証券優遇税制終了前のクロス取引は、将来資産が2.25倍以上にはならないと考える人だけがやるもの

クロス取引

最近、「証券優遇税制が終了する前に、クロス取引をした方がいいのでしょうか?」というご質問メールをたくさんいただいております。

その議論は半年前に既に結論が出ており、ブログ記事にも書いて「終わった話題」ですが、証券優遇税制終了を年末に控え、ここへきて真剣に検討する投資家が増えてきたのでしょう。あらためて、まとめておきたいと思います。結論から書くと、

クロス取引は、将来、資産額が「2.25倍以上にはならない」と考える人だけがやるもの

ということです。直感的に、「増え過ぎると損するなんておかしいのでは?」と感じるかもしれませんが、これは論理的な事実です。以下、じっくり説明したいと思います。

そもそも、証券優遇税制終了って何よ?という話ですが、今年いっぱいで上場株式等の配当等及び譲渡益に対する税率が、軽減税率10%から本来の20%に戻ることを指します。既存の投資家からすれば、10%から20%への「増税」になる形です。

現在、運用資産に含み益がある場合、今年中に利益確定しておけば、今までの利益に対する税率は10%で済みます。さらに、同じ資産を買い直すことで、取得価格が現在値に置き換わり、将来、税率が20%に上がった後の課税対象額を減らすことができます。これを狙った売買が「クロス取引」です。

では、今年中にクロス取引をやった方がいいのか?やらない方がいいのか?

「今年中にクロス取引をやった方が有利」という情報があちこちで散見されますが(私も当初そう考えていました)、これらは多くの場合、利益確定による課税で投資元本が減ってしまうことを考慮に入れていません。税負担軽減というメリットと、投資元本減少というデメリットを天秤にかけるとどうなるか?という観点が抜け落ちています。

問題は、その分岐点はどこにあるのか?ということですが、その分岐点は、資産額が「将来2.25倍以上になるかどうか」です。ロジック的には、以下のとおりです。

<クロス取引による節税効果の分岐点について>

文字の定義 :
投資元本をa、現在の資産評価額を投資元本のx倍、将来さらに現在からy倍になるとする。
例えば、投資元本を100とし、現在の資産評価額が200、将来の資産評価額が300になるとすると、a=100、x=2、y=1.5となる。

前提 :
クロス取引は税率が10%の時に行い、将来の売却は税率が20%に上がった時に行うものとする。
追加投資は行わず、投資元本は定額であるものとする。
現在の資産評価額が元本割れの場合、クロス取引による節税にはならないためx>1とする。
将来の売却時に資産評価額が元本割れの場合も、節税にはならないためx*y>1とする。

クロス取引を行う場合 :
クロス取引後の資産をbとすると b={a*(x-1)*0.9+a} ・・・式1
将来の売却後税引き残高は b*(y-1)*0.8+b・・・式2

クロス取引を行わない場合 :
将来の売却後税引き残高は a*(x*y-1)*0.8+a・・・式3

クロス取引により節税効果が認められるのは式2>式3となる場合であり、式2-式3>0のときである。
式2-式3>0にそれぞれの式をあてはめ、bに式1を代入し、全体を整理すると
-0.08*x*y + 0.08*y + 0.18*x - 0.18 > 0 となる。
両辺を-100倍し、左辺を因数分解すると、
(8y-18) * (x-1) < 0・・・式4
ここで、前提よりx>1であるから、(x-1)は正となり、式4を満たすのは(8y-18)が負のときである。

8y-18<0 より、y<2.25 ・・・式5

したがって、クロス取引によって節税効果が認められるのは、クロス取引後からの資産評価額が2.25倍以下の時に売却を行った場合である。

ここで、aやxが式5に含まれないことから、投資元本の額や、税率が上がる前までの資産の値上がり率は関係ないことが分かる。

以上

出典:【お詫び】「今年中にクロス取引やっておくべき」は誤りでした。正しくは「今年中にクロス取引してはダメ(2013/05/13)



ロジックは上記のとおりですが、数式では分かりにくいというかたのために、上記と同じ条件でのシミュレーションを行なった結果を以下に示します。

クロス取引シミュレーション結果

将来の値動きが2倍ちょっとのところで、最終利益で見たクロス取引のメリットがマイナスになっています。

繰り返しになりますが、クロス取引の損益の分岐点は、将来2.25倍になるか否かです。これは論理的な事実ですが、実際に、各人の運用資産が将来2.25倍になるか否かについては、ここでは言及しません。

なぜなら、投資期間や資産配分等、投資方法は人それぞれ違うので、将来どのくらい増えるか(減るか)は一般化することはできないからです。たとえば、今20歳で今後投資期間が40年以上あるという人と、既に定年退職した後の人とでは、将来2.25倍になるか否かの答えがまったく異なるということです。

今年中のクロス取引について、損得の仕組みは明らかにしたので、そこから先、ご自身がクロス取引をするべきかどうかについては、各自でお考えください。

皆さまの資産運用が成功されますことを祈念しております。


P.S
参考までに、私個人の話をしておくと、自分が実践している投資法の期待リターンと投資期間を考慮した上で、リスクを取った投資というものは、「○○倍以上にはならないでほしい」と願いながら行なうものではないと考えているので、その意味でのクロス取引はいたしません。
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