鎌倉投信セミプロ向けセミナーレポート

先日、鎌倉投信セミプロ向けセミナーに行ってきました。

もともと鎌倉投信に対して、個人的にあまりよい印象を持っていませんでした。「いい会社をふやそう」「投資はまごころ」といった美しいコンセプトばかりが聞こえてくるし、投資家もそれにうっとりしているようで、あまり運用内容が見えてこなかったからです。「いい会社」を免罪符に投資判断はどんぶり勘定なのでは?と。

しかしながら、鎌田社長とお話した時に、実は、コンセプトからは想像もつかないくらい、運用は技術的にしっかりやっていて驚いたという話がこちらです。
そこで、「コンセプトだけでなく、運用面についてもしっかりやっているというテクニカルなメッセージをもっと出された方がよいのではないですか?」と申しあげたところ、「そうだな~、それじゃ、今度運用に詳しい方々向けに別の説明会を考えましょうか」と仰っていました。

それが実現したのが今回のセミプロ向けセミナーでした。
鎌倉投信の「結い2101」を運用している新井氏による、スライド60ページ以上、2時間丸々のセミナーでしたので、全ては紹介できませんが、私が重要だと思った点を中心にレポートします。

◆日本株にベータは存在するのか?
・自動車・電機産業依存
・外需依存
・少子高齢化などの社会問題
→(ベータは存在するが)低成長市場

◆社会的問題を解決しない限り、日本株の長期的な上昇はない

(水瀬コメント)
ごもっとも!

◆市場に対する仮説
・市場は基本的に効率的である。ただし、例外的に小さなアノマリーは存在する。しかし、アノマリーも安定的ではない

(水瀬コメント)
効率的市場仮説における3つのフォーム(ウィーク型・セミストロング型・ストロング型)でいったらセミストロング型だろうという認識とのこと。アクティブマネージャーなのに、市場は効率的だと言ってしまうあたりがとても面白いです。アノマリーに対する信奉もごく薄く、インデックス投資家である私の考え方と驚くほど近いです。

◆インデックス運用 vs アクティブ運用
・対インデックスでアクティブマネージャーの負ける確率は高い

(水瀬コメント)
これを認めてしまうアクティブマネージャーも珍しい。自分だけは違うと言うアクティブマネージャーは多いですが、過去の実績では洋の東西を問わず上記は事実なのですよね。
ただし、これをもって「インデックスを上回るアクティブファンドは“ない”」と言ってしまうかたがたまにいらっしゃいますが、それは誤りです。インデックスは平均なので、インデックスを上回るアクティブファンドも必ず存在します。

◆鎌倉投信の発想
・インデックスについていかない方法論はないか
→TOPIX以外への投資、タイミング分散、キャッシュ

◆個人投資家の特徴 →個人投資家向け商品の解決策
・過去の失敗(成功)に引きずられる →低いボラティリティ
・下方リスクへの低い許容度 →安定的なリターン
・知識レベルに大きなばらつき →シンプルな商品(ロングオンリー)
・市場が下がった時に売却する習性 →投資先を応援する仕組み

(水瀬コメント)
驚きました。鎌倉投信が提唱する「資産形成×社会形成×心の形成」というコンセプトは、リターンの定義を複数持つことにより、市場が下がった時に売却してしまう個人投資家の習性をカバーする意味があると。受益者総会・いい会社訪問にも同じ狙いがあるというのです。したたかなり、鎌倉投信。

◆運用者の特性 →差別化の可能性
・ファンドマネージャーのサラリーマン化 →インデックスの呪縛からの開放
・マネージャーの分断(AAと個別資産) →キャッシュマネージ
・マネージャーの統合(FMとPM) →銘柄選択とリスク管理のバランス
・第三者評価への依存(BARRA、SRI) →主体的な調査体制(直接訪問)、新規上場銘柄や直近業績の悪い銘柄をあえて保有

(水瀬コメント)
ポートフォリオのキャッシュ比率調整や独特な銘柄選定といった鎌倉投信の運用スタイルは、インデックスについていかないための工夫により組み上げられているようです。

AA=アセット・アロケーション(資産配分)、FM=ファンド・マネージャー、PM=ポートフォリオ・マネージャー、BARRA=統合リスク管理システムで有名な会社、SRI=社会的責任投資のこと、インデックスにもなっている。

◆運用コンセプト
・インデックス →×
・ポートフォリオ・インシュアランス →×
・ロング・ショート →×
→「企業業績」にどうしたらトラックできるか

(水瀬コメント)
「企業業績」とは、具体的には企業の「純資産・配当の増加」。これこそがリターンの源泉と考えているようです。ただ、企業業績と株価は必ずしもきれいに連動してくれないところが、株式投資(特にバリュー投資)の難しさだと思います。
インデックス投資でも「資本主義経済の成長」がリターンの源泉と考えていますが、この部分は結局確実なものではなく、ばくっとしたものにならざるをえなません。必ず儲かる投資はないといいますが、インデックスでもアクティブでもリターンの源泉は違えど、突き詰めるといずれのリターンも不確実なものなのですね。

◆どうしたら企業業績についていけるか
・インデックスの説明力を低下させる →非上場株にも投資
・リターンを上げる努力をし続ける →小さなアノマリーを追い続ける

(水瀬コメント)
ここは苦しいところです。「どうしたら企業業績についていけるか」というよりも、「どうやってリターンを稼いでいくか」という内容になっていました。新井氏をもってしても、企業業績と株価をきれいに連動させるすべはないということなのかもしれません。
このスライドでは、「結局、管理できるのはリスクであり、リターンは不確実で、後から得られるお小遣いみたいなもの」という説明がなされましたが、首が痛くなるほどウンウンうなずきました。

◆期待リターン・想定リスク水準の設定
・企業の純資産の増加率平均値 →5.2%
・期待リターン5% ÷ 期待シャープレシオ0.5以上 = 想定リスク10%以内

(水瀬コメント)
このファンドは、期待リターン5%、想定リスク10%とのこと。私の感覚的には、インデックス投資で期待リターン5%を狙うためには15%くらいのリスクを負う必要があるので、意欲的な設定だと思います。
それよりも、リスク水準を一定以内に抑えるファンドというのは、あまりメジャーではないのですが、実は多くの個人投資家にとって魅力的な運用なのではないかと思います。

◆アクティブ運用の基本法則
・IR(インフォメーション・レシオ)=IC(情報係数)×√BR(頻度)
・運用においてICはごく小さいので、BRを多くする

(水瀬コメント)
このあたりを説明するととても長くなるので割愛します。でも、私たち個人投資家が目にすることはあまりありませんが、アクティブ運用において非常に重要な考え方とのこと。

◆取っているリスク
・株式の本源的価値
・サイズ(企業規模)
・流動性

◆取らない(取りたくない)リスク
・市場予測・株価予測
・銘柄ウェイト・業種ウェイト
・投資タイミング
・積極的TAA(タクティカル・アセット・アロケーション)

(水瀬コメント)
新井氏が前職のBGIで学んだ一番重要なことは、「取るリスクと取らないリスクをはっきりすること」だったとのこと。これを見て、私が鎌倉投信と考え方が似ているなと感じた理由がわかりました。「取らないリスク」がインデックス投資家とまったく同じです。

投資タイミングは「毎日」とすることで、BR(頻度)を上げる、250日のボラティリティ調整で機械的にリスクコントロールする、徹底した分散(市場・業種、スタイル、外需・内需、地域・決算日、投資タイミング)をする、といった運用で上記を実現しているとのこと。
運用ノウハウはすでに仕組みの中に組み込まれており、仮に新井氏が亡くなっても100年継続できると断言していました。

◆運用コンセプト
・ベンチマークなし
・(超)中小型
・予想しない:市場は効率的である
・直接リサーチ型
・リスク管理型

(水瀬コメント)
鎌倉投信(結い2101)の運用コンセプトは、今まで書いてきた考え方に立脚しており、合理的に決められているということが分かりました。。「いい会社をふやそう」「投資はまごころ」といった美しいコンセプトすら、戦略的に設定されたものだということに驚くとともに感心しました。

◆「結い2101」のパフォーマンス評価(2010年3月29日~2012年8月31日)
・実績リターン 年率2.6% (TOPIX -10.8%)
・実績リスク 年率8.7% (TOPIX19.3%)

(水瀬コメント)
リターンは期待リターンの5%に満たない2.6%で、これについては、素直に「申し訳ない。頑張ります」とのこと。リスクについては、想定リスクの10%以内というのを実現しているのでOKでしょう。


◆質疑応答
Q.BRをかせぐというが、投資頻度を増やすとコスト上昇にならないか?
A.コスト込みでリターンが得られる回数しか投資しない。すべてはコスト込みのアクション。

Q.このような技術的な情報は目論見書やWEBサイトに掲載されているのか?(水瀬の質問です)
A.現在は掲載していない。今回のセミナーの反応を見て今後検討していく。今回の反応は悪くなかったという印象だ。

Q.運用規模が大きすぎてもダメなのか?
A.成長ペースが大事。今のところ300億円まで耐えられる設計になっている。

Q.「いい会社」の選び方は?
A.NPOや周囲からの口コミ、いい会社からの紹介(9割当たり)が効率がよい。投資して欲しいと訪問してくる会社は9割ダメ。投資にあたっては社内プレゼンを行ない、一人でも反対したら投資しない。通過率は2~3割程度。


以上、鎌倉投信のセミプロ向けセミナーについて、主な内容紹介と所感コメントをお送りしました。
全体的に、予想以上にしたたかな運用をしているなと驚きました。運用者の新井氏は、できることとできないことを冷静に切り分け、できることについては熱く徹底的に追求するというかたでした(ご本人は「運用オタク」だと仰っていました)。
質疑応答でも言いましたが、せっかくこれだけ練り込まれた設計で手堅い運用をしているのだから、小さくてもよいのでどこかに、運用の詳細に興味がある人向けの情報を公開した方がよいのではないかと、改めて提案しておきました。

本レポートが皆さまの何かのお役に立てば幸いです。


※言わずもがなですが、投資判断は自己責任でお願いいたします。
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