インデックスファンドシリーズの勢力図の変化を見て思うこと
水瀬ケンイチ
モーニングスターに、インデックスファンドシリーズの勢力図についての興味深いデータがありました。
モーニングスター [ アナリストの視点(ファンド) インデックスファンドシリーズ勢力図―熾烈なコスト競争、古参の逆襲開始? 2017-05-11]
上記コラムには、インデックスファンドシリーズの純資産総額及び本数の推移、主要指数別コスト最安値推移、純資産総額シェア、純資金流出入額トップ10と、貴重なデータが盛りだくさんです。
なかでも個人的に興味深いと思ったのが、インデックスファンドシリーズの純資産総額シェアです。上記コラムからグラフを引用させていただきます。
(モーニングスター [ アナリストの視点(ファンド) インデックスファンドシリーズ勢力図―熾烈なコスト競争、古参の逆襲開始? 2017-05-11]より引用)
これは、インデックスファンドシリーズの純資産総額シェアを2012年と2017年で比較したものです。
2012年は SMT と eMAXIS をあわせて市場の9割をしめていました。しかし、5年後の2017年になると、SMT と eMAXIS はあわせて5割にそのシェアを落としています。
かわりに、さらに三井住友DC、ニッセイインデックス、たわらノーロードなどの低コストな新勢力がシェアを伸ばしています。ただし、三井住友DC、ニッセイインデックス、たわらノーロードの3シリーズを足すと3割程度のシェアで、別の図表のデータによると、直近の純資産の流入は3シリーズの新勢力が圧倒しています。
このデータは、いろいろな見方ができると思います。
コラムでは、「新規参入組のシェア奪取」「投資家は敏感にシリーズ間でのコスト差を意識して、投資を行っている可能性が高い」として、コストに敏感な投資家による新勢力の善戦というように捉えているようです。
たしかに、近年インデックス投資ブログが増えてきて、インデックスファンドの詳細な運用コスト比較情報の発信があちこちで活発に行われています。(私も勝手に頑張ってます)
一方で、私が最近、積み立て用投信としたたわらノーロードは、信託報酬だけでなくその他コストを加味した「実質コスト」やベンチマークとの差異などを詳細に分析したうえ、相対的によいと判断したのですが、シェアはたった3%程度です。
インデックスファンドの勢力図の変化は、より低コストな新インデックスファンドシリーズが出ても、自分が思っていたよりもゆっくりだなという印象です。
より低コストな新インデックスファンドが登場すると、インデックス投資ブログ界隈では「すごい!」とお祭り騒ぎになります。「これからは○○インデックスファンドの時代!」「△△インデックスファンドはもう終わった」とばかりに、新勢力が市場を席巻するかのような雰囲気につつまれます。
しかし、こんなのは一部のマニアック投資家のなかだけの話だということを再認識させてもらいました。
大半のインデックス投資家は、資産配分を決めて一度積み立て設定をしたら、それこそ「ほったらかし」にして、それほど新商品情報の収集に熱心ではない可能性があります。
インデックス投資は、手間がかからないことが大きな特長なので、ある意味、正しい姿勢だと思います。
また、近年の相場状況も影響していると思います。
ここ数年は上げ相場が続いていたため、損益が「含み益」状態で、既存インデックスファンドをすべて売却して新インデックスファンドに乗り換えると、利益に20%課税されて資産が減ってしまう状態にある投資家が多そうです。
既存投資分はそのままホールドして課税は先送りし、新規積み立て投資分のみを新インデックスファンドに切り替える。そんな運用が多くのインデックス投資家にとって、しっくりくる状況なのかもしれません。
逆に言えば、下げ相場がきて損益がプラスマイナス0付近になった場合、課税されない絶好の全額乗り換えチャンスとなるでしょう。(信託財産留保額があるファンドはそれを考慮する必要はありますが)
インデックスファンドの勢力図の変化はゆっくりとしたものです。でも、全体の純資産総額の積み上がりとともに、着実に変化していくものと思われます。
2012年、2017年、さらに5年後の2022年にはどのような勢力図になっているのか、あまりせかせかせず、のんびりと構えて楽しみにしておきたいと思います。
<ご参考>
主要な低コストインデックスファンドの比較シリーズ記事を、四半期ごとに更新していますので、ご興味があればどうぞ。
→低コストインデックスファンド徹底比較
上記コラムには、インデックスファンドシリーズの純資産総額及び本数の推移、主要指数別コスト最安値推移、純資産総額シェア、純資金流出入額トップ10と、貴重なデータが盛りだくさんです。
なかでも個人的に興味深いと思ったのが、インデックスファンドシリーズの純資産総額シェアです。上記コラムからグラフを引用させていただきます。
(モーニングスター [ アナリストの視点(ファンド) インデックスファンドシリーズ勢力図―熾烈なコスト競争、古参の逆襲開始? 2017-05-11]より引用)
これは、インデックスファンドシリーズの純資産総額シェアを2012年と2017年で比較したものです。
2012年は SMT と eMAXIS をあわせて市場の9割をしめていました。しかし、5年後の2017年になると、SMT と eMAXIS はあわせて5割にそのシェアを落としています。
かわりに、さらに三井住友DC、ニッセイインデックス、たわらノーロードなどの低コストな新勢力がシェアを伸ばしています。ただし、三井住友DC、ニッセイインデックス、たわらノーロードの3シリーズを足すと3割程度のシェアで、別の図表のデータによると、直近の純資産の流入は3シリーズの新勢力が圧倒しています。
このデータは、いろいろな見方ができると思います。
コラムでは、「新規参入組のシェア奪取」「投資家は敏感にシリーズ間でのコスト差を意識して、投資を行っている可能性が高い」として、コストに敏感な投資家による新勢力の善戦というように捉えているようです。
たしかに、近年インデックス投資ブログが増えてきて、インデックスファンドの詳細な運用コスト比較情報の発信があちこちで活発に行われています。(私も勝手に頑張ってます)
一方で、私が最近、積み立て用投信としたたわらノーロードは、信託報酬だけでなくその他コストを加味した「実質コスト」やベンチマークとの差異などを詳細に分析したうえ、相対的によいと判断したのですが、シェアはたった3%程度です。
インデックスファンドの勢力図の変化は、より低コストな新インデックスファンドシリーズが出ても、自分が思っていたよりもゆっくりだなという印象です。
より低コストな新インデックスファンドが登場すると、インデックス投資ブログ界隈では「すごい!」とお祭り騒ぎになります。「これからは○○インデックスファンドの時代!」「△△インデックスファンドはもう終わった」とばかりに、新勢力が市場を席巻するかのような雰囲気につつまれます。
しかし、こんなのは一部のマニアック投資家のなかだけの話だということを再認識させてもらいました。
大半のインデックス投資家は、資産配分を決めて一度積み立て設定をしたら、それこそ「ほったらかし」にして、それほど新商品情報の収集に熱心ではない可能性があります。
インデックス投資は、手間がかからないことが大きな特長なので、ある意味、正しい姿勢だと思います。
また、近年の相場状況も影響していると思います。
ここ数年は上げ相場が続いていたため、損益が「含み益」状態で、既存インデックスファンドをすべて売却して新インデックスファンドに乗り換えると、利益に20%課税されて資産が減ってしまう状態にある投資家が多そうです。
既存投資分はそのままホールドして課税は先送りし、新規積み立て投資分のみを新インデックスファンドに切り替える。そんな運用が多くのインデックス投資家にとって、しっくりくる状況なのかもしれません。
逆に言えば、下げ相場がきて損益がプラスマイナス0付近になった場合、課税されない絶好の全額乗り換えチャンスとなるでしょう。(信託財産留保額があるファンドはそれを考慮する必要はありますが)
インデックスファンドの勢力図の変化はゆっくりとしたものです。でも、全体の純資産総額の積み上がりとともに、着実に変化していくものと思われます。
2012年、2017年、さらに5年後の2022年にはどのような勢力図になっているのか、あまりせかせかせず、のんびりと構えて楽しみにしておきたいと思います。
<ご参考>
主要な低コストインデックスファンドの比較シリーズ記事を、四半期ごとに更新していますので、ご興味があればどうぞ。
→低コストインデックスファンド徹底比較
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