DIY投資家が増えて投資の危機が進行中?

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いよいよ2014年1月のNISAスタートまで、残り3か月を切りました。金融機関各社では激しいNISA口座争奪戦に加えて、1400兆円と言われる個人資産がどう動くのか、ビジネスチャンスを狙っていろいろと詮索しているようです。

ある運用会社では、NISAのお手本になった「本家」英国ISAのファンド動向を見て、今後の日本の投資家動向の見通しと懸念を指摘しています。

国際投信投資顧問 投資調査室コラム 日本版ISAの道
2013年10月21日 
[その32] 「本家」英国で、RDR改革がもたらしたIFA数減少によって、ISAを中心にDIY投資家が増えて投資の危機が進行中?~最新の英国ISA(ファンド)動向~


詳しくは上記コラムをご覧いただきたいのですが、英国のISAでの投資動向を紹介しつつ、要点は、リード文にもあるように、

『英国では、ISAを中心にDIY投資家が増えて投資の危機が進行中』

ということのようです。将来のことを正確に予測できる人間はこの世にはいませんので、現時点でどのような予測もあってよいとは思いますが、私個人の率直な感想は、

『これはひどい』

です。なにがひどいのか、順を追って説明します。
そもそも、「DIY投資家」って何よ? と思いますが、コラムによると「Do It Yourself 投資家」のことで、具体的には「IFA(=独立金融アドバイザー)等から投資アドバイスを受けずに自分で投資する人」のことを指しているようです。

英国では、この「DIY投資家」になろうとする投資家が31%いるそうです。コラムは、その中にほとんど投資経験がない投資家もいることが問題であると指摘しています。

そして、「日本のNISA投資家に危機を進行させることなく、しっかりと情報提供やアドバイスをして、NISAによる家計の中長期的な資産形成の後押しにつなげていきたいものである」と結んでいます。

インデックス投資家である私からすると、この主張は、いろいろおかしいと感じます。


(1) 「DIY投資家」がふつう

まず、投資家は誰だって、最初は何も知らない素人です。DIY投資家になろうと志す人のなかに、まだ投資経験がない投資家がいるのはきわめて自然のことです。

では、どうやって知識とスキルを身につけていくかというと、これはなにも投資に限ったことではありませんが、自分で学ぶか、専門家に教えてもらうかです。どっちもアリです。むしろ、最初は自分でいろいろ調べたり勉強したりするのがふつうでしょう。

それを、あたかも「IFA等のアドバイスを受けないと投資できるようにならない」かのような前提に立って、DIY投資家が増えること自体が危機などと言って勝手に懸念するのは、情報提供側の傲慢です。

DIY投資家について、コラムでは、「多くの人は自分で車や住宅、配管の修理をしたいとは思わないはずだ」という例えをしています。これは、投資というものが、車や住宅や配管の「修理」と同じであると言っているのと同義ですが、例えが下手すぎて萎えます。

車の目的は、目的地へ移動することであり、住宅の目的は、自分や家族が快適に暮らすことであるはずです。エンジンが動く機械エネルギー工学を知らなくても、車の運転はできますし、一級建築士がそばにいなくても、家で快適に暮らすことはできます。

なにが言いたいのかというと、投資のプロを目指しているわけでもない私たち一般人にとって、NISAやISAで余裕資金をゆっくりと増やしていこうという運用に必要な基礎知識は、自分で身につけられるし、それほど難しくないですよということです。


(2) IFAのアドバイスにはそんなに価値があるのか

NISAやISAにおいて、投資経験のない投資家にとって必要なのは、リスクとリターンの関係であるとか、分散効果であるとか、コストの重要性といった、投資に関する基礎知識だと思います。

これらは本を1冊読めば、誰でも理解できることです。昔は投資本といえばチャート分析など短期売買の本ばかりでしたが、幸いにして、今はNISAに向いたゆっくりとした資産形成のための良書が、数多く出版されています。最初に変な本に当たってしまうと後々苦労しますが、投資の良書を紹介することが、IFAにしかできない主たる業務でもないでしょう。

では、投資の良書で基礎知識を身につけたとして、それ以外に、IFAは何をアドバイスできるのでしょうか? 儲けるための方法、たとえば、何の銘柄をいつ買っていつ売ればよいのか? そういった儲けるための売買に関する知識を求めたくなるかもしれません。

しかし、私たちインデックス投資家は、将来を予測して安く買って高く売ることがとても困難なことだと知っています。投資銘柄を選択して投資タイミングを図り、市場平均を上回ることを目指すアクティブファンドが、その運用成績において大半が市場平均にかなわないことを知っています。これは時代や洋の東西を問わず、何度も検証されてきた事実です。

彼らのアドバイスどおりに運用したからといって、市場平均を上回るめざましい投資成果を得ることを期待するのは、歴史的事実に鑑みて無理筋というものです。

IFAにアドバイスを受けないと「投資の危機」になってしまうほどの重要な情報なんて、本当にあるのでしょうか。IFAのかたには申し訳ありませんが、私には思いつきません。


(3) コラム主が情報提供やアドバイスをしたいだけ

運用会社であるコラム主は、大義名分のもと、情報提供やアドバイスをする気満々のようですが、投資家側の視点に立って、ちょっと意地悪な指摘を加えさせていただきます。

コラム主が運用するファンドは、アクティブファンドが中心で運用コスト(信託報酬等)が高いものが多いです。投資にかぎらず一般的に、高いコストを正当化するためには、「付加価値」が求められます。

彼らにとって、きちんとファンドを運用する(きちんと運用してもなかなか市場平均を上回れないのですが…)という運用会社の本分の他に、「付加価値」はあるのかと問われれば、それはもう情報提供やアドバイスくらいしか残っていないという切実な事情があることも、投資家として知っておくとよいかもしれません。


以上3点が、コラムを読んで『これはひどい』と思った理由です。

誤解のないように申しあげておくと、私はIFAという仕事そのものを否定しているわけではないし、運用会社が情報提供やアドバイスをすることが悪いと言っているわけではありません。自分で勉強するのは苦手なので、人に教えてほしいと思う投資未経験者はいるでしょうし、ニーズもあると思います。

しかしながら、投資未経験者がまず自分で勉強しようとするのはごく自然なことだし、IFAに教わらないと理解できないほど難しいものではないし、運用会社の自社都合は私たち投資家には直接関係ないので、「DIY投資家が増えることが投資の危機である」というコラム主の主張は、やはりおかしいと思うのです。自分たちに都合がいいように「煽っている」ようにしか見えません。

それらを踏まえて、冒頭のコラムの主旨を、身も蓋もなく言い換えるととこうなります。

『英国では、ISAを中心にDIY投資家が増えて投資の危機が進行中』
 ↓
『日本では、NISAを中心にDIY投資家が増えて付加価値が乏しい運用会社の危機が進行中』

おわり


P.S
「そんなこと言ったって、どうやったらDIY投資家になれるんだよ?」と思われた方、うちのブログに私がやっている投資法をまとめてあります。ベストな投資法というわけではありませんが、手間がかからないことに関しては、右に出るもののない投資法です。

2012/08/29 インデックス投資の具体的方法 8ステップ
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