資産配分を見直すのは、今みたいな時じゃないですかね
水瀬ケンイチ

相場が急落した後に、資産配分を保守的に変更(債券比率アップなど)する方々がいます。逆に、相場が急上昇した後に、資産配分を攻撃的に変更(株式比率アップなど)する方々がいます。
投資の識者でも、相場急落後に「まず過大なリスクを取っていなかったかを振り返って、資産配分を見なおせ」と言う方がいます。常々、これは間違いではないと思いますが、あまり親切なアドバイスではないと思っています。なぜか?
相場が急落した後に慌てて考えるのではなく、平時にこそ、熟慮しておくべき重要課題だと思うからです。
よく言われることですが、ブリンソン氏や小松原氏の研究成果によれば、ポートフォリオの価格変動の8~9割を説明してしまうほど、資産配分は重要なものです(逆に、投資タイミングや銘柄選定の説明力は1~2割程度しかない)。
しかし、所定の資産配分でドルコスト平均法で投資していったとしても、相場動向によって、資産配分は崩れていってしまいます。
また、自分のリスク許容度を「率」で考える方(年間最大で○○%の損失まで耐えられると考える)はまだいいのですが、「金額」で考える方(年間最大で○○万円の損失まで耐えられると考える)は、同じ資産配分で投資していたとしても、積み立て金額が増えてくればくるほど、自分のリスク許容度を越えてしまう可能性が拡大していってしまいます。
<関連記事>
2011/06/18 リスクを「率」で見るか、「額」で見るか?
最近人気のフロンティア株式もハイイールド債も、それ自体に罪はありません。でも、それらハイリスクな資産クラスに集中投資し過ぎてしまえば、相場急変時にはポートフォリオのブレ幅が上にも下にもぶっ飛んでしまいます。
古い言葉で「曲突徙薪」(きょくとつししん)という故事成語があります。災難を未然に防ぐという意味では、現在のような上がりも下がりもしていないような平時にこそ、自分にとって最適な資産配分をしっかり考えておくことが、大切なのだと思います。
もっとも、「曲突徙薪」という言葉は、
ある家で、かまどの煙突が突き出していて、そのそばに薪が積んであった。これを見たある人が煙突を曲げて、薪は別な所に移したほうがよい、そうしないと火事になるだろうと忠告した。しかし、その家の主人は言うことを聞かず、火事になってしまったというたとえ話から。
(「新明解四字熟語辞典」より)
という話がもとになっています。この話のキモは、事前に危険を忠告する人よりも、危険が実際に起きてからドタバタ対応する人の方が評価されやすいという部分にあると私は考えています。情けないことですが、私を含め、人間というのはそういうものかもしれません。
平時にいくら注意喚起をしても、実際は相場が大きく変動しないと、自分のポートフォリオがリスク許容度の範囲内かどうかを調べてみる方は少ないでしょう。そして、実際に相場が急落した後に、「インデックス投資をしていたのに、予想外の損失を被った!」と言って大騒ぎします。過去何度も繰り返されてきたことです。
平時の今こそ、平時の今こそ(大事なことなので2回言いました)、現在の資産配分が、自分のリスク許容度の範囲内にあるかどうかをチェックすべきであることを、声高らかに主張したいと思います。
この記事も、欲の皮の突っ張った方々の耳には届かないと思います。奇跡的にこの記事を読んだ投資家さんは、ぜひチェックしてみてください。
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