ロボアドバイザーなどの Fintech についてどう思うか

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先日、出版社経由で某ネットメディアの取材をお受けしました。そこで、ロボアドバイザーなどの Fintech(フィンテック) についてどう思うか?という質問を厚めに受けました。

顧客がいくつかの質問に答えるだけで、最適と思われる資産配分を提案し、定期的に積み立てとリバランスを行なってくれるロボアドバイザーについては、将来性はあるとは思います。しかし、現在のサービスレベルは、投資先のETF等の運用コストに加えて年率1%程度の追加コストを払うという時点で考慮に値しないと考えています。

「運用資産の1%が運用コスト」といえばごくわずかという印象をいだくかたもいらっしゃるかもしれませんが、株式の期待リターンはせいぜい年率5%程度です。期待リターンの年率5%のうち年率1%分が運用コストとして引き抜かれると考えれば、「リターンの20%を毎年自動的に引き抜かれる」という計算になります。

例えば、100万円を運用している場合、平均でならせば毎年5万円のリターンがあるうちの、1万円を追加で抜き取られるというレベルです。10年運用していたら10万円を追加で抜き取られるレベルです。

この追加コストを、ごくわずかだと言い切れるかたは少ないでしょう。

また、年率1%の追加コストというのは、私がインデックス投資を始めた15年前から現在に至るまでの長期間において、インデックスファンドの運用会社が行なってきた、血の滲むようなコスト削減努力をすべて放棄して、高コストなインデックス投資暗黒時代に自ら戻ることを選択するというレベルです。

最初に最適と思われる運用資産の提案の時だけ運用資産の1%を取られる(イニシャルコスト)ならまだしも、資産配分が決まった後も、毎年毎年積み立て続けた運用資産の1%ずつ取られ続ける(ランニングコスト)のは割に合いません。

たとえ、自動的にリバランスをやってくれる対価であったとしても、1年間のうち15分もかからないであろうリバランス作業を自動でやってもらえる手数料として、運用資産の1%というのは高すぎなのです。

ロボアドバイザーが相場の騰落を予想して、うまく暴落を回避してくれると思われるかもしれませんが、それは過剰期待以外の何物でもありません。もし、そんな優秀なロボットのプログラムが作れるのであれば、今頃クオンツファンドのファンドマネージャーやプログラマーは大儲けして全員大金持ちですが、ご存知のとおり実際はそうなっていません。

要するに、現在の日本のロボアドバイザーは、期待できる提供サービスに対して、ランニングコストが高すぎて話にならないのだと思います。

話は変わりますが、2016年の秋、私は生まれて初めて米国バンガード社を訪問する機会に恵まれました。バンガードでロボアドバイザー的なサービスを提供しようかと検討がはじまった時に、バンガードの顧客の意識調査をしたというのです。

その結果、運用コストに非常にうるさいバンガードの顧客でも、ロボアドバイザー的な投資アドバイスの手数料として年率0.3%程度であれば、払っても良いという結果が出たそうです。それを受けてバンガードでは、年率0.3%の手数料でロボアドバイザー的なサービスを、PAS(Personal Advisor Services)として提供することになったと知りました。

PASの内容は顧客に合わせて多岐にわたっていますが、テクノロジーを使ったポートフォリオ分析やいわゆるロボアドバイス等と、人間のファイナンシャルアドバイザーのアドバイスとの、ハイブリッドなサービスとなっていました。

<ご参考>
米国バンガード訪問レポート(その3) バンガードで個人アドバイスサービスが伸びている? - 梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)

ですので、日本におけるロボアドバイザーなどの Fintech について、「投資に対するハードルを下げるという将来性はあるものの、現在のコスト水準では利用をおすすめしない」と、某ネットメディアの取材でお答えしました。

この意見は、最近盛り上がり始めている Fintech ビジネスに対してネガティブな意見になってしまうので、おそらくメディアからはあまり良い顔はされないと思います。

しかしながら、まともな投資本を1冊買って読み込めば、せいぜい1,000円~2,000円程度の費用しかかからない(100万円を運用していたら0.1%~0.2%)うえに、一度頭に入った知識は、運用コストを毎年取られることもなければ、誰かに奪われることもありません。

世の中の Fintech ビジネスの盛り上がりに冷水を浴びせることになったとしても、私は、個人投資家は冷静に「コスパ」(費用対効果)を考えて行動する方がよいと思います。


P.S
Fintech というテクノロジー自体を否定しているわけではありません。追加コストが、年率 0.5%を切る水準(できれば米国バンガードと同等の年率 0.3% 程度)になれば、投資のハードルを下げる有力なツールになり得ると思います。

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