「eMAXIS Slim」シリーズは「配当除く」インデックス連動なのに、なぜ投資するんですか?
水瀬ケンイチ

今月から、積み立て投資商品を「eMAXIS Slim」シリーズに変更したという記事を書いたところ、「配当除くインデックス連動なのになぜ投資するんですか?」というご質問を、ブログやツイッターで複数いただいています。
まとめて回答させていただきます。
たしかに、「eMAXIS Slim」シリーズは、国内株式インデックスのTOPIXにおいても、先進国株式インデックスのMSCIコクサイにおいても、「配当除く」インデックスの方に連動するインデックスファンドです。
今まで、「低コストインデックスファンド徹底比較」シリーズ記事で調査結果をまとめてきたように、「配当除く」インデックスに連動するインデックスファンドは、インデックスとの差異が大幅にプラスに出ます。
これは、原資産である企業の株式から配当が出てくるためであって、そのインデックスファンドの運用が優秀というわけでもなんでもありません。「配当除く」インデックスに連動するインデックスファンドは、インデックスとの差異が大幅にプラスに出るのは、当たり前のことなのです。運用の巧拙そのものが評価・比較できない分、ネガティブな要素です。
そして、インデックスファンドの運用会社が、いつ、「今後は目論見書どおり配当除くインデックスに連動させます」と言って配当分のリターンを堂々と下げて、開き直ってくるかは不明という懸念はどうしても残ります。
インデックスファンドはベンチマークのインデックスに連動するように運用するファンドですから、上ブレとはいえ、定常的にインデックスからブレている運用は異常といえます。
運用会社である三菱UFJ国際投信は、「eMAXIS Slim」シリーズの前の「eMAXIS」シリーズの新規設定(2009年)の時から、ブロガーミーティングを度々開催しては、「社内的には、配当込みインデックスに連動するように運用している」と社内事情を説明してきました。
私は「そうですか」と言いながら、前述のとおり、三菱UFJ国際投信が、いつ、「今後は目論見書どおり配当除くインデックスに連動させます」と言って配当分のリターンを堂々と下げて開き直ってくるかはわからないなと、その点では冷めた視線で見ていました。
しかし、ここ2018年になり、ほぼ10年間運用をウォッチし続けてきて、実際に配当込みインデックスに連動し続けてきた(配当除くインデックスからは上ブレしてきた)ことを確認しています。
<ご参考>
低コストインデックスファンド徹底比較 - 梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)
さらに、金融庁の肝いりで2018年から始まった「つみたてNISA」の主力商品のひとつとして採用され、金融庁からも顧客を軽視していないか運用状況を厳しく監視されている状況にあることを、先日の金融庁主催「つみたてNISA Meetup in 東京」でも確認しています。
<ご参考>
金融庁主催の「つみたてNISA Meetup in 東京」に参加。インデックスファンド運用会社がずらり! - 梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)
さらにさらに、業界最低水準の運用コスト(信託報酬)を将来にわたって目指し続けると公に表明しており、今までのところ、実際にライバルファンドの運用コストの値下げにはピッタリと追随値下げで対抗してきたことを確認しています。
さらにさらにさらに、初回決算を経た第1期の運用報告書の内容を見て、運用状況が特に悪くないことも確認できました。
たしかに、ある日突然、運用会社が「今後は目論見書どおり配当除くインデックスに連動させます」と言って配当分のリターンを堂々と下げて、開き直ってくるリスクはゼロではありません。
一般的に、リスクの対処法としては、「回避」「転嫁」「軽減」「受容」の4つの戦略があると言われています。今回のケースでは、リスクを「受容」してもいいかなと判断したということになります。
これは自分の願望も入りますが、自分自身、長年にわたり運用会社に対して何度も何度も、「配当込みインデックスを採用してほしい」と要望し続けてきており、ぼちぼち対応してくれるかもしれないという淡い期待(?)も抱いています。
ちなみに、ライバルファンドの「購入・換金手数料なし」シリーズ(ニッセイアセットマネジメント運用)は、既に配当込みインデックスがベンチマークです。会社として業界最低水準の運用コストを目指すことを公には表明していませんが、過去数回にわたり運用コストを引き下げてきた実績もあります。よくよく見ると、運用状況は時おり荒れることもありますが、潔くベンチマークに連動しようと努力する様子が伺えます。
「eMAXIS Slim」シリーズも、運用コストだけでなく、ベンチマークも潔くいきましょうや!
そういった期待も込めて、積み立て投資商品を「eMAXIS Slim」シリーズに変更しました。具体的にはこれら。
・eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)
・eMAXIS Slim 先進国株式インデックス
・eMAXIS Slim 新興国株式インデックス
運用コスト競争もここまでくると、「頂上決戦」みたいなもので、「購入・換金手数料なし」シリーズや「たわらノーロード」シリーズを選んでも、将来の実績はそう大きくは変わらないと思いますが、ちょこっとだけ冒険してみました。
以上が、私が積み立て投資商品を「eMAXIS Slim」シリーズに変更した理由のすべてです。今後どうなるか、実践しながらブログでも報告していきたいと思います。
なお、直近まで積み立ててきた「三井住友・DCつみたてNISA・日本株インデックスファンド」「たわらノーロード先進国株式」「たわらノーロード新興国株式」も既存投資分は売却するわけではなく保有していきます。
※言わずもがなですが、投資判断は自己責任でお願いします。
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