野村総研のレポートに(珍しく)個人投資家の実態についての対談。本気でくみ取るつもりはあるのか?

水瀬ケンイチ

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金融業界向けの情報が多い野村総研のレポート「金融ITフォーカス」の巻頭に、個人投資家の実態についての対談が掲載されています。

金融ITフォーカス 2013年3月号 金融×IT対談 
イボットソン・アソシエイツ・ジャパン株式会社 「投資信託事情」発行人・編集長 島田 知保氏×野村総合研究所 金子 久

イボットソンの島田氏は、月刊「投資信託事情」編集長で、「コツコツ投資家がコツコツ集まる夕べ」発起人の一人でもあります。イボットソンで金融業界向けのビジネスもしつつ、個人投資家にも目が向いているかただと思います。

一方、野村総研の金子氏は、個人的印象でたいへん恐縮ですが、「金融ITフォーカス」や金融審議会等での発言を見るにつけ、高コストファンドの期待リターンは高いとか、毎月分配型投信の積極販売にも意義があるなど、やや金融業界寄りの発言が多いように思います(それはそれで必要な立場だと思いますが)。

つまり、立場の違うお二人の「巻頭特別対談」です。

詳しくは上記対談記事をご覧いただきたいのですが、むりやりまとめると、「個人投資家にとっての投信の分かりにくさ」「行動バイアスを利用した販売の問題点」「個人投資家同士の交流会の意義」といったことが、島田氏が紹介する実例とともに取り上げられています。

対談はガチバトルになると思いきや、島田氏のコメントに金子氏が同意する、逆に金子氏の解釈に島田氏が「仰るとおり」「ご指摘のとおり」と受けるなど、和やかな雰囲気で進行されます。最後は金子氏の「本日は示唆に富んだお話をありがとうございました」という言葉で結ばれています。

これだけ読むと、野村総研が、金融業界の問題点や個人投資家が求めるものについて理解し、くみ取ったかのような感じになっています。

「金融ITフォーカス」では過去にも、例えばファイナンシャル・ジャーナリスト竹川美奈子氏や退職・投資教育研究所野尻哲史氏など、個人投資家目線で情報発信している識者の意見を取り上げてきました(該当記事)。ただ、いずれも「巻頭特別対談」扱いであり、以降の本編との連動性がないのが、個人的には気になります。

ところで、私事で恐縮なのですが、企業のPR誌編集に携わったことがあります。

PR誌の目的はその企業のファンづくりだったりするのですが、自社にとって都合がよい情報ばかり掲載していると、客観性の観点からかえって評判が悪化してしまいます。そこで、あえて自社にとって都合が悪い情報も掲載するのですが、真っ向から本編でそれを取り扱うことが難しい場合、よく多用していたのが、この「巻頭特別対談」という形式でした。

一種の「お祭り編」的コーナーで、アンチ派の意見も取り上げることにより、自社の懐の深いところを見せる。読者のガス抜きにもなる。ただし、あくまで「お祭り編」なので、本編との意見の一貫性を問われにくい。なので、以降は自社にとって都合がいい情報ばかり取り上げても、それほど違和感がない。「巻頭特別対談」というのは、そういう便利な手法でした。

とはいえ、そもそも「金融ITフォーカス」は、「金融・証券ビジネスの視点に重きを置いたトピックスをメッセージの形でお伝えする月刊誌」(野村総研WEBサイトより)という位置づけです。当然、金融業界寄りなのは仕方がありません。しかしながら、顧客のニーズを無視したビジネスは長続きしないというのも、過去の歴史が証明しているところです。

個人投資家目線の上記「巻頭特別対談」が、単なる「お祭り編」や「ガス抜き企画」でないことを期待しますが、そうなのか、あるいはそうでないのかは、今後の「金融ITフォーカス」を見れば分かるはずです。継続的にウォッチしたいと思います。


P.S
フォローもしておくと、野村総研の「金融ITフォーカス」は、金融業界の動向や投資理論のトレンドなどを私のような個人投資家が知るのに役に立つ貴重な媒体です。業界のニーズと個人投資家のニーズの接点を探るような企画がもっと増えると、更によいと思います。
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