「全面改訂 超簡単 お金の運用術」(山崎元著)は痛快な「帰ってきた業界メッタ斬りマネー本」
水瀬ケンイチ
「全面改訂 超簡単 お金の運用術」(山崎元著)を読みました。
書評を書く前に申しあげておくべきなのは、私は投資を始めた十数年前より、山崎元氏の著作に大きな影響を受けており、また筆者と共著で書籍を執筆した事実があります。それを割り引いてお読みいただければと思います。
本書は、投資が仕事でも趣味でもない普通の人にとって必要な、ひととおりのマネー知識を、切れ味鋭くコンパクトにまとめた良書だと思います。投資を中心に、不動産・保険・自動車・クレジットカードなど人生におけるお金に関する重大要素を網羅しています。それらに対して、私たち個人が無用な損を被ることなく合理的に向き合うにはどう考えたらよいかが書かれています。
「全面改訂」版ということで、2008年に出版されたものからの改訂版です。インデックスファンド・ETF銘柄などの情報が更新されたりしただけでなく、新たにNISA(ニーサ)に関する章や、日本経済の状況の見方などの情報が新たに加わっています。ページ数も211ページから232ページと増えています。既に、kindle版も出ているようです。
山崎氏の持ち味として、金融業界に身を置きながらも、業界の悪知恵部分(=個人投資家にとって不利な部分)に歯に衣着せぬ物言いで斬り込むスタンスがあると思います。本書でも、随所で業界の「儲けのカラクリ」や「プロの知識・倫理不足」を個人投資家目線でバッサリ斬っています。
さしずめ、「帰ってきたウルトラマン」ならぬ、「帰ってきた業界メッタ斬りマネー本」といったところでしょうか。
特に、新たに加わった「アドバイザーの選び方」の章では、銀行や保険のセールスマンやアドバイザーにとっては、かなり耳が痛い内容になっています。実際に、FAを名乗る方から、筆者のFacebookにクレームが入った経緯と、それに対する回答が書かれており、読者にとって痛快な言説には、それ相応の苦労がともなっている様子が垣間見えます。
一方、個人的に納得しかねる部分も若干あります。NISA口座の最適商品に最も期待リターンが高いアセットクラスを当てはめるという主張は、5年後にその時の「時価」で一般口座へ払い出されてしまう点を無視しています。
期待リターンが高いアセットクラスは必然的にリスクも高く、これだと5年後の損益がたまたまマイナスだった場合に、投資金額より少ない金額で取得したことに「上書き」されてしまい、「将来の課税額が増えてしまう」というデメリットがスルーされています。
もっとも、今後5年間の間にNISAの制度が、英国のように恒久化されてしまえばこの問題は霧散してしまい、かつ、その可能性は個人的にはけっこう高いのではないかとも思っていますが。
読者としては、いかに筆者を尊敬していても、その著書を鵜呑みにするのではなく、疑問を持ち続ける姿勢も持っていたいものです。(いや、私の考え方が間違っている可能性も大いにあるのですが)
筆者はインデックス投資家に人気があるので、本書は私を含むインデックス投資家たちが率先して読むと思います。しかし、本当であれば、本書をまず読むべき人(向いている人)は、社会人になる前の学生さんや入社1~2年の新社会人さんです。
実は投資なんかよりもよっぽど人生に与える影響が大きい、保険契約や持ち家の購入などは、マネー知識を持たずになんとなく意思決定してしまうと、あとで取り返しがつかない場合があるからです。社会人生活のなるべく早い段階で本書を読まれることをおすすめします。
最後になりますが、コレだけは言わせてください。
「朝日新聞出版さん、山崎さん、本書の姉妹本『ほったらかし投資術』(山崎元・水瀬ケンイチ共著)も全面改訂しましょうよおおお!!」
書評を書く前に申しあげておくべきなのは、私は投資を始めた十数年前より、山崎元氏の著作に大きな影響を受けており、また筆者と共著で書籍を執筆した事実があります。それを割り引いてお読みいただければと思います。
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「全面改訂」版ということで、2008年に出版されたものからの改訂版です。インデックスファンド・ETF銘柄などの情報が更新されたりしただけでなく、新たにNISA(ニーサ)に関する章や、日本経済の状況の見方などの情報が新たに加わっています。ページ数も211ページから232ページと増えています。既に、kindle版も出ているようです。
山崎氏の持ち味として、金融業界に身を置きながらも、業界の悪知恵部分(=個人投資家にとって不利な部分)に歯に衣着せぬ物言いで斬り込むスタンスがあると思います。本書でも、随所で業界の「儲けのカラクリ」や「プロの知識・倫理不足」を個人投資家目線でバッサリ斬っています。
さしずめ、「帰ってきたウルトラマン」ならぬ、「帰ってきた業界メッタ斬りマネー本」といったところでしょうか。
特に、新たに加わった「アドバイザーの選び方」の章では、銀行や保険のセールスマンやアドバイザーにとっては、かなり耳が痛い内容になっています。実際に、FAを名乗る方から、筆者のFacebookにクレームが入った経緯と、それに対する回答が書かれており、読者にとって痛快な言説には、それ相応の苦労がともなっている様子が垣間見えます。
一方、個人的に納得しかねる部分も若干あります。NISA口座の最適商品に最も期待リターンが高いアセットクラスを当てはめるという主張は、5年後にその時の「時価」で一般口座へ払い出されてしまう点を無視しています。
期待リターンが高いアセットクラスは必然的にリスクも高く、これだと5年後の損益がたまたまマイナスだった場合に、投資金額より少ない金額で取得したことに「上書き」されてしまい、「将来の課税額が増えてしまう」というデメリットがスルーされています。
もっとも、今後5年間の間にNISAの制度が、英国のように恒久化されてしまえばこの問題は霧散してしまい、かつ、その可能性は個人的にはけっこう高いのではないかとも思っていますが。
読者としては、いかに筆者を尊敬していても、その著書を鵜呑みにするのではなく、疑問を持ち続ける姿勢も持っていたいものです。(いや、私の考え方が間違っている可能性も大いにあるのですが)
筆者はインデックス投資家に人気があるので、本書は私を含むインデックス投資家たちが率先して読むと思います。しかし、本当であれば、本書をまず読むべき人(向いている人)は、社会人になる前の学生さんや入社1~2年の新社会人さんです。
実は投資なんかよりもよっぽど人生に与える影響が大きい、保険契約や持ち家の購入などは、マネー知識を持たずになんとなく意思決定してしまうと、あとで取り返しがつかない場合があるからです。社会人生活のなるべく早い段階で本書を読まれることをおすすめします。
最後になりますが、コレだけは言わせてください。
「朝日新聞出版さん、山崎さん、本書の姉妹本『ほったらかし投資術』(山崎元・水瀬ケンイチ共著)も全面改訂しましょうよおおお!!」
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