ブームが下火になってから規制しても遅い、通貨選択型投信

水瀬ケンイチ

「通貨選択型投信」の販売について、金融庁が規制を強化することになりました。

ロイター 2011/12/06より引用】
金融庁、「通貨選択型」投信の販売規制を強化
金融庁は、金融機関が「通貨選択型」投資信託を販売する際の規制を強化する。関係筋が5日、明らかにした。投資家が商品のリスクを理解しているかどうか書面での確認を金融機関に求める。監督方針に沿った措置で、年内にも監督指針の改正案を取りまとめる。

金融機関が販売する際、運用する債権などの価格変動だけでなく為替変動のリスクについても投資家が理解しているかを書面で確認させる。費用をかけず迅速にトラブルを解決する趣旨の金融ADR(裁判外紛争解決)制度についての顧客への説明も改めて求める。
【引用おわり】

当ブログでも、通貨選択型投信の商品性の複雑さと高いリスクについては、何度も何度も警鐘を鳴らしてきました。

2010/08/13 債券投信はいいけど通貨選択型には気をつけて
2010/08/15 銀行の投信販売好調はいいですが
2011/06/28 ネット証券4社共同プログラム『資産倍増プロジェクト』への落胆と期待
2011/07/21 毎月分配型投信や通貨選択型投信もいいけれど、売る方も買う方もしっかりしよう
2011/09/26 通貨選択型投信、特にレアル型がえらいことに…

繰り返しになりますが、通貨選択型投信は、投資対象資産のリターン、為替ヘッジプレミアムによるリターン、選択通貨の値上がりによるリターンの3つの収益獲得を目指した投信です。この仕組みとバランスを理解できるかたが自己責任で購入するのはいいです。でも、理解できないかたは、よく言われる「自分が理解できないものには投資しない」という原則に従っておいた方がいいと思われる商品です。



ロイターの記事では、投資家が商品のリスクを理解しているかどうか書面での確認を金融機関に求めるそうですが、上記3点のリターン(裏表でリスク)を理解することは、かなり難しいと思われます。

個人的には、ひとつひとつのリスクはなんとか理解できても、それがひとつの投信として組み合わさった時に、全体でどの程度のリスクになるのかを把握するのが特に難しいと感じます。
以前調べた例では、米国ハイ・イールド債券をブラジルレアルでヘッジした場合のリスク(標準偏差)を算定したところ、リスクは原資産の18.4%から40.6%まで上昇したということでした(該当記事)。

この難しい内容を、今後は投資家に理解させて書面で確認するということですから、これはよいことだと思います。
きちんと運用されることが条件ですが、理解していないかたが購入してしまう(理解していない客に売りつけてしまう)ことが減ることが期待されます。

しかしながら、証券会社から銀行まで巻き込んだ通貨選択型投信の一大販売ブームも、既にピークは過ぎた感があります。
通貨によって投信の基準価額が急落しています(該当記事)。
ヘッジする新興国通貨、特に一番人気だったブラジルレアルが8月頃から下落し始め、9月以降中央銀行が利下げしたことで急落したことが理由にあると思います。
これは「長期的には高金利通貨は下落する」という為替の理論とも整合的です。

本当は、もっと早く対処すべきだったと思います。
今後の新規購入者に対して規制を強化しても、既存の通貨選択型投信購入者にとっては、既に思いもよらぬ損失を被った後かもしれません。

もちろん、投資は自己責任です。
中には通貨選択型投信の仕組みを理解していた投資家もいらっしゃったと思いますし、実際、リターンが上昇していた時期もありましたので、よい思いをした投資家もいらっしゃると思います。
ただ、販売に対する規制が強化されるくらいですから、販売の仕方に問題がなかったとは言えない状況であったということは、残念ながら想像に難くありません。
世界の片隅からではありますが、ずっと警鐘を鳴らし続けてきた者としては、ブームが下火になり始めた後での規制強化は、なんとも後味の悪さが残る顛末です。

通貨選択型投信が売りにくくなった今、金融業界はまた新たな金融商品を開発するでしょう。それがどんなものになるのか、まだ分かりません。
ただ、ひとつ言えるのは、投資家が自分の身を守るには「自分が理解できないものには投資しない」という原則に従うことがますます大切になってくるということだと思います。
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Posted by水瀬ケンイチ