楽天証券・ブラックロック共催ETFブロガーセミナー「グローバル投資、次の一手」参加レポート (その2)

水瀬ケンイチ

前回の記事『楽天証券・ブラックロック共催ETFブロガーセミナー「グローバル投資、次の一手」参加レポート (その1)』の続きです。
繰り返しになりますが、内容については、水瀬の主観による省略やまとめが含まれることをご了承ください。

パネルディスカッション「世界のETF事情」
 ブラックロック ラス・ケステリッチ氏
 ブラックロック・ジャパン 渡邊 雅史氏
 楽天証券 新井 党氏

司会「米国ではETF市場が大きく伸びたが、その理由は?」
ラス氏「大きく分けて二つある。一つは、ヘッジファンドが流動性を提供してくれたこと。二つ目は、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)がETFを勧めてくれたこと。それに加えて、株式以外にも投資先が拡大したことがある。株式ETF→債券ETF→コモディティETFなど」

司会「日本のETF市場の状況は?」
渡邊氏「日本のETF市場では、まだ株式ETFがメイン。しかし、債券等Fixed incomeはETFにすることで取引コストを抑制できる。例えばハイイールド債のバスケットは2.5%~3%のスプレッドだが、ETFだと数十ベイシスで済む。Fixed incomeでもETF化が進むと思われる」

司会「日本のETFの人気・傾向は?」

新井氏「金ETFや銀ETFが売買代金上位に入ってきている。専門業者でしか取り扱えなかった商品が証券市場で扱えることの意味は大きい。債券ETFが良いと言うが、日本ではまだまだ株式中心」

司会「ETFはトレード型の投資家とアセット型の投資家と、どちらに向いているか?」
(水瀬注:トレード型というのは短期投資型、アセット型というのは長期投資型のことだと思われます)

ラス氏「両方いた方がETF市場全体としてはありがたい。例えば、セクターETFは機関投資家のトレーダーの活用が多い。逆に、コアファンドはバイ&ホールド型の投資家に人気がある。FAが推奨しているのも大きい。銘柄により違いが大きい」




司会「米国ではFAの役割が大きいとのことだが、楽天証券のIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)の状況は?」

新井氏「楽天証券にはネットとIFAの二つのビジネスがある。海外投資にネット投資家の目を向けさせるのは難しい。海外ETFを出してきたが、正直それほど普及していない。まして、IFAではもっと普及していない。その意味では日米に大きなギャップがある」

司会「日本のETF市場の拡大に必要なものは?」

渡邊氏「IFAのインセンティブ構造。米国ではこれがうまくいった。詳しくはラスから」
ラス氏「米国のFAは、Fee for serviceという形がうまく浸透した。当初FAは商品販売のマージンが儲けの源泉だったが、Fee for serviceでは、AUM(運用資産)総額で手数料が決まる。顧客の利益とFAの利益がマッチした」

司会「米国ではレバレッジ型ETFやインバース型ETFが流行している。SEC(証券取引委員会)が敏感になっており、フラッシュ・クラッシュ(当ブログの関連記事)の要因になったとの意見もあるが、どう考えるか?」

ラス氏「SECの調査では、ETFがフラッシュ・クラッシュの原因ではない。マーケットメーカーの撤退やアルゴリズム取引が増えたのが原因だろう。ただ、インバース型等への懸念も理解できる。複雑なデリバティブを使った商品である。あまり注意を払われていないが、トラッキングエラーが発生してインデックスをアンダーパフォームしている。そのあたりを機関投資家は理解して短期投資に活用している」
渡邊氏「そういう意味で、先ほどETFの名前の整理が必要だと話した。上場商品全体をETP、現物に投資している長期投資向け商品をETFとしたい」

司会「日本のETF市場は機関投資家の利用が少ないと言われている。その比率や状況を教えてほしい」

渡邊氏「日本でも機関投資家はETFを使っているが、TOPIXや日経225が中心で海外モノは使われていない。機関投資家は低コストな投資信託により海外資産への投資が容易である。ただ、リーマン・ショックがきっかけとなり、すぐに資産配分の調整ができるETFのメリットは認識されてきた」
新井氏「日本では機関投資家は参加しにくい。MSCIコクサイやエマージングの国内ETFもあるが、その中身は先物やリンク債。機関投資家が本来リスクヘッジを考えなくて良いところで考えなくてはいけない。米国はマーケットメーカー制度が充実しているが、日本は流動性の供給に課題がある。リベートやペナルティが不十分であり、NAVと市場価格の乖離もある。これらが機関投資家が参加しずらい理由。ラス氏からも説明を」
ラス氏「マーケットメーカー制度には二つの側面がある。上場XXXX(メモが汚すぎて文字判別不能。スミマセン…)。日本では今後リサーチが必要なテーマだろう」


司会「日本のETF市場(国内ETFおよび海外ETF)成長のファクターは?各々ひと言ずつ」
渡邊氏「ETFというツールに対して、ちゃんと使えるようなインフラを提供すること。FAにインセンティブを出す等。投資家のニーズに合致し、より良いものとして選んでもらえるものにする必要がある」
新井氏「個人向けのこうした啓蒙活動、セミナーやWebコンテンツをやっていく必要はある。日銀のETF購入で認知度も高まってきた。あとは機関投資家が入ってこないとETF市場は盛り上がらない。IFAの制度も改善の余地がある。米国でもETF市場はできてからまだ18年しか経っておらず、日本のETF市場はまだ発展途上」
ラス氏「今の話と一致している。投資家教育がいちばん重要。米国でも18年かかったので日本でも時間はかかる。投資家の行動を変えるためには、プロモーションが必要。ETFのメリットや使い方を教育する必要がある。しかし、あと数年経てば日本でも立ち上がるだろう」


パネルディスカッションは以上です。

日本の国内ETF市場は、まだまだ立ち上がっていないようです。
個人投資家の面では、FAがAUM(運用資産)の積み上げで利益を得る形になっていないことが課題のようです。
これは、FAだけの問題ではなく、そもそも日本の金融機関自体が、株式委託手数料や投信の販売手数料で稼ごうという体質で、AUM(運用資産)の積み上げで信託報酬で稼ぐという形になっていないので、なかなか難しい問題かもしれないなと思いました。

機関投資家の面では、マーケットメーク制度に課題があるようです。
個人的にも、国内ETFの基準価額と市場価格の乖離をずっとウォッチしているので(当ブログの関連記事)、ETFのマーケットメークに関してはまったくの同感です。
長期保有の場合、基準価額と市場価格の乖離が数百ベイシスもあっては、信託報酬が投信より数十ベイシス低いといっても、せっかくの低コストが台無しです。
マーケットメーカー制度の充実と、米国のヘッジファンドのような盛んに短期売買する主体が活用してくれることを期待したいところです。

ただし、日本の海外ETF市場については、利用されない大きな原因として、楽天証券を含むネット証券では特定口座に対応していないということがあると思います。
一般口座では、海外ETFの売買により確定申告が必要になったり、自営業やリタイア後の方々にとっては運用益のせいで健康保険料が高くなってしまう場合があります。
今まで、特定口座対応を何度も要望してきましたし、セミナー当日も楽天証券の方々に個別に要望しました。
大手証券では既に対応していることもあり、時間はかかるかもしれませんが、諦めず粘り強く要望していこうと思います。


セミナー全体を通して、ブラックロックというETFの世界No.1運用会社から直接お話を聞けたことがとても貴重な体験になったと同時に、勉強にもなりました。
コア&サテライト戦略の、「コア」の話ではなくアクティブな「サテライト」の話を持ってくるあたり、さすがブラックロックといったところです(もしバンガードだったら、きっとコアの話になったんだろうなぁ)。
ラス氏の「ETF市場にとっては、短期投資家と長期投資家の両方がいた方が良い」という言葉が、ETFプロバイダーらしくて印象的でした。
日本のETF市場はまだまだ発展途上ですが、米国のように時間をかけて少しずつ良くなればいいなと思いました。

2本の記事にわたって長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
このレポートが皆さまのなにかのお役に立てば幸いです。

世界のET市場の資産残高推移

(おわり)

※言わずもがなですが、投資判断は自己責任でお願いします。

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Posted by水瀬ケンイチ