国と金融機関と投資家、それぞれすねに傷があるけれど

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金融庁森長官が投信の販売会社や運用会社に対し、顧客利益を最優先したビジネスモデルに転換することを求めたとのこと。

投信の販売・運用会社、顧客優先に転換すべき=金融庁長官 | ロイター

[東京 7日 ロイター] - 金融庁の森信親長官は7日、投資信託の組成や販売で、顧客の利益よりも手数料獲得が優先されている例があると指摘し、投信の販売会社や運用会社に対し、顧客利益を最優先したビジネスモデルに転換することを求めた。その上で顧客利益を顧みない会社は淘汰(とうた)されるよう市場メカニズムが働く環境づくりが同庁の責務であると強調した。



さすが森長官、良いことを言います!!

ほかにも、

「消費者の真の利益を顧みない生産者の論理が横行している」
「手数料獲得が優先され、顧客の利益が軽視される結果、顧客の資産を増やすことができないビジネスは、社会的に続ける価値があるのか」

と日本の投信に対して常々私が思っていた不満をズバッと言ってくれました。金融機関からしたらぐうの音も出ない正論。そこにシビれる!あこがれるゥ!

私は個人投資家なので、投信の販売会社が顧客に新規投信を次から次へと買い換えさせる「回転売買」や、運用会社がこぞって設定した3階建て・4階建ての複雑な高コスト投信を、庶民からお金を巻き上げる醜い所業として苦々しい思いで見てきました。

当ブログでも10年以上前から何度も指摘してきましたし、同様の指摘をする一部メディアの記事やシンクタンク等の情報を積極的に取り上げてきました。





ただ、金融庁が一方的に正しく、金融業界が悪く、投資家は常に被害者だったのかというと、そうでもない面もあると思います。


国にもすねに傷あり


かつての日本の証券市場自体が「官製市場」だったことで、投信も商品そのものの意義を期待されて登場したというより、国策として値崩れを防ぐための手段として登場したという「黒歴史」があったことも、あわせて知っておくべきだと思います。



上記はいまから6年前のブログ記事です。その中で紹介した東洋経済オンラインの記事の要約が、以下の内容です。

・戦後、GHQの指令による財閥解体や財産税徴収などにより、大量の株式が市場に供給されるに至ったため株価は急落。これに対処するため、大蔵省(当時)は生命保険会社への買い出動要請や、信用取引制度の確立、株式担保金融の実施促進などを行なったが、そのほか株式保有組合の設立と並んで出てきた構想が「証券投資信託」だった

・戦後の投資信託への期待は、業界サイドというよりも“国家的要請”の要素のほうが強かった。産業復興資金が欲しかったため

・欧米の投資信託の発生が、投資リスクの分散や小口資金の集中化による資金力強化など、国民サイドまたは業界サイドからの自然な経済的欲求から生まれたのに対し、日本の証券投資信託は“官製の義勇軍”といったニュアンスが強かった

・その後に登場した数多くの投資信託も、多かれ少なかれ、「証券市場対策のための道具立て」「経済対策の一環としての投資信託の活用」という構図の中で誕生した(長期公社債投信、中期国債ファンドなど)

・ETFも、政府が2001年の絶不況期に策定した「緊急経済対策」に端を発し、銀行などの株式持ち合い解消による影響を阻止する仕掛けとして登場した

知っておくべき日本の投資信託の黒歴史 - 梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)より



国は投信を国策を進める道具としていいように使ってきた歴史があります。比較的新しいETFだってそうです。

国が「投資家の利益を優先すべき」とほんとうに胸を張って言える立場なのかは、歴史的には議論があるところだと思います。(現在の投資家としては非常にありがたいですが)


金融機関のすねの傷


金融機関はすねの傷どころか、金融庁からサンドバック状態で、既に全身傷だらけかもしれません。

たしかに、過去において投信販売会社や運用会社は、金融庁が指摘するような顧客の利益よりも手数料獲得が優先するようなひどい営業を続けてきました。当ブログでも散々指摘してきたことです。

ただ、上記の投信の「黒歴史」を知った上で、販売会社や運用会社など金融業界の立場に立ってみれば、「国は昔言っていたことと今言っていることが全然違う」「改革はお上からの強制ではなく、市場原理で行われるべきものだ」という思いがあると思います。実際に、金融業界内の方々からそのような主旨の話をよく聞きます。

また、運用会社の中には少数ながら、投信業界の現状を憂い投資家のためになるような投信を作り、育て続けてきた運用会社もあります。金融先進国の米国から、本場の高品質な商品を日本で提供してくれる会社もあります。自ら襟を正して、今まさに変わろうとしている会社もあるでしょう。(結局、変われない会社もたくさんあるでしょうが)


投資家のすねの傷


投資家も自分の胸に手を当てて考えてみると、「よく考えず儲け話に飛びつくが、損したら文句を言って被害者面」といった理不尽な態度がありはしなかったでしょうか。

前出の3階建て・4階建ての複雑などうしようもない高コスト投信も、買う人がいるから売れる、売れるから買う人が増える、といった鶏が先か卵が先かの「負のサイクル」という面があります。

いくら販売会社のセールストークが巧みでも、彼らが勝手に顧客の口座へ投信を放り込めるわけでも、自由に抜き替えられるわけでもありません。投資家が売買することを了承して初めて、それが実行できます。

「投資は自己責任」の合言葉のとおり、投資行動の最終責任は私たち投資家にあります。


大事なのはこれから


何が言いたいのかというと、国にしても、金融業界にしても、投資家にしても、それぞれすねに傷を持っているということです。

国がいつも投資家の味方なわけでもない(投資家からお金を巻き上げたこともある)。
金融機関がすべて投資家の敵でもない(投資家の味方の金融機関もある)。
投資家がすべて正しいわけでもない(理不尽な文句を言う者もいる)。

みんな過去にはいろいろありました。でも、大事なのはこれからです。将来です。

金融庁長官の講演は素晴らしいと思いますが、私たち投資家もいったい何が良いことなのか、何が将来につながるのかを、(誰に何を言われたかではなく)自分の頭で考えてみる必要があると思います。

自分の目的を達成するために、優れた商品はどれなのかを各自が考え、自ら選んでいく。みんながそうすると、優れた商品が売れるようになり、投信業界もそれに応じてより優れた商品を作っていく。ボッタクリ商品を作ったり回転売買などしなくても、より優れた商品を作ることで業容を拡大していくようになり、そうやって、自然に投信市場全体が良くなっていく。

そうなるといいなと思います。


自分はどうか


……などと偉そうなことを言ってますが、現在、私は本業の仕事が繁忙期でひぃこらひぃこらいっており、常に投信の未来について考えているわけではありません。

機会をとらえて時折考えていきたいと思っています。今回は、ブログ記事冒頭のニュースと、昨日行われた個人向けの積立NISA説明会(私は残念ながら本業多忙のため欠席)を受けてブロガー仲間たちが言っていたことを聞いて、あらためて考えてみた次第です。

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