バンガードの運用コストは「改定」?「引き下げ」?

水瀬ケンイチ

vanguard logo
米国バンガードのETFの経費率(Expense ratio)が改定され、更に下がっています。

バンガード・インベストメンツ・ジャパン
2014/04/30 2014年バンガードETF™経費率改定のお知らせ

米国に比べて高コストな投資信託を買わされている日本の投信ブロガーたちが、これを聞いて「素晴らしい!」と感じるのは当然のことです。投信ブロガーたちは、「バンガードETFのコスト引き下げ」「バンガードETF (VSS, VT, VWO)がさらにコスト引下げを発表」と書いて賞賛しています。私も同じような表現でブログ記事を書いたことがあります。

しかし最近、「コスト引き下げ」という表現に違和感を覚えるようになってきました。なぜ違和感を覚えるのか?



経費率(Expense ratio)改定は、「前年の運用結果こうなりましたよ」という結果報告に過ぎないからです。


日本の投信業界の慣行のせいで誤解する

日本は投信やETFの運用コストについて、目論見書や申し込みメモには「信託報酬」しか表示されません。「信託報酬引き下げ」というと、運用会社が身銭を切って、将来にわたるコスト引き下げが確定することになります。だから、運用会社はめったなことでは信託報酬引き下げは行いません。

一方、米国の投信やETFは、「経費率(Expense ratio)」で表示されます。これは信託報酬だけでなく、その他費用(売買委託手数料や保管費用など)を含めた「実質コスト」です。その他費用部分は毎年変動するので、経費率(Expense ratio)も毎年変動します。

経費率(Expense ratio)改定は、昨期の経費率の報告であり、コストが上がろうが下がろうが、毎年行なわれるものです。下がったことは大変喜ばしいのですが、それは昨期の過去実績であり、今後の経費率ではありません。来年は上がるかもしれないものです。


投信ブロガーのせいで誤解する?

にもかかわらず、投信ブロガーたちは、毎年「バンガードの経費率改定=引き下げ」といった意味合いで取り上げます。それが、「信託報酬引き下げ=今後の運用コストが安くなる」と読者に誤解させてはいないでしょうか。あるいは、自身がそう誤解してはいないでしょうか。

正しくは、バンガードが公表しているとおり「経費率改定」です。それ以上でもそれ以下でもありません。いつかは上がることもあるでしょうが、それでも「経費率改定」なのです。

その時、投信ブロガーやマスコミは、どのように取り上げるのでしょうか。


それでも米国バンガードは素晴らしい

もちろん、米国バンガードは、経費率を下げられるよう組織形態(ファンドの投資家がバンガードの株主になる構造)を構築し、努力をし続けています。実際に、純資産額が大きくなったファンドについては、毎年のように経費率が下がってきています。それは素晴らしいとしか言いようがない実績です。

そのことにケチを付けたいわけではありません。取り上げる私たちブロガーの表現が間違っているのではないか、という問題提起です。

余談ですが、米国ETFのように国内投信や国内ETFも、経費率(Expense ratio)で運用コストを表示したらよいと思います。もしかしたら、コストが下がり続けているのは米国バンガードETFだけでなく、国内投信や国内ETFにもあるかもしれないのですから。

関連記事
広告
Posted by水瀬ケンイチ