MSCIのインデックス使用料がけっこう高い。今後の激しい値下げ競争を予想
水瀬ケンイチ

ブルームバーグに、MSCIのインデックス使用料が掲載されていました。
上記記事によると、「ETF設定会社は運用資産の何%かを指数会社に支払うのが典型的だ。MSCIの場合、1-3月(第1四半期)の料率は平均3.08ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)だった」とのこと。
年率で運用資産の平均 0.0308% がインデックス使用料というのは、絶対値としては小さく見えるかもしれませんが、個人的にはけっこう高いと思います。
たとえば、東証に上場している「iシェアーズ 先進国株ETF(MSCIコクサイ)」(銘柄コード1581、米国ではティッカーTOK)の経費率は年率 0.25% です。このうち 0.03% がMSCIのインデックス使用料だとすると、経費の1割以上はインデックス使用料ということになります。
昨年、米国バンガードに訪問した時に、インデックス使用料が高いため、非常に苦労してベンチマークを変更してきたお話を聞きました。バンガードの代表的インデックスファンドである Vanguard Total Stock Market Index Fund(ETFのティッカーVTI、経費率 年率0.04%)は、投資対象の広範化と運用コスト削減のため、
Dow Jones Wilshire 5000 Index
↓
MSCI US Broad Market Index
↓
CRSP US Total Market Index(現在はこれ)
とベンチマークを変更してきています。
ベンチマークに連動することを目的とするインデックスファンドやETFが、そのベンチマークを変更するということは、実績データの連続性や投資家への説明など課題がたくさんありそうです。
「ベンチマークの移行は大変でしたか?」と質問すると、苦笑いして「大変でした」と言いつつ、「運用コストの大部分をインデックスのプロバイダーに払うのは納得できないのでやった」と言っていました。(該当記事はこちら)
米国のインデックスファンドやETF自体の経費率は激しい競争によって下がるところまで下がり、コスト競争は最終局面に入っていると思います。バンガードのような超・低コスト水準になると、運用コストの大部分がインデックス使用料ということもあるのでしょう。
そのなかで、指数使用料の負担感が目立ってきました。上記のブルームバーグの記事のように、インデックス提供会社は、インデックス運用の拡大でかなり儲けているようですので、今後は、インデックス使用料も激しい値下げ競争になると予想します。
インデックス提供会社にとっては大変かもしれませんが、健全な競争で運用コストが下がることは、投資家にとってはありがたいことなので、がんばってほしいと思います。
P.S
原題の「Math Geeks Behind ETFs Scramble to Defend $1 Billion Bonanza」には、邦題の「パッシブ運用ブーム」などという単語はどこにもありませんし、世界的なパッシブ運用の拡大は一時的なブームなどではないと思いまっせ。
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