モーニングスターが考える難問に既に答えが出ている件
水瀬ケンイチ

モーニングスターが考える「運用成績の見方に関する注意点」が興味深かったので取り上げます。
モーニングスター アナリストの視点(ファンド)
2013-02-14 国内株上昇のいま、改めて考えたい運用成績の見方に関する注意点
詳しくは上記コラムをご覧いただきたいのですが、無理やり要点をまとめると、(1)リターンの期間の取り方に注意しろ、(2)長期投資でリスクは縮小するか?、というふたつのポイントについて書かれています。
(1)のリターンの期間の取り方については、いわずもがなだと思います。筆者に都合が良いデータにするために、恣意的な期間でデータを取るということは、割とどこの世界でも行なわれています。
モーニングスターの記事でも、日本株式を10年で見るとハイリターンに見えるが、20年で見るとマイナスリターンであると指摘されています。どちらを取るかは情報の執筆者次第というわけです。私たちはこれに注意しなければならないのは言うまでもありません。
(2)の「長期投資でリスクが低減するか?」については、以前、うちのブログでも取り上げた人気テーマです。インデックス投資界(?)では有名な論客である方々が、「長期投資でリスクが縮小する」と主張する派閥と「長期投資でリスクは拡大する」と主張する派閥に分かれて、真っ向から対立しているのです。
モーニングスターの記事では、どっちも正しいとも間違ってもいないというような煮え切らない結論で、難問扱いになっていますが、これに対しては、個人的には答えが出ています。
長期投資すると「収益率(年率)の変化する範囲」は縮小するが、「運用資産額の変化する範囲」は拡大するということです。これは同じ事を言っています。つまり、「リスクの定義」が違うだけです。
以前のブログ記事から画像を引用します。つまり、こういうことです。

(「資産運用実践講座I 投資理論と運用計画編(山崎元著)」の図表に水瀬ケンイチ加筆・クリックで拡大)
上の図(マルキール氏の主張)ではリスクの定義が「収益率(年率)の変化する範囲」です。
下の図(山崎元氏の主張)ではリスクの定義が「運用資産額の変化する範囲」です。
どちらリスクの定義も、その意味で使われることはあり、間違ってはいません。
というわけで、「どっちが正しいのかよくわからない難問」というあいまいな態度ではなく、「リスクの定義が違うだけでどちらも正しい。定義を確認せよ」とスッキリ理解しておきたいですね。
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