「三井住友・DC全海外株式インデックスファンドに投資する前に知るべき注意点」(by とよぴ~氏)の間違いにツッコミ
水瀬ケンイチ
相互リンクブロガーのとよぴ~氏のブログ「ほったらかし投資のまにまに」に、「三井住友・DC全海外株式インデックスファンドに投資する前に知るべき注意点」という記事が掲載されていました。
詳しくは上記ブログ記事をご覧いただきたいのですが、要点をまとめると、「三井住友・DC全海外株式インデックスファンドは、信託報酬で圧倒的な低コストを実現しているにもかかわらず、リターンはeMAXIS全世界株式インデックスと比べて見た目にもわかるくらい劣後している」ということでした。
しかしながら、それは間違っているのでツッコミを入れさせていただきます。
まずはじめに、とよぴ~氏を個人攻撃する意図はまったくないということを明記させていただきます(彼は仲の良い友人です)。あくまで「書かれている内容が事実かどうか」という一点に限って、ツッコミを入れさせていただくものですので、予めご了承ください。
(以降、三井住友・DC全海外株式インデックスファンドを「DC全海外株式」、eMAXIS全世界株式インデックスを「eMAXIS全世界株式」と省略)
とよぴ~氏の記事では、DC全海外株式とeMAXIS全世界株式のリターンの比較として、Yahoo!ファイナンスの比較チャートを掲載していますので、それを引用させていただきます。

(ほったらかし投資のまにまに「三井住友・DC全海外株式インデックスファンドに投資する前に知るべき注意点」より引用)
この比較チャートは、期間の始点からそれぞれ何パーセント動いているかを比較できるものです(Yahoo!ファイナンスヘルプより)
たしかに、一見すると、赤いライン(eMAXIS全世界株式)が、青いライン(DC全海外株式)を大きく上回っています。その差たるや、時期にもよりますが、ゆうに20%くらい上回っているように見えます。
これをもって、とよぴ~氏はDC全海外株式が「見た目にもわかるくらい劣後している」と主張しているのだと思われます。
しかし、よく見ると、グラフの横軸は2011年1月よりも前から始まっています。2010年9月頃からでしょうか。Yahoo!ファイナンスのチャートは、期間を任意に指定できず、「1か月 | 3か月 | 6か月 | 1年 | 2年 | 5年 | 10年」から選択するしかありません。現在は2015年9月ですので、始点が2010年9月頃ということは、おそらく5年チャートを選択されたのでしょう。
ここが間違いのポイントです。DC全海外株式の設定日は2011年4月18日ですから、始点が揃っていないのです。前述のとおり、Yahoo!ファイナンスの比較チャートは、期間の始点からそれぞれ何パーセント動いているかを比較する仕様なので、始点が違えば、その後、始点から何パーセント動いているかが違ってくるのは当たり前のことです。
では、本当のところはどうなのか。データの始点を揃えて、2つのインデックスファンドのリターンを見てみたいところです。
残念ながら、Yahoo!ファイナンスでは期間の始点を任意で指定できません。そこで、期間の始点を指定できる「投信まとなび」で、DC全海外株式の設定日である2011年4月18日を始点に、2つのインデックスファンドの比較チャートを表示してみました。それが以下のチャートです。

(投信まとなびより)
はい。1本の線にしか見えませんね。
いちおう、凡例にあるように、オレンジ色のラインがeMAXIS全世界株式、茶色いラインがDC全海外株式です。よく目を凝らすと、ところどころ茶色い影みたいに見える部分もありますが、言われなければわからないレベルでしょう。
「投信まとなび」さんを疑うわけではありませんが、グラフ作成の詳細な仕様は、わたしたち利用者にはわかりません。グラフ縦軸の基点が「100」なのも、Yahoo!ファイナンスの比較チャート(基点は0)と若干異なります。
念のため、自分でも検証してみました。
モーニングスターより、2011年4月18日から直近2015年8月31日までの基準価額データをダウンロードして、Yahoo!ファイナンスの比較チャートと同じように、期間の始点からそれぞれ何パーセント動いているかを、自分でグラフにしたのが以下のものです。

はい。やっぱり1本の線にしか見えませんね。
Yahoo!ファイナンスの比較チャートと同じように、縦軸の始点を「0」、横軸の始点を「2011年4月18日」にして、始点からそれぞれ何パーセント動いているかを折れ線グラフにしました。ついでに折れ線の色もYahoo!ファイナンスと合わせて、赤いライン(eMAXIS全世界株式)と青いライン(DC全海外株式)にしています。
いかがでしょうか。Yahoo!ファイナンスの始点がずれた比較チャートとは全然違いますね。ちなみに、よくあるグラフのトリックである、「差を小さく見せたい時には縦軸の最大値を大きく取る」等のまやかしは一切使用していません。
とよぴ~氏の記事の比較チャートは始点が揃っていないため、2つのインデックスファンドのリターン実績を比較するには不適切なチャートだったと言わざるをえません。そして、投信まとなびのグラフと私が作成したグラフからわかる事実はこうです。
DC全海外株式がeMAXIS全世界株式に、見た目にもわかるくらい劣後しているというのはガセ。実際はほぼ同じである。
<おまけというか、フォローというか>
最後に、とよぴ~氏を少しだけフォローすると、DC全海外株式とeMAXIS全世界株式の実績リターンはほぼ同じというのは、これはこれで少しおかしな話です。なぜなら、DC全海外株式の方が圧倒的に低コストなので、その分、リターンで上回ることが期待されるからです。
でも、投信まとなびのデータによると、DC全海外株式の設定来リターンは +80.17%、同期間のeMAXIS全世界株式は +80.62%です。ほぼ同じ水準ですが、むしろわずかながらeMAXIS全世界株式の方が高くなっています(約4年半で+0.45%)。なんだよ~って感じですよね。
これは、とよぴ~氏が分析するように、DC全海外株式はまだ純資産が小さく、一部先物運用を使っていたり、スケールメリットが出ていないことがあるでしょう。加えて、DC全海外株式が、現在の圧倒的に安い信託報酬になったのは、実はつい昨年から(該当記事)であり、低コスト運用が始まってからまだ1年ちょっとしか経っていないという事情もあろうかと思います。
なお、直近1年のリターンは、DC全海外株式 +9.13%、eMAXIS全世界株式 +9.04% となっており、DC全海外株式の方がリターンが高くなっています(関連記事)。
比較チャートは間違っちゃいましたが、DC全海外株式は「今後に期待」という最後の最後の結論は、私も同じであります。
\(^o^)/
詳しくは上記ブログ記事をご覧いただきたいのですが、要点をまとめると、「三井住友・DC全海外株式インデックスファンドは、信託報酬で圧倒的な低コストを実現しているにもかかわらず、リターンはeMAXIS全世界株式インデックスと比べて見た目にもわかるくらい劣後している」ということでした。
しかしながら、それは間違っているのでツッコミを入れさせていただきます。
まずはじめに、とよぴ~氏を個人攻撃する意図はまったくないということを明記させていただきます(彼は仲の良い友人です)。あくまで「書かれている内容が事実かどうか」という一点に限って、ツッコミを入れさせていただくものですので、予めご了承ください。
(以降、三井住友・DC全海外株式インデックスファンドを「DC全海外株式」、eMAXIS全世界株式インデックスを「eMAXIS全世界株式」と省略)
指摘。比較チャートがおかしいぞ!
とよぴ~氏の記事では、DC全海外株式とeMAXIS全世界株式のリターンの比較として、Yahoo!ファイナンスの比較チャートを掲載していますので、それを引用させていただきます。

(ほったらかし投資のまにまに「三井住友・DC全海外株式インデックスファンドに投資する前に知るべき注意点」より引用)
この比較チャートは、期間の始点からそれぞれ何パーセント動いているかを比較できるものです(Yahoo!ファイナンスヘルプより)
たしかに、一見すると、赤いライン(eMAXIS全世界株式)が、青いライン(DC全海外株式)を大きく上回っています。その差たるや、時期にもよりますが、ゆうに20%くらい上回っているように見えます。
これをもって、とよぴ~氏はDC全海外株式が「見た目にもわかるくらい劣後している」と主張しているのだと思われます。
しかし、よく見ると、グラフの横軸は2011年1月よりも前から始まっています。2010年9月頃からでしょうか。Yahoo!ファイナンスのチャートは、期間を任意に指定できず、「1か月 | 3か月 | 6か月 | 1年 | 2年 | 5年 | 10年」から選択するしかありません。現在は2015年9月ですので、始点が2010年9月頃ということは、おそらく5年チャートを選択されたのでしょう。
ここが間違いのポイントです。DC全海外株式の設定日は2011年4月18日ですから、始点が揃っていないのです。前述のとおり、Yahoo!ファイナンスの比較チャートは、期間の始点からそれぞれ何パーセント動いているかを比較する仕様なので、始点が違えば、その後、始点から何パーセント動いているかが違ってくるのは当たり前のことです。
データの始点を揃えると……おいおいおい!
では、本当のところはどうなのか。データの始点を揃えて、2つのインデックスファンドのリターンを見てみたいところです。
残念ながら、Yahoo!ファイナンスでは期間の始点を任意で指定できません。そこで、期間の始点を指定できる「投信まとなび」で、DC全海外株式の設定日である2011年4月18日を始点に、2つのインデックスファンドの比較チャートを表示してみました。それが以下のチャートです。

(投信まとなびより)
はい。1本の線にしか見えませんね。
いちおう、凡例にあるように、オレンジ色のラインがeMAXIS全世界株式、茶色いラインがDC全海外株式です。よく目を凝らすと、ところどころ茶色い影みたいに見える部分もありますが、言われなければわからないレベルでしょう。
自分でも検証してみた
「投信まとなび」さんを疑うわけではありませんが、グラフ作成の詳細な仕様は、わたしたち利用者にはわかりません。グラフ縦軸の基点が「100」なのも、Yahoo!ファイナンスの比較チャート(基点は0)と若干異なります。
念のため、自分でも検証してみました。
モーニングスターより、2011年4月18日から直近2015年8月31日までの基準価額データをダウンロードして、Yahoo!ファイナンスの比較チャートと同じように、期間の始点からそれぞれ何パーセント動いているかを、自分でグラフにしたのが以下のものです。

はい。やっぱり1本の線にしか見えませんね。
Yahoo!ファイナンスの比較チャートと同じように、縦軸の始点を「0」、横軸の始点を「2011年4月18日」にして、始点からそれぞれ何パーセント動いているかを折れ線グラフにしました。ついでに折れ線の色もYahoo!ファイナンスと合わせて、赤いライン(eMAXIS全世界株式)と青いライン(DC全海外株式)にしています。
いかがでしょうか。Yahoo!ファイナンスの始点がずれた比較チャートとは全然違いますね。ちなみに、よくあるグラフのトリックである、「差を小さく見せたい時には縦軸の最大値を大きく取る」等のまやかしは一切使用していません。
とよぴ~氏の記事の比較チャートは始点が揃っていないため、2つのインデックスファンドのリターン実績を比較するには不適切なチャートだったと言わざるをえません。そして、投信まとなびのグラフと私が作成したグラフからわかる事実はこうです。
DC全海外株式がeMAXIS全世界株式に、見た目にもわかるくらい劣後しているというのはガセ。実際はほぼ同じである。
<おまけというか、フォローというか>
最後に、とよぴ~氏を少しだけフォローすると、DC全海外株式とeMAXIS全世界株式の実績リターンはほぼ同じというのは、これはこれで少しおかしな話です。なぜなら、DC全海外株式の方が圧倒的に低コストなので、その分、リターンで上回ることが期待されるからです。
でも、投信まとなびのデータによると、DC全海外株式の設定来リターンは +80.17%、同期間のeMAXIS全世界株式は +80.62%です。ほぼ同じ水準ですが、むしろわずかながらeMAXIS全世界株式の方が高くなっています(約4年半で+0.45%)。なんだよ~って感じですよね。
これは、とよぴ~氏が分析するように、DC全海外株式はまだ純資産が小さく、一部先物運用を使っていたり、スケールメリットが出ていないことがあるでしょう。加えて、DC全海外株式が、現在の圧倒的に安い信託報酬になったのは、実はつい昨年から(該当記事)であり、低コスト運用が始まってからまだ1年ちょっとしか経っていないという事情もあろうかと思います。
なお、直近1年のリターンは、DC全海外株式 +9.13%、eMAXIS全世界株式 +9.04% となっており、DC全海外株式の方がリターンが高くなっています(関連記事)。
比較チャートは間違っちゃいましたが、DC全海外株式は「今後に期待」という最後の最後の結論は、私も同じであります。
\(^o^)/
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