お金を投げ捨てる男が変わったきっかけ

水瀬ケンイチ

学生時代、いつものようにファミレスで会計を済ませた時、当時付き合っていた彼女が言いました。

「水瀬っていつもお金を投げ捨てるようにして払うよね。感じ悪いからやめた方がいいよ」

ええっ本当に!?
自分としてはそんなつもりはまったくなかったので、とても驚いた記憶があります。
彼女曰く、ファミレスだけでなく本屋やコンビニなどでも、いつも同じようにお金を投げ捨てるように放り出しているとのこと。
でも当時は、「なんだよ細かいこと言いやがって」くらいにか思っていなかったと思います。
(若さゆえの過ちです。お許しを…)

自分に心当たりはなかったのですが、無意識のうちにお金を雑に扱っていたようです。
今にして思えば、当時はお金を使うことに関して、なにかやましいことをしているような思いがどこかにあったような気がします。
きっと、「こんなやましいやりとりは早く終わってくれ!」という思いが、お金を投げ捨てるように出すという行動になってあらわれていたのでしょう。

その根底には、「お金は汚いものだ」という観念があったのだろうと思います。
残念なことに、もしかしたらそれは、成人してからもずっと続いていた可能性があります。
なにしろ、本人に心当たりがないのですから。

でも、彼女に言われたことは心のどこかに引っかかっていたように思います。



投資を始めてからもしばらくは、個別株の短期売買を重ね、相手を出し抜く、あるいは相手の裏をかくために、四苦八苦していました。そんな中では、「投資とは他人からお金を奪うことだ」という意識でいたと思います。
(なんという、恥ずかしいステレオタイプ!)
それが、インデックス投資を始めてから、だんだん考え方が変わってきました。
落ち着いてゆっくりとお金について考えてみる時間ができたのでしょう。

そもそも、自分が会社からもらうお金(給料)はどこから来ているのか?
社長から?
いや、別に社長がポケットマネーから私に給料を払ってくれているわけではない。

では誰か?
会社のお客さんだろう。お客さんが払ってくれたお金の中から、私は給料をもらっている。

そのお客さんは、社員である私に給料を払うためにお金を払ってくれたのか?
いや、お客さんは会社が提供する商品・サービスの対価としてお金を払ってくれたのだ。

それはどんな気持ちか?
お得、便利、満足、感謝、そんな気持ちだろう。

いや、渋々払っているお客さんもいるのでは?
たしかに。でも、そういうお客さんは二度とうちの会社の商品・サービスは買わないだろう。
今、曲がりなりにも会社が存続しているということは、全体的には「満足>渋々」なのだろう。逆に言えば、会社はお客さんに満足を提供し続けなければ生き残っていけない。

ここまで考えが巡って、やっと腹に落ちました。
お金というのは相手からの「満足や感謝の気持ち」のしるしなのだと。
あらためて考えてみると、たくさん読み漁った投資本の中にも度々、「お金は感謝の気持ち」というフレーズは出ていました。ただ、私はそのフレーズを目で追ってはいましたが、メッセージは受信できていなかったのだと思います。
(本当に恥ずかしいことです)

今では、「ありがとう」という気持ちをこめてお金を扱っています。
お店では、相手が間違えないように、なるべく「はい、1,050円で」と金額を言ってから、相手が分かりやすいように紙幣と硬貨を並べて出すようにしています。
相手に向かって投げ捨てるような雑な扱いはもうしません。

マネー本によくある「お金持ちとは多くの感謝を受けている人だ」という主張は、昔であれば、「ケッ世の中悪いことしてる奴が儲かるようになってんだよ!」と一笑に付したかもしれませんが、今では、割と本気でそのとおりだと思っています。

かつて私にお金の払い方を指摘してくれた彼女とお別れしてから、もう十数年経ちます。
今さらながら、当時の彼女、ありがとう。

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Posted by水瀬ケンイチ