経験論をブチあげる時は「構造的な盲点」に気をつけろ (その1)

突然ですが皆さん、以下のかんたんな実験をやってみてください。

  1. 下のイラストと目の高さを揃えてください。
  2. 左目を閉じて、右目で左の●を見つめて、ゆっくりと画面に目を近づけてください。
  3. ピンクのハートマークが、フッと視界から消えるポイントがるはずです。


マリオット=ボイルの法則


それが、あなたの眼球の「盲点」です。

盲点と脳の自動補正機能

盲点は誰にでもあります。盲点は、自分の「眼球」と「視神経の束」がくっついている場所で、そこには視細胞がないため、外からの映像が映りません。

見るための細胞がない部分の映像が見えないのは、物理的なことなので納得できるのですが、私が面白いと思うのは、映像が映らない盲点が黒く欠落したりせず、その周りの景色に似た色で塗りつぶされて、自然な状態になじんでいることです。まるで、フォトショップで顔のシワやホクロをなかったコトにするかのような補正技術です。

大学の一般教養の授業(たしか生物学)で、この実験をやりました。盲点の映像は脳が自動的に自然な感じで補正していると知って、「脳って万能だな」と驚いたと同時に、「実際と違うものに勝手に脳内補正されて見えるのはちょっと怖ぇな」と思ったものです。


女友達「私の胸を見てるの100%気づいてますよ」

この「実際と違うものに勝手に脳内補正されて見える」状態というのは、なにも生物学の世界だけに閉じた特殊な現象ではありません。社会のいろいろなところで見られます。

たとえば、よくあるのが、女性が「男の人と話す時、私の胸を見てるの100%気づいてますよ」という話。

私も男なので身に覚えがあり、女友達からそれを指摘された時に、「うわっ、やっぱりバレてるのか!?」と慌てふためき、「だってしょうがないじゃないか」とえなりかずきばりに口をとんがらせて言い訳をしたことがあります。

たしかに、女友達も嘘を言っているつもりはないでしょうし、今まで何度も同じような経験(男と話す時に胸を見られる)をしているからこそ、その言葉が出たのだと思います。

しかし、これはよく考えたらおかしな話です。なぜなら、女友達は自分が気づいた時にしかカウントできないという構造だからです。

他のイケメン男が胸を見ながら話していたとしても、女友達がイケメンの顔に見とれて気づかなければ、胸を見ていたとカウントはされません。女友達の経験からすれば「100%気づく」のでしょうが、客観的に見ると、「あなたは事実が見えていない」という構造です。

彼女は、構造的な盲点に気づいていないのです。(胸を見て話していたことはゴメンナサイ)


生活指導教師「おまえらはいつも真面目にやらん」

たとえば、小中学校の生活指導教師が、授業中にふざけて遊んでいる生徒たちを教室から引きずり出して職員室へ連行した後、教室に戻ってきて、「お前らはいつもまじめにやらん!!いい加減にしろ!!」と怒鳴り散らすという定例イベントがありました。

こういうシーンでは気持ちが昂ぶっているので仕方がないのかもしれませんが、生活指導教師が説教している相手は、まじめに授業を受けていた生徒たちです。説教すべき相手はふざけて遊んでいた生徒であって、目の前の生徒たちではないはずです。

生活指導教師の経験からすれば「おまえらはいつもまじめにやらん!」なのでしょうが、客観的に見ると、「それでは何も改善しない」という構造です。

彼は、構造的な盲点に気づいていないのです。


会社課長「きちんと黙祷しろ」

たとえば、以前、私の勤務先において、全社員が各々の職場で黙祷を捧げるという場面がありました。

実際に黙祷の時刻をむかえ、皆がPCの手を休めてしばし黙祷していると、静まり返ったオフィスに「おい○○!きちんと黙祷しろ!」という某課長の怒鳴り声が響きました。「ス、スミマセン!」という○○氏のビビった声を聞いて、私は不謹慎にも腹筋を持っていかれそうになりました。

もちろん、○○氏に対してではなく、某課長に対してです。だって、あんた黙祷してないだろ。○○氏が黙祷していないのが見えてるんだから。

某課長からすればまじめに指導をしているつもりでしょうが、客観的に見ると、「あなたはやるべきことをやっていない」という構造です。

彼は、構造的な盲点に気づいていないのです。


ツイッター民「どいつもこいつも同じ話題ばかりでうんざり」

Twitterで「どいつもこいつも同じ話題ばかりでうんざりだ」とボヤく人がいます。私にも身に覚えがあります。

たしかに、彼らは経験的にうんざりするほど同じ話題を見ているのでしょうが、そもそもTwitterというSNSは、自分が興味ある人をフォローして、興味ない人はリムーブやブロックしていくツールです。それを繰り返していけば、自ずと同じような興味を持つ人間が集まり、同じような話ばかりがタイムラインに出てくるようになっていくのは当たり前のことです。

まさに、「あなたが見ている世界は、あなたが作り出した世界」というわけです。客観的に見れば、「自分で作ったものに文句を言ってるバカな人」という構造です。

彼らは、構造的な盲点に気づいていないのです。


自分が「一部のバカ」になっているかどうか自覚できない罠

世の中の出来事は、100%正しい、100%間違っている、と割り切れない問題が多いものです。たとえば、コップに水が半分入っている状態を見て、「まだ半分残ってる」と考えるか、「もう半分しか残っていない」と考えるかは、人それぞれの考え方次第という面があります。

上記の事例は考え方の問題ではなく、構造的にあり得ないという間違いです。いま読んでいるあなたから見たら、ごく一部のバカな奴の話に見えるかもしれません。「彼らは、構造的な盲点に気づいていないのです」と本ブログ記事でも繰り返し書いてきました。

しかし、この話の恐ろしいところは、自分がこの「一部のバカ」になっているかどうか、自覚できないというところにあります。

自分が見えていない部分が黒い欠落部分として認識できれば、誰もこんな恥ずかしい間違いなどしないでしょう。冒頭の盲点の実験にもあったように、私たちの脳は、情報の欠落部分を、何も問題がなかったかのように自然な感じで自動補正してしまいます。

誰もが「一部のバカ」になる可能性を秘めています(もちろん、偉そうにこんなことを書いている私も含みます)。何かを主張する時、特に、経験論をブチあげる時には、構造的な盲点に気をつけましょう。自戒を込めて。

次回につづく

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