平成電電の破綻に思う

水瀬ケンイチ

平成電電が民事再生法の適用申請を行ったようです。平たく言うと、破綻したってことですね。
僕は会社でこのニュースを聞いた時、一瞬仕事の手が止まってしまいました。


(NIKKEI NETより引用)
平成電電、民事再生法の適用申請・負債総額1200億円

 通信ベンチャーの平成電電(東京・渋谷、佐藤賢治社長)は3日、東京地裁に民事再生法の適用を申請したと発表した。負債総額は今年9月末時点で約1200億円。通信業界の新規参入や価格競争の激化により、計画していた契約数を確保できずに設備投資が重荷となり、財務内容が悪化、資金繰りが行き詰まった。営業を継続しつつ、再生を目指すとしている。

 同社は1990年の設立。通信業界の規制緩和を背景に2001年に一部条件付きながら市内電話サービスを3分7.5円で提供するなどし、注目を集めた。03年には格安通話料が特徴のIP(インターネット・プロトコル)電話よりも安く抑えた全国一律3分6.8円の電話サービス「平成電話(現CHOKKA)」を導入、業界最安値を掲げた。

 05年1月期の売上高は440億6600万円だった。利用者は個人、法人合わせて15万件。営業を強化するため、テレビ宣伝を繰り返したほか、高利回りをうたい、平成電電の事業に投資する匿名組合への出資を個人らから募っていた。 (12:42)
(引用終わり)



この会社が提供していた電話サービスについては興味はないのですが、気になるのは、この会社が個人相手に募集していた匿名組合という形の投資商品の行く末です。
何故かというと、恥ずかしながら、1年前、当時定年直後だったうちの父がこの投資商品を新聞広告で見て、「これはいいんじゃないか!?」とすっかりその気になってしまったのを、自分がやめさせたことがあったのを思い出したからです。以下は、プライドだけは高い父を怒らせないように思いとどまらせるために送った、当時の送信済みメールです。バカ丁寧さから、必死さを汲んでいただきたい(笑)。

(2004/9/14の送信済みメールより引用)

父へ

こんばんは、○○(自分の名前)です。
見せてくれた平成電電匿名設備について調べてみました。
WEBサイトに新聞広告よりも詳細な説明がありました。
聞かれた時は飲んでたのでよくわからず「いいんじゃないの」と言いましたが、調べてみると投資家に著しく不利な商品だと分かりました。
これは見送った方が良いと思います。
簡単なことをわざと難しく色々書いてありますが、この商品の投資家の不利さを、「会計期間/損益の分配」という項目にあったこの説明が、端的に示しています。

『■損益の分配
損益の分配は、営業者の行う平成電電株式会社の電気通信設備に関わる通信設備の賃貸の営業による損益に左右されます。なお、本事業が成功しなかった場合には、利益の分配が受けられず、かつ、匿名組合出資金が減額され、あるいはゼロとなる可能性があります。』

簡単に言えば、
(1)広告で「8%」と表示された配当は、実は何も保障されていない。
(2)「儲からなかった場合はあげないし、どんなに儲かっても最高8%しかあげないよ」と言っている。
(3)配当どころか、投資したお金自体が「ゼロ」になる可能性がある。
ということです。

百歩譲って、(1)(2)は許せても、(3)はひどい。
投資した資金がゼロになる投資商品なんて、逆にそうそうありません。競輪・競馬等のギャンブルと同レベルです。
個別銘柄への株式投資では、企業が倒産すれば投資資金がゼロになることがないことはないですが、そのかわり、利益に天井もありません。いわゆるハイリスクにはハイリターンが見込めなければ割に合いません。
この商品は、一言で言えば、「ハイリスク&ローリターン」の商品だと思います。

他にも、株や投資信託では法律(証券取引法・金融商品販売法など)や機構(保険契約保護機構など)で投資家は何かと保護されているのですが、この商品はそういった投資家保護が一切ない。保険には「入る予定だけど諸般の事情で入らない場合もある」と小さく書いてあります。何じゃそりゃ!って感じです。

平成電電自体は変な会社ではないのかもしれませんが、この商品は、投資先として見ると投資家が著しく不利(=事業者側が著しく有利)な商品です。

この商品の話ではありませんが、最近、ソフトバンクが平成電電と全く同じ事業へ、更に安い価格で12月から参入する意向を発表しています。
これにはNTT東西も相当泡食ってるようですが、平成電電にとっては死活問題だと思います。
今回は、見送ることをおすすめしますよ。

(引用終わり)



この恥ずかしいメールのおかげか、父は出資を思いとどまってくれたようです。たった1年後、もう破綻ですよ。
今日のニュース報道直後から、平成電電のWEBサイトはパンク状態で、特に匿名組合の投資商品のページは全くつながらないところを見ると、相当数の方が困っているのではないでしょうか。
投資経験のないまま定年を迎え、大切な退職金でこの匿名組合に出資してしまい、今日のニュースを見て「自分のお金はどうなってしまうのだろう?」と右往左往している中高年の方の姿が目に浮かんでしまいます。
父は頑固で酒飲みでしたが仕事人間で、まあ常識的な人間でしたし、退職金の運用先については、かなり真剣に検討していたように思います。しかし、自分から見たら、どう見ても危険だった商品を危険とわからなかったようです。
仕事のスキルと、金融スキルは関係がないようです。

金融スキルは本当に大事だと再認識させられる出来事でした。
投資組合に出資した方々の資金が、戻ることをお祈りしています。
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Posted by水瀬ケンイチ