投資を始める前の「家計診断」を自分でやる方法

ミもフタもないお話ですが、世の中には、家計的に投資をやっていい人と、やらない方がいい人の二種類がいらっしゃいます。

しかしながら、家計的に投資をやっていい人がひたすら貯金に勤しみ、本来やらない方がいい人が熱心に投資して苦戦しているケースがしばしば見受けられます。投資を始める前の、この出発点の判断を間違えると、将来、苦しい局面に追い込まれかねません。

投資は自己責任で自由にやればいいという考え方もありますが、なにか合理的な判断基準のようなものはないのでしょうか。

金融機関は教えてくれない「家計診断」の方法

私自身、10年前に投資を始めるにあたって、いろいろな本を読んで、「自分は投資なんかやって本当に大丈夫なのか?」ということをずいぶん調べました。
そこで分かったことは、良心的な投資本には、投資を始める前に、まず「家計の診断」をするように書かれていることが多いということです。

しかしながら、このことは、できるだけ多くのお金を運用に回してほしい金融機関側にとって都合が悪いことなので、金融機関では積極的に語られることはありません。
お金を払ってファイナンシャル・プランナー(FP)に相談することもできるのですが、さすがのFPも相談者の収入や借金までは分からないので、結局、自分の家計のさまざまな数字を調べてきてくださいという宿題を出されることになります。

であれば、ざっくりとでも自分で「家計診断」をできないか?と考えるのは自然なことだと思います。今回は、今までいろいろ見てきた中で、いちばん簡単かつ本質的な方法をご紹介します。



自分でやる家計診断に必要な数字は6つだけ

以下の数字をざっくりとで構わないので把握します。コツはざっくりと把握し、厳密に考え過ぎないことです。あくまで家計の全体像を把握することが目的なので、ざっくりとでいいんです。
厳密にやろうとすると年間支出の項目で挫折します…(;´∀`)

(1) 金融資産(預貯金・国債・株など数日で換金できるもの)
(2) 実物資産(不動産や高級車などをざっくり時価換算したもの)
(3) 短期負債(銀行や消費者金融のカードローンやキャッシングなどの残高)
(4) 長期負債(住宅ローンや自動車ローンなど数年以上にわたる借金)
(5) 年間収入(給料などの収入。額面ではなく手取り額で)
(6) 年間支出(ざっくりとで構わない)

それを、以下の図表「家計のバランスシート」「家計の損益計算書」にプロットします。

家計のバランスシートと損益計算書
そして、
(X) 自己資本=(1)+(2)-(3)-(4)
(Y) 年間余裕額=(5)-(6)
を計算しましょう。計算といっても、足し算と引き算だけなのでそんなに難しくないと思います。
金額をプロットしたら、金額の大小に合わせて多少ハコの高さを変えて、図を手書きしてみると分かりやすいです。



家計のハコの形で分かる、投資に適さない家計とは?

では、家計診断開始。典型的な家計のパターン別に、投資に適しているかどうかを説明します。

≪パターン1≫ 短期のローンで不健全な家計
短期ローンで不健全

(3)短期負債(カードローンやキャッシング)が多く、(X)自己資本や(Y)年間余裕額がほとんどない家計は、残念ながら投資には適していません。
カードローンやキャッシングの金利は10%以上ある場合が多く(個人の信用状況により異なりますが)、投資の期待リターンの水準(数%)をはるかに上回ります。比較以前の問題です。FPなら、まずは生活を見直し、これを返済することから始めるべきなどとアドバイスするところでしょう。


≪パターン2≫ 住宅ローン残高が多い家計
住宅ローン残高が多い家計

住宅を買ったばかりで住宅ローンがあと何十年も残っており、最終的な返済額が大きい。多少の年間余裕金額はあるが、現時点では、返済予定額が資産額を上回っている。そんな状態です。
(2)実物資産と(4)長期負債が同じ金額じゃなければおかしいじゃないかと思われるかたがいらっしゃるかもしれませんが、長期の住宅ローンでは最終的な返済額が住宅自体の時価よりもはるかに大きくなります。

金融機関側はハッキリとは言いませんが、住宅ローン残高が大きい家計は、投資には適していません。
上記の表の状態は、企業に置き換えたら、実質的に「債務超過」の状態です。債務超過だからといって、即、倒産するわけではありませんが、なんらかの改善が求められる不健全な状態であることは間違いありません。

FPなら、共稼ぎで収入を増やすとか、生活を切り詰めて支出を抑えるなどをして、少しでも住宅ローンの返済を進めるべきですなどとアドバイスするところでしょう。
厳しいようですが、投資どころではないと心得るべきです。

「そんなこと言ったって、祖父母も両親も、みんなそうやってきたじゃないか」
たしかに、少し前までは、日本の若者世代の標準的な家計の形だったのかもしれません。
しかし、時代が変わっているのも事実です。

昔は、購入した不動産は放っておいてもどんどん値上がりしていき、同時に激しいインフレにより、借金の実質的な負担もどんどん小さくなっていく、という幸せな時代が過去何十年か続いていました。しかし、それも長い日本の歴史から言ったらほんの一時期に過ぎません。現在の消費者物価指数(CPI)や地価の動向を見るにつけ、今後もそれが期待できるかどうかは甚だ疑問です。

実際は住宅ローンで家を買う方々はとても多いです。
金融機関が上記のようなことを言ってしまうと、顧客が半減してしまうので、まず言うことはないでしょう。また、当ブログでも、上記のようなことは多くのかたの反感を買うことは承知しています。でも、これから投資を始めようというかたには、目を背けないでぜひ知っておいてほしい現実です。



つい投資を始めたくなるが、理解が問われるハコの形

次は、損益計算書(毎年のお金の収支)だけ見ると、つい投資を始めてもいいような気になってしまうが、そのためには投資について誤解なく現実を知っていなければ危険という家計です。

≪パターン3≫ ギリギリプラスのローン家計
ギリギリプラスのローン家計

パターン2から住宅ローン返済が進み、(4)長期負債が減ってきて(同時に、(2)実物資産の価値も減ってきますが)、資産と負債がバランスし債務超過ではなくなった状態です。
(1)金融資産として少しは預貯金があるし、(Y)年間余裕額もそれなりある。このような状態では、「そろそろ投資でも」となりやすい時期でもあると思います。

しかし、厳しいかもしれませんが、この状態でも投資には適していないと思われます。
株価や債券価格が少し値下がりしただけで、(1)金融資産が目減りし、すぐにパターン2の債務超過状態に逆戻りする可能性を抱えている状態とも言えるからです。
投資する前に、(Y)年間余裕額の範囲で住宅ローンの返済をして、(4)長期負債を減らす方が合理的でしょう。

一部、現在の超低金利下(たとえば30年固定の住宅ローン金利が2%台など)では、住宅ローン返済を急がず、同時に毎月の余裕額を運用(期待リターン数%)に回した方がよいとの言説も散見されます。

しかし、金利状態がどうあったとしても、本質的に「ローン返済は確実、投資のリターンは不確実」であることに変わりはありません。
住宅ローンの返済は「無リスクで確実にリターンを得られる見逃せないチャンス」であるとも言えるので、ほとんどのケースでは、住宅ローンの返済を優先した方が「無難」だと思われます。(金利動向に賭けて「不動産投資」をするつもりなら止めませんが…)

投資未経験者のなかには勘違いしているかたがけっこういらっしゃいますが、投資をすれば、期待リターン内外の利益が毎年コンスタントに得られるというわけではありません。たとえば、期待リターン6%のポートフォリオだったら、5%、6%、4%、7%、6%…といった調子で利益が得られるというイメージを持っていませんでしょうか?

実際は、ひどいマイナスの年が続くこともあるし、大きく十数%プラスの年もあり、長期にわたる投資期間を平均すればこのくらいの計算になる可能性が高いですよ、という程度の「目安」でしかありません。
住宅ローン金利と投資の期待リターンは、単純に比較できるものではないという現実を知っておくと、後々「こんなはずでは…」と頭を抱えながら数年間を過ごすというような事態にならなくて済みます。

どうしても投資を始めたいということであれば、リスク許容度(年間いくらまでの損に耐えられるか)は小さい状態であることを十分認識したうえ、少ない投資額にとどめるか、低リスクなポートフォリオにするか等の配慮が必要だと思われます。(関連記事



それでは、どんなハコの形が投資に適しているのか?

≪パターン4≫ 元気な現役世代の家計
元気な現役世代の家計

(3)短期負債がない上に(4)長期負債も小さく、(X)自己資本が大きい。そして、(6)年間支出がよく抑制されていて、毎年の(Y)年間余裕額が多い。
投資を始めるのに理想的な状態です。

たとえ一時的に損失を被っても、毎年の(Y)年間余裕額の流入により、カバーできる余裕があります。
ご自身のリスク許容度を鑑みて、心地の良い投資額・ポートフォリオで、投資を始めてみるとよいと思います。なにも(Y)年間余裕額のすべてを投資する必要はありません。当初は少額にて、お試し運転をするのもよいでしょう。


≪パターン5≫ 潤沢な資産を取り崩す家計
潤沢な資産を取り崩す家計

(3)(4)などの負債がなく、(1)金融資産が潤沢にある状態。ただし、(5)の年間収入は少なく、潤沢な(1)金融資産を取り崩しながら生活している状態。

日本の高齢者世代に多い家計です。
日本人の寿命は世界的にも長く、老後の期間は現役期間を超えるとも言われています。
高齢者であっても、パターン5の状態で(1)金融資産が潤沢であれば、投資を始めることはアリだと思います。ただ、新たな収入に乏しいので、失敗した時のリカバリーがききません。手堅く運用する必要はあると思います。

金融資産の額にもよりますが(たとえば100億円所有していれば1億円をどんな投資に使っても問題なしですが)、一般的には、リスク許容度は小さい家計であることが多いと思われます。少ない投資額にとどめるか、低リスクなポートフォリオにするか等の配慮が必要だと思われます

また、大金を所有していることで、頻繁に金融機関からのセールスがあるかもしれません。「私をお客さま扱いしてくれる」などと言って気持ちが緩んでしまうことのないよう、「自分がわからないものには投資しない」という鉄則を心に留めておくとよいでしょう。

ただし、この世代にとって最も重要、かつ、金融機関は決して教えてくれないポイントは、あまり考えたくありませんが、「亡くなるまでに使い切れないくらいの資産があるのなら投資など必要ない」ということです。人生を満喫していただきたいと思います。



以上、ざっくりとした簡易版ですが、投資をやっていい家計かやらない方がいい家計かについて、自分で「家計診断」する方法をまとめました。
さて、あなたはどちらでしょうか?


※本記事は「お金をふやす本当の常識―シンプルで正しい30のルール」(山崎元著)を参考に、補足・修正してまとめさせていただきました。ありがとうございます。

<追記> 2012/8/21
この記事に関連するブログ記事を書きました。ご興味があればご覧ください。
http://randomwalker.blog19.fc2.com/blog-entry-2092.html
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