恒例のマスコミによる公的年金叩きですが、よく見ると各社で違うぞ…

水瀬ケンイチ

公的年金資金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、2011年度7-9月期の運用利回りがマイナス3.32%になったと発表しました。

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 最新の運用状況ハイライト
平成23年度第2四半期運用状況

恒例のことですが、公的年金の運用実績がマイナスになった時には、マスコミは大きく取り上げます。
2011年7-9月は欧州債務危機が直撃し、世界の投資家の多くは大きなダメージを受けました(もちろん私もダメージを受けました)。
その中で、3.32%程度のマイナスで済んでいるのは、むしろよくやった方だと個人的には感じています。
まあ、そうは言ってもマイナスであることには変わりないので、ネガティブな報道になることは仕方がないことでしょう。

しかし、マスコミ各社の報道を比較すると、中には「いくらなんでもこれはおかしいだろう?」と首を傾げたくなる報道もありました。



ネットで公開されている範囲でしか分かりませんが、例えば、YOMIURI ONLINEは「年金積立金、7~9月の運用は3・7兆円の赤字」と題した記事の中で、3.7兆円という「損失額」だけを掲載し、「11四半期ぶりの大きさとなった」と分析して見せていますが、その「収益率」(もしくは運用資産額)を載せていません。

同じ3兆円の損失でも、総額10兆円のうちの3兆円と総額1000兆円のうちの3兆円では意味合いが違います。
GPIFの運用資産額は世界でも有数の規模なので、金額だけ取り出せばそりゃあ大金に見えます。しかし、言うまでもなく、運用成果は収益率で表さなければ良し悪しなど判断できません。

他のメディアを見ると、日経電子版asahi.com毎日jpは、3.7兆円という損失額を前面に押し出していますが、マイナス3.32%という収益率も併記しています。
これは最低限の報道だと思います。

比較的、好感が持てたのは、NHKロイターです。
両社とも、今期のマイナスだけを書き立てるのではなく、GPIFの運用開始からの累積収益額が約19兆円のプラスであることも掲載しています。
ここまで掲載されていれば、現状の全体像が分かり、無用な不安を煽り立てることもないでしょう。

公的年金に関しては、人口増加を前提とした制度設計であることや、年金未納問題、マクロスライド方式の未実施等、多くの問題を抱えていることは事実です。
しかし一方で、資産運用については、比較的真面目に行われているというのが、運用をウォッチしている私の認識です。

年金は国民の最大級の関心事であり、マスコミ各社は不安を煽る方向だけに張り切るのではなく、良いことも悪いことも含め、きちんと「事実」を伝えてほしいと思います。


P.S
本文にも書いたとおり、ネットで公開されている範囲での情報収集なので、「新聞本紙には詳細が書いてある」等の事情はあるかもしれません。だからと言ってネットでは不適切な情報のみでよいということにはなりませんが。
関連記事


投資判断は自己責任でお願いします。当ブログの情報により投資判断を誤ったとしても、管理人は責任を負えません。また、当ブログ内容の無断転載を禁じます。

Posted by水瀬ケンイチ