「国際のETF VIX短期先物指数」は投資家にとって最高のヘッジ手段か?

水瀬ケンイチ

ロイターによると、最近の相場下落で、「国際のETF VIX短期先物指数」(1552)が注目されているそうです。

ロイター 2011/09/12より引用】
〔アングル〕「恐怖指数」関連ETFにヘッジ需要、不透明な投資環境が追い風
VIX指数(恐怖指数)関連の上場投信(ETF)が、投資家のヘッジ手段として注目されている。12日の東京市場では「国際のETF VIX短期先物指数」が年初来高値を更新。欧州債務問題や米国経済の失速懸念などを背景にリスクアセットの下落が続くなか、相場のボラティリティの高まりとともに、相場動向と逆相関する可能性の高いVIX指数関連ETF投資が浸透しつつある。同ETFについては「機関投資家、個人投資家を問わず、投資家にとって最高のヘッジ手段」(マネックス証券のチーフ・ストラテジスト・広木隆氏)との声もでている。
【引用おわり】

個人投資家がこの商品を使って、相場下落を「ヘッジ」することに反対するつもりはありません。
ただ、この記事が「機関投資家、個人投資家を問わず、投資家にとって最高のヘッジ手段」とベタ褒めしているのには違和感を感じます。
なぜなら……



「国際のETF VIX短期先物指数」は長期的に減価する仕組みであることを書かずに、一見すると、まるで保有し続けているだけで相場下落をヘッジできる「保険」であるかのように書かれているように見えるからです。
一度、このロイターの記事から離れ、このETFの運用会社、国際投信のWEBサイトの情報を見てみましょう。

国際投信投資顧問 WEBサイト
VIX短期先物指数ってなに?ファンドの留意事項

Q.ボラティリティが低い局面では減価し続けるのはなぜですか。(1)
A.ボラティリティが低いとき(相場の動きが静かなとき)、VIX指数先物の価格曲線は、下図のように右肩上がりの形状となります。この状況で、価格が安い第一限月を売却し、高い第二限月を買う取引を繰り返すため、【S&P 500 VIX短期先物指数】は徐々に減価し続けます。
(水瀬注:図については資料の5ページ参照)

Q.ボラティリティが低い局面では減価し続けるのはなぜですか。(2)
A.ボラティリティが低いとき(相場の動きが静かなとき)、【S&P 500 VIX短期先物指数】が減価し続けるのは、主に【S&P 500 VIX短期先物指数】の算出に用いられているVIX先物の「時間的価値」の変動によるものです。


この説明は、いわゆる「コンタンゴ」について書かれているのですが、インデックスファンドの積み立て投資だけをしている個人投資家には難しすぎるかもしれません。
資料の9ページには、こうまとめられています。

当ファンドは、【S&P 500 VIX短期先物指数】に連動することを目指すリスクの高い投資信託です。
したがって、投資をされる際には、以下の点に充分にご注意ください。
・当ファンドは、リスクが高く売買タイミングの見極めが難しい商品です。
・当ファンドは、長期保有には適さない商品です。
・当ファンドは、ヘッジ目的に用いる場合はヘッジ比率の見極めに注意を要する商品です。


要するに、「国際のETF VIX短期先物指数」は、売買タイミングを見極めて短期投資する高リスク商品であり、相場下落時の保険代わりに長期保有することには不向きなのです。
それをあたかも、これを保有し続けているだけで突然の相場下落をヘッジできるかのような印象を持たせるのは、ミスリードを招きかねないと思います。

「いや、そんなことは分かっている。記事にも“8月のようなボラタイルな動きをする相場では、VIX指数関連商品への投資は有効”と前提条件を書いてあるではないか」というご意見もあろうかと思います。
まったくそのとおりです。こういう商品は世の中に必要です。
8月のようなボラタイルな動きをする相場が来ることが事前に分かっていて、そのタイミングに合わせて投資できる投資家であれば、この商品は「機関投資家、個人投資家を問わず、投資家にとって最高のヘッジ手段」だと思います。

ただ、バイ&ホールド戦略の投資家には向かないことを、運用会社自ら公開している商品であることを、ゆめゆめお忘れなく。

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2010/12/27 「VIX短期先物指数」(1552)の問題点
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Posted by水瀬ケンイチ