「勉強不要の投資デビュー」という珍妙な意見を熱弁するFPへの反論

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毎日のように投資コラムを書いているFP(ファイナンシャル・プランナー)が、「勉強不要の投資デビュー」という珍妙な意見を熱弁していたので、取り上げたいと思います。

※予め申し上げておきますが、当ブログ記事で取り上げるFP山崎俊輔氏(以降、山俊氏)は、一緒にお仕事をしたこともある優秀な人物であり、サッカーやアニメなど個人的趣味も合う仲の良い友人です。一種の「プロレス」だと思ってご笑覧ください。


有名投資ブロガーが激怒した「勉強不要の投資デビュー」はありかNGか(山崎俊輔) - 個人 - Yahoo!ニュース 有名投資ブロガーが激怒した「勉強不要の投資デビュー」はありかNGか(山崎俊輔) - 個人 - Yahoo!ニュース


詳しくは上記コラムを御覧いただきたいのですが、わたくし水瀬ケンイチを名指しして、著名ブロガーで本が少々売れていると褒め殺した上で、「勉強不要の投資デビュー」とコラムで書いたら激怒されたとして、謎の論旨を展開していました。論旨の流れはこうでした。(コラムの小見出しをそのまま抽出しました)

  1. カジュアル気分で投資デビューと書いたらマジメな投資ブロガーに怒られた
  2. 勉強したほうがいいのは当たり前だが、「証券口座開設」にこぎ着けるのは欲望や色気、好奇心である
  3. 好奇心が投資の「経験」を導けば、これは貴重な財産になる
  4. 失敗を乗り越えて投資を続けるために、たったふたつのルールだけ守れば、どんな形でも投資デビューを急いだほうがいい
  5. 「強制的勉強」ができないなら「好奇心の芽」を摘まないことが大事

上記コラムの中で山俊氏から「今度は水瀬さんのブログで同じネタについて語ってもらうのを待ちたいと思います」と話を振られています。尊敬する山俊氏に敬意を払い、ひとつひとつ丁寧に、所見を述べていきたいと思います。


『1. カジュアル気分で投資デビューと書いたらマジメな投資ブロガーに怒られた』について


まずはじめに、山俊氏の「カジュアル気分で投資デビュー」という意見をツイッターで初めて見た時に、私とは意見が違うものの、まったく怒っていませんでした。

わざわざ山俊氏がコラムで引用した当時のツイートにも「ぜんぜん怒ってませんよ😄 投資に限らず、勉強でも仕事でもスポーツでも、何事も基礎を学んでから次に進むのが道理です。何故に投資だけとにかく始めろという話になるのかわからないという、素朴な疑問です」とあるとおりです。

にもかかわらず、上記コラムのタイトルは、『有名投資ブロガーが激怒した「勉強不要の投資デビュー」はありかNGか』です。なぜか激怒したことになっています。専業アフィリエイターも真っ青の煽りタイトルです。

私はぜんぜん怒っていませんでしたが、このタイトルを見て、少し怒りました(笑)

そもそも、山俊氏は「フィナンシャル・ウィズダム代表」というよくわからない肩書を名乗っていますが、その実は、日経電子版や PRESIDENT online など数々のメディアに連載コラムを持つ著名FP(ファイナンシャル・プランナー)です。

FPとは、『人生の夢や目標をかなえるために総合的な資金計画を立て、経済的な側面から実現に導く方法を「ファイナンシャル・プランニング」といいます。ファイナンシャル・プランニングには、家計にかかわる金融、税制、不動産、住宅ローン、保険、教育資金、年金制度など幅広い知識が必要になります。これらの知識を備え、相談者の夢や目標がかなうように一緒に考え、サポートする専門家が、FP(ファイナンシャル・プランナー)です』(FP協会 WEBサイトより)とのこと。

山俊氏も金融知識を備えて相談者の夢や目標がかなうようにサポートするお金の専門家であるはずです。

そのお金の専門家が「カジュアル気分で投資デビュー」とはこれいかに。

上記コラムによると、山俊氏は大人の難しいものごとを、子どもの教育に置きかえるたとえ話がお好きなようですので、その流儀に則ってこちらも教育に置き換えてたとえ話をします。

もし、山俊氏が愛するお子さまが通うであろう学校の教師が、「カジュアル気分で教育してます。子どもは勉強不要」などとネットで謎の持論を開陳していたらどう対応されるのでしょうか。

それこそ怒って、「こんな教師でいいのか日本の教育。崩壊する学校の現場を追う」全5回シリーズを日経電子版で連載したい衝動に駆られるのではないでしょうか。

一般常識と違うことを言ってちょっと目立ってやろうとばかりに、嘘から始まるコラムをヤフーニュースという大メディアで書くことは、ご自身の今後の仕事に差し支えるばかりでなく、マジメな後進のFPたちにも迷惑をかける事になりかねません。


『2. 勉強したほうがいいのは当たり前だが、「証券口座開設」にこぎ着けるのは欲望や色気、好奇心である』について


小見出しの冒頭で「勉強したほうがいいのは当たり前」と言った時点で、結論は出ています。ここで、本稿を終えてもいいくらいです。

投資のきっかけは欲望や色気、好奇心であることに異論はありませんが、それをきっかけに本一冊読むくらいの勉強をしてから投資をはじめたらいいのではというのが私の意見です。なぜ即投資なのでしょう。

当時のツイートで、「なんなら山俊さん自身の著書を一冊読んでから始めてください、でも十分良心的」とも投稿したのですが、コラムではなぜか流され、「口座開設はハードルが高い」という別の要因でもみ消されています。

ご自身で「勉強したほうがいいのは当たり前」という大前提を置いているのに、そのあと延々と続くコラムを書くうちに頭の中でなにをどうこじらせたのか、コラムの最後は、『水瀬さんには怒られるのは承知で、これから投資デビューしようかと考えている人に対し、「投資デビューはカジュアルにやっちゃって」メッセージを送りたい』という決意表明で結ばれています。

「勉強したほうがいいのは当たり前」からの「投資デビューはカジュアルにやっちゃって」とは。

春は季節の変わり目です。花粉症や風邪をこじらせて、予想だにしない大病につながることのないように、どうか温かくしてたっぷり睡眠をお取りください。


『3. 好奇心が投資の「経験」を導けば、これは貴重な財産になる』について


ここでたとえ話好きの山俊さんは、投資をスキーやデートにたとえた話を始めます。まずはレンタルスキーで滑ってみようとか、サクッと告白をしてとりあえずつきあってみようとか。

いい。実にいい。甘酸っぱい青春時代の過ごし方であれば、私も完全に同感です。

しかし、投資における市場の参加者は、ゲレンデのスキーヤーや、学校の同級生たちではありません。

例えば、日本の株式市場に占める個人投資家の比率は2割弱です。しかも年々比率は下がってきています。

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(出所:日本取引所グループ WEBサイト

残りは全員、外国法人、証券会社、生損保、信託銀行など生き馬の目を抜く百戦錬磨のプロたちです。相手は、ウォール街やシティの投資銀行のトレーダーたちであったり、アラブの石油王のファンドの資金であったり、あるいは、超高速アルゴリズムかもしれません。

プロが常に勝てるかどうかは別にして、市場での振るまい方を知らないカモは、容赦なく養分にされます。投資の市場は、ゲレンデや学校などではなく、食うか食われるかの「戦場」なのです。

プロがひしめく市場で、「勉強不要で投資デビュー」などとのんきなことを言って何の準備もなく投資をはじめることは、素っ裸で戦場のまっただ中に飛び込むみたいなものです。

この戦場では、戦い方を間違えると、本当に死人が出ます。洋の東西を問わず、一生かかっても返せない借金を抱えて自殺する投資家の例は、枚挙に暇がありません。

(山俊さん好みのたとえ話で言えば、ガルパンの戦車道で、なんの装備も戦略もない大洗学園がいきなり大学選抜と戦うようなもの、と言ったらご理解いただけるでしょうか。しかも罰ゲームは「あんこう踊り」ではなく、財産を失う、最悪の場合「死」です)

なにも初心者を脅かしたいわけではありません。私がインデックス投資という(比較的頑丈な)戦車に乗って15年間戦ってきた間には、順調に快進撃することもあった一方で、敵の猛攻で瀕死の重傷を負ったこともあり、数年にわたってとても辛い思いもしました。

私がリーマン・ショックなどの大暴落時にも投資をやめずに続けることができたのは、投資に対する知識があったからです。過去の歴史、世の中のしくみ、自分がやっている投資法のリターンの源泉は何か、こういった知識があったことが、底なし沼のような大暴落のなかでも投資を継続してこられた要因です(詳しくは、拙著「お金は寝かせて増やしなさい」第4章~第5章参照)。

だからこそ、これから投資をはじめる方々には、無用な辛い思いをしてほしくないし、投資を継続してほしいから、勉強してから投資を始めたほうがいいと言っているのです。


『4. 失敗を乗り越えて投資を続けるために、たったふたつのルールだけ守れば、どんな形でも投資デビューを急いだほうがいい』について


「たったふたつのルールだけ守れば」という条件、それこそが「勉強」でしょう。山俊氏はそれすらいらないという主張をしていたのではなかったのでしょうか。

このツッコミは、むしろ「言ってほしい」と言われた気がしたので言いました。というか、言わされました(笑)


『5. 「強制的勉強」ができないなら「好奇心の芽」を摘まないことが大事』について


勉強不要という勇ましい主張で始まったのに、途中でいつのまにか「強制的勉強ができないなら」という条件が追加されています。こういう話の進め方はズルい。

その「強制的勉強」についても、確定拠出年金(DC)を導入する企業(事業主)は、確定拠出年金法により導入研修の実施が事業主の責務として義務づけられています。これは投資を始めるにあたっては勉強が必要だという証左でもあります。

投資には勉強が必要だから、勉強が義務づけられている。単純な話です。

くだんの山俊氏は、このDC導入研修の講師としても大活躍されています。企業相手には積極的に導入研修の講師として投資の説明をしながら、一方で、投資未経験の個人にはネットで「勉強不要の投資デビュー」を勧める。

これには、さすがにツッコまざるを得ません。

なんやそれ!

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いいじゃないですか。一生懸命書かれたご著書や、ご自身のセミナーを視聴して基本を押さえたうえで、投資を始めてくださいで。「投資を始めるには、わたくし山崎俊輔の本などを一冊読んでからスタートしてください。あとはやりながら学んでください」で。

投資の未経験者が自分で投資を学ぶことで、山俊氏になにか困ることがあるのでしょうか。

FPはお金の専門家ですから、実は困ることがあるのかもしれませんね、という「邪推」すら脳裏に浮かんでしまいます。大勢の素人が丸腰で投資を始めたあと、「こんな大損害を被ってしまいました~どうすればいいですか~?」と雪崩をうって相談にくれば、FP業界は儲かってウハウハなのかもしれません。

そんな邪推をされてまで、「勉強不要の投資デビュー」にこだわるのか。そうまでして丸腰個人投資家を増やしたいのか。それで良いのかFPよ。

そして、上記コラムでは(そろそろ飽きてきた)たとえ話として、子育てのたとえ話が出てきます。子どもの「好奇心の芽」を摘まないことが大事とのこと。

それは同感です。なんの異論もありません。ただし、子育ての世界であれば、です。前述のとおり、投資の市場は、安全性に最大限配慮された保育園や幼稚園でもなければ、安全な公園でもありません。「戦場」なのです。

投資における自身の主張を通そうとするあまり、事情が大きく異なる事象のたとえ話(スキー、恋愛、子育てなどのほんわか話)を投資に無理やり当てはめて、もっともらしい説明をするのは、後々、丸腰で投資デビューした読者に与える辛さや悪影響を考慮した場合、少々「おいた」が過ぎるのではないでしょうか。


私の意見はこうです


ここまで、山俊氏のコラムについて所見を述べてきましたが、ここで私の意見を述べたいと思います。

山俊氏の本を一冊読むなど最低限の勉強をしたうえで、投資を始めたほうがよいです。

山俊氏も「勉強したほうがいいのは当たり前」と言っているとおりです。勉強なしで投資を始めるのは反対です。

本一冊も読みきれない、もしくは読んでも何ひとつ理解できない人は、むしろ投資をしないほうが本人のためだと思います。

投資の鉄則のひとつに「自分が理解できないものには投資しない」というのがあります。勉強をしなければ知ることもないでしょうが、痛い目を見てきた先人たちの知恵であり、大きな失敗をしなためには大変有用な鉄則です。

世の中には、お金を前にすると、自分の銀行口座の預金額と、消費者金融(アコムやアイフルなど)の借入限度額の区別すらつかない人たちがたくさんいます。

「レバレッジなし」「はじめは少額で」という山俊氏が提唱する最低条件でさえも、それはしょせん、投資を知っている者同士の申し合わせ程度の意味しかありません。投資の勉強をしなければ、知るよしもないわけです。

なにせ相手は、株と蕪(野菜のカブ)の違いもよく理解していないはずの投資未経験者なのですから。投資における「レバレッジ」の意味なんかわかるわけがありません。

そもそも、お金の話をすることを生業としているFPが「勉強不要の投資デビュー」と主張していることに対して、個人投資家が「投資は勉強してから始めるべき」と一生懸命反論しなければならない時点で、なにかが決定的に間違っているのではないでしょうか。普通に考えて、役割が逆では。

なお、山崎俊輔氏の最新刊『読んだら必ず「もっと早く教えてくれよ」と叫ぶお金の増やし方』を読みましたが、投資を含むお金のこと全般にわたる考え方のエッセンスが詰まった良書でした。図解やイラスト満載でとてもわかりやすい、投資未経験者にもぴったりのマネー本でした。

なにせ、読んだら必ず「もっと早く教えてくれよ」と叫ぶというほどの良書なので、投資デビューよりも早く、本書の内容を教えてあげるのが親切というものです。

投資未経験者は、ぜひ本書を読んでから投資デビューするとよいと思います。おすすめ。


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※繰り返しになりますが、当ブログ記事で取り上げたFP山崎俊輔氏(山俊氏)は、一緒にお仕事をしたこともある優秀な人物であり、サッカーやアニメなど個人的趣味も合う仲の良い友人です。一種の「プロレス」だと思ってご笑覧ください。

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