青い約束の憂鬱なリアリティ

日経新聞田村氏の「青い約束」(田村優之著)を読みました。

青い約束 (ポプラ文庫)青い約束 (ポプラ文庫)
田村優之

ポプラ社 2012-08-07
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本書は、債券アナリストの主人公が20年前に恋人と親友を同時に失ったある事件について、思わぬ人物との再会から真相が明らかになっていく…というフィクションの小説です。涙なしには読めません。

フィクションではあるものの、日経編集委員の田村氏らしく日本経済についてリアルに描かれており、メインストーリーを楽しみながらもサイドストーリーで日本経済や債券市場の勉強にもなるという趣きです。ちょうど、「ハゲタカ」(真山仁著)で、多くのかたが企業のM&Aを勉強したのと同様です。
実は、もともと「夏の光」(田村優之著)という本が2007年7月に出版されており、これに一部加筆・修正して改題したものが、本書「青い約束」です。
私は「夏の光」の時に既に読んでいたので今回は2回目、数年ぶりに読みましたが、相変わらずの面白さでした。

作品の中で、主人公は財政赤字が積み上がる日本の将来を憂いています。そして、目先の利益を確保するために金利が上昇しないよう抑えこむ延命策を図る金融業界と戦います。
5年前の「夏の光」では、その日本の財政赤字が「GDPを4割も上回る水準」だと説明されていました。

ところがよく見ると、今回出版された「青い約束」では、日本の財政赤字が「GDPの2倍近くにも達している」と説明が修正されていることに気づきました。
財政赤字がGDPの1.4倍→2.0倍近くにアップ。実に憂鬱なリアリティです。

実際、この5年で日本の財政赤字は大きく悪化しています。小説の中の主人公が憂いていた将来が近づいてきてしまっている気がします。
実際のデータを見てみましょう。日本を含む世界各国の債務残高(対GDP比)です。

債務残高の国際比較(対GDP比)
  (財務省WEBサイトより)


最後に、財政悪化にともなう国債急落(金利急上昇)に関する主人公のセリフを引用しておきます。ここに著者の個人投資家へのメッセージが込められているような……。

大事なのは、「将来どうなるか」を一方的に決め付けないことだと思っている。必ず日本が破綻するとでもいうような議論が危険である一方、円安や国債急落のリスクも捨てきれない以上、資産の一部ではそれに備えておくということも大切だ。

「青い約束」(田村優之著) 主人公・宮本修一のセリフより

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