分配型」に加えて「通貨選択型」というオモチャも手に入れ、毎月分配型のはしりであったグロソブが可愛く見えるほど、ますますコストは高くなっています。
私の見立てでは、証券業界はこの「毎月分配型」「通貨選択型」に続く、また新たなオモチャを早晩開発し、喧伝しだすと見ています。
それは、証券会社お得意の「回転売買」を投資家にさせて販売手数料を取るためです。

ところで、なぜ証券業界のそんな横暴が許されているのでしょうか?
許すも何も、そもそも、日本の証券市場自体が、欧米のように起業家・投資家のために自然発生的に生まれたものではなく、国による「官製市場」だったことと、投信も商品そのものの意義を期待されて登場したというより、国策として相場の値崩れを防ぐための手段として登場したという歴史があります。
その後も、証券業界により日本の投信は「個人投資家のお金を巻き上げる器」として駆使されてきた歴史があります。悲しいことですが、事実です。
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そんな中で、低コストが売りの(証券業界の利幅が薄い)インデックスファンドが広がっていくわけがありません。

投資家のためではなく、国や証券業界のために投信が存在してきたという歴史と環境の中で、上記コラムは、インデックスファンドが広がらないのは「分配金利回り重視の投資家の姿勢」と投資家に責任転嫁して、あろうことか現在気を吐いて頑張っている一部のパッシブ運用会社に対して、「パッシブファンドの運用や設定に力を入れる委託会社はあまり報われないことになりそうだ」と呪いの言葉(?)まで吐いており、強い違和感を覚えます。

最後に、私の個人的意見は上記のとおりですが、よく言われるとおり投資は自己責任の世界です。
いくら証券業界が熱心に投信を勧めても、それを勝手に投資家の口座に放り込むことはできません。
投信を購入するという最終判断は、投資家自身が下している(ことになっています)。
日本の投信の不幸な歴史や環境を踏まえた上で、私たち投資家側も少しだけ賢くなって、証券業界ばかりが儲かる商品には、堂々とNo!と言えるようになりたいものです。
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Posted by水瀬ケンイチ