セミナーで「毎月分配型の投信への積み立てが資産形成には優れている」と言われた質問者のかたへ

水瀬ケンイチ

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「毎月分配型投信の積み立てが資産形成には優れている」という話をセミナーで聞いたという方から質問メールをいただきましたので、抜粋して取り上げさせていただきます。

件名:投資信託の銘柄選びについて

先日あるセミナーでオーソドックスなインデックス投信への積立より毎月分配型の投信への積立が資産形成には優れているとの話がありました。分配金を出すことで税金を引かれるものの、税引き後の分配金を再投資に回すことでドルコスト平均効果で口数が低コストに増え複利効果が高まるとのことでした。

話の内容は目から鱗だったのですが、何か見落としている点はないかと不安です。インデックス投資の先輩としてご意見、ご指摘を賜れればありがたいのですが、従来のインデックス投資と異なる視点のこの投資方法をどのようにお考えになられますか?


当ブログでは数年前から幾度となく繰り返され、もはや枯れた話題ですが、いまだにこのような誤解を抱いている方々はたくさんいらっしゃるようです。それどころか、そのような「論理的誤り」を教えているセミナーがあるというのですから、この問題の闇は深いなと思います。



以下に、投資信託の原理原則を書いておきます。

  1. 分配金を出すと、その分だけ投信の基準価額は必ず下がる (例外なし)
  2. 課税は将来に繰り延べるほど有利 (こまめに課税されると元本が減って不利)
  3. 分配金の有無が複利効果の有無ではない
    (インカムゲイン+キャピタルゲイン=トータルリターンで考える)

この原理原則は強固なものなので、覚えておいて損はないと思います。毎月分配型投信は毎月たくさんの分配金が出るかもしれませんが、それは魔法のポケットから出てくるのではなく、投資信託の純資産から支払われます。100円分配すれば100円基準価額は下がります。

100円基準価額を下げて受け取った分配金100円を再投資する。この行動のなかに、利益が増幅される要素は一切ありません。口数が増えても、おんなじだけ基準価額が下がるので、まったく意味がありません。まして、あなたに含み益があれば分配金に20%課税されて、再投資できるのは80円でしかありません。

毎月分配だから何か利益が増幅されるイメージを抱くのかもしれません。思考実験として、ためしに「毎日」分配する投信があったとした場合を考えてみてください。毎日100円分配して(基準価額が100円下がり)80円再投資することを繰り返したら、1か月後、どうなっているでしょうか。考えてみてください。

過去に何度も似たようなことを書いてきましたが、「税引き後の分配金を再投資に回すことでドルコスト平均効果で口数が低コストに増え複利効果が高まる」などというトンチンカンな説明に納得してしまう方がいらっしゃるということは、大事な原理原則は何度でも繰り返しブログに書いた方がいいなとあらためて思いました。

当ブログで過去に取り上げてきた関連記事について、まとめておきます。(さかのぼれば他にももっとありますが)

2014/03/17 毎月分配型投信の不適切な説明でみずほ銀行などに賠償命令
2013/11/06 「NISA口座で毎月分配型ファンドを購入する場合、普通分配金だけを払い出すタイプのものを選ぶべき」→はい?
2012/07/24 毎月分配型投信の分配金の82%が、単に自分のお金の払い戻しという茶番
2012/04/19 たった140文字で日本の投資信託事情が分かる秀逸なツイート
2012/04/18 投信自動売却サービスがあれば、毎月分配型ファンドはもう不要
2011/12/23 【投信業界は注目すべし】 金融審議会のモーニングスター資料が素晴らしすぎる件
2011/10/18 「いつかは経済自由人!」で毎月分配型投信の過剰人気を分析
2011/07/21 毎月分配型投信や通貨選択型投信もいいけれど、売る方も買う方もしっかりしよう
2010/09/02 分配金の誤解

他のブログさんで見つけたよい解説もあわせてご紹介します。図解がわかりやすいです。

吊られた男の投資ブログ (インデックス投資)
2014年02月09日 分配金は部分解約と同じです - NISAも始まったし基本に立ち返る

現在でも、毎月分配型投信は売れ続けています。これは、大別して、(1)投資家の無知に販売会社がつけ込んでいるパターンと、(2)高齢者が取り崩しのために活用しているパターンに分かれると考えています。

(1)については、先ほどの原理原則の「分配金を出すと、その分だけ投信の基準価額は必ず下がる(例外なし)」を頭に叩き込んでおけば、たいていの詭弁は見破れると思います。

(2)についても、現在は「投信自動解約サービス」というスマートな解決法が出てきました。無分配型投信で効率的に資産形成を行い、老後等に取り崩す際は、投信自動解約サービスに申し込んで、定期的に自分の好みの金額を取り崩す。資産の取り崩しを、運用会社が勝手に決めて勝手に変更できてしまう分配金という仕組みに頼る必要はもうありません。

少なくとも、冒頭の質問者さんのような資産形成を目指す投資家は、毎月分配型投信を積極的に選択する理由はもはやありません。将来の相場動向がわからない以上、事前にできる投資判断は、できるかぎり合理的に考えたいものです。

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Posted by水瀬ケンイチ