イオングループだけに投資する「イオングループ・ファンド」は買いか?

水瀬ケンイチ

イオン

イオングループだけに投資する「イオングループ・ファンド」が2014年2月27日に設定されるそうです。

岡三アセット、イオングループ専門の投信
 岡三アセットマネジメントは投資先をイオングループに絞った投資信託を導入する。持ち株会社のイオンを含むグループ28社のほか、不動産投信も純資産額の10%を上限に組み入れる。トヨタ自動車、新日鉄住金といった大手メーカーのグループ限定の投信はあるが、サービス業を対象にするのは珍しい。消費者になじみのあるブランドを前面に出して個人投資家を掘り起こす。
日経電子版 2014/02/10より)


好調相場が続くと、少し遅れて、特定の企業グループや地域に特化した「変わり種」ファンドが登場してくることがあります。2003年のトヨタグループ株式ファンドしかり、2006年の新日鉄グループ株式オープンしかり、2011年の「MAXIS S&P東海上場投信」しかり。今回登場する「イオングループ・ファンド」は、はたして「買い」でしょうか?



「前宣伝の根拠」に注意

このような、「企業グループファンド」や「ご当地ファンド」は、すべてダメだと決めつけるつもりはありませんが、その「前宣伝の根拠」には注意が必要だと常々思っています。

日経平均やTOPIXといった日本株式インデックスよりも、イオングループの方が株価のパフォーマンスが高いと考えられる根拠を、事前に分かる範囲で検証した方がよいでしょう。

誤解のないように申し上げておくと、トヨタグループにせよ、新日鉄グループにせよ、イオングループにせよ、間違いなく優良企業群だと思います。今回の「イオングループ・ファンド」のプロモーションサイトにも、「市場規模が8兆円を超える総合スーパー業界において、イオングループの営業収益は3兆2,892億円、全体の約40.5%を占めています。(2012年度)」という触れ込みが書かれています。これは掛け値なくすごいことです。

ただ、これは営業収益等の企業業績としては事実なのでしょうが、株価がそれに必ず連動するかどうかは、もう一歩深く考える必要があります。


株式投資というゲームのルールは、単に営業収益の絶対額を競うものではない

単に多額の営業収益をあげる企業の株価が上がり、少額の営業収益の企業の株価があまり上がらず、マイナスの営業収益の企業の株価が下がるのであれば、株式投資は誰にとっても楽勝のゲームであったことでしょう。

しかし、現実には営業収益の絶対額の多寡と株価の上昇率は必ずしも連動していません。人々が「期待」する企業業績に対して、どの程度上回ったか、下回ったかが、株価に大きなインパクトを与えます。

この「期待」が曲者で、いつの時代も投資家たちを悩ませます(私も悩みます)。優良企業が期待どおりの優良な実績を出しても、株価はあまり上がりません。掛け値なしに優良企業であるイオンの過去のデータを、インデックスと比較して見てみましょう。


インデックス(日経平均・TOPIX)とイオンの株価パフォーマンス

■インデックスとイオンのパフォーマンス(直近1年)
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■インデックスとイオンのパフォーマンス(直近5年)
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■インデックスとイオンのパフォーマンス(直近10年)
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ご覧いただければ分かるとおり、営業収益的には(言葉は悪いですが)味噌も糞も一緒くたのインデックスと比較して、イオンの株価はぶっちぎりでよいわけではありません。直近10年では、日経平均にもTOPIXにも劣後しています。

過去のパフォーマンスが将来を約束するわけではありませんが、不確実な将来に向けて、その特定企業グループ(特定地域)がインデックスを上回るだろうとする「根拠」を、事前に分かる範囲で精査することが必要そうです。


「銘柄集中リスク」ってどの程度のリスク(ボラティリティ)なの?

ここまでリターンの話をしてきましたが、一方で、リスクの話も重要です。

日経平均やTOPIXといったインデックスに比べて、特定企業グループ(特定地域)ファンドは、分散が効いていない分、リスク(ボラティリティ)は高めになりがちです。

「イオングループ・ファンド」に限らず、新商品というのは、想定されるリスク(ボラティリティ)はハッキリ数値で表してくれません。過去データ的にはあるはずですが、それが開示されることは稀です。「イオングループ・ファンド」も、「株価変動リスク」「信用リスク」「流動性リスク」など一般的な定性的リスクの説明に加えて、「銘柄集中リスクがある」と書いてある程度です。

その「銘柄集中リスク」により、たとえばポートフォリオのリスク(ボラティリティ)が年率10%から20%に増えてしまうレベルなのか、年率10%のリスクが11%になる程度なのかが知りたいのですが。

聞くところによると、プロが用いる分析ツールでは、個別株銘柄のリスク(ボラティリティ)等を簡単に見積もることができるツールがあるそうですが、私たち個人投資家には縁がありません。簡便法としては、一般的なインデックスのリスクに対して、個別株銘柄のリスクはざっくり2倍程度と見積もる方法はあります。

「イオングループ・ファンド」は28社+REIT1銘柄ということなので、個別株一銘柄よりはリスクは下がりそうですが、225社が含まれる日経平均や、1779社が含まれるTOPIXと比較するとどうでしょうか。(イオングループ各社の株価の相関係数が0に近く、TOPIXよりもリスクが低い組み合わせになっている可能性もゼロではありませんが……)


結論

繰り返しになりますが、「企業グループファンド」や「ご当地ファンド」のすべてがダメだと言うつもりはありませんし、イオングループの都市型小型食品スーパー「まいばすけっと」のヘビーユーザーとしては心苦しいのですが、「イオングループ・ファンド」は、期待リターンおよびリスクの両面から厳しく精査する必要があると思います。特に、新規設定時は要注意です。

このファンドの期待リターンとリスクのいずれか、あるいは両方とも見当がつかないのであれば、投資するのは見送った方が無難だと思います。


P.S
本記事は「企業グループファンド」や「ご当地ファンド」の新商品が出る際に、「事前」にどう考えるかについて書いたものです。実際に「イオングループ・ファンド」がどのような値動きをするかはわかりません。
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Posted by水瀬ケンイチ