戦後の1年定期金利とインフレ率の長期推移。大半の時期で1年定期金利がインフレ率に勝ってきた!?

水瀬ケンイチ

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戦後の1年定期金利とインフレ率の長期推移を比べるという、珍しいデータがありましたので、取り上げさせていただきます。



預金復活なお遠く 運用金利で見る歴史(平山賢一)|マネー研究所|NIKKEI STYLE 預金復活なお遠く 運用金利で見る歴史(平山賢一)|マネー研究所|NIKKEI STYLE


東京海上アセットマネジメント平山賢一氏が、なんと国会図書館で調べてられたという力作データです。

これによると、1950年から2017年までの68年間を確認すると、1950年代も1960年代も1年定期預金金利は、インフレ率を上回っていたため、多くの預金者は高い金利を得ることが可能だったとのこと。

また、1970年台のオイルショックで、一時的にインフレ率が急伸した場面はあったものの、1980年代後半から再びインフレ率よりも1年定期預金金利の方が高くなり、2000年代初めまで続いたという推移が明らかにされています。

大半の時期で、インフレ率を差し引いても1年定期預金の実質リターンはプラスなのだから、購買力も大半の時期で向上していたということになります。


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(出所:預金復活なお遠く 運用金利で見る歴史(平山賢一)|マネー研究所|NIKKEI STYLE


これなら、1950年から生きてきた現在の高齢者が、「投資などせんでも、黙々と預貯金だけで財産形成すればええわい!」と言いたくなるのもわからないでもありません。

日本の預貯金信仰には、歴史的に戦後大半の時期で預金金利がインフレに負けていなかったという事実的根拠があったということだと思います。

よく、欧米から考え方を輸入した投資の教科的書籍で、「なぜ株式投資を始める必要があるのか」という目的について、「将来のインフレ対策」「将来の購買力の確保」という説明がなされます。

これは基本的にインフレ傾向にある海外では、聞いた人が首を縦にブンブン振るくらい説得力があるものの、預貯金だけで資産形成できてきた大半の日本人にとっては、おそらくピンと来ないでしょう。なぜなら、インフレで預貯金が目減りするとか、購買力が低下してきたという明確な経験を、あまりしてこなかったからです。それが、上記記事のデータからわかります。

しかしながら、上記記事では、直近の2013年から2017年までは5年連続で、インフレ率が定期預金金利を上回っている傾向が続いており、平たく言うと、預貯金がインフレで目減りしていた時期になっていると指摘しています。政府や日銀も、この傾向を歓迎しているように、私個人は感じています。

だからこそ、国民にインフレ率に負けてしまう預貯金ではなく、「NISA」「つみたてNISA」という少額投資非課税制度を導入してまで、相対的に高いリターンが期待できる株式や債券に投資する投資信託の保有を強力にプッシュしている面が多々ありそうです。

※細かい話をすると、「NISA」は証券税制の10%軽減税率の特別措置廃止とのバーターで誕生し、「つみたてNISA」の方は、最初から投資の促進を目的に誕生したといった違いはあるように思えますが。

たとえば、「NISA」「つみたてNISA」の少額投資非課税制度について、両親や比較的高齢の友人に話をしても、反応が薄い、あるいは「株なんてギャンブルで嫌」といったけんもほろろの対応をされることがよくあります。

「もう、金融リテラシーが低いんだから」と思ってしまいがちですが、実際には、過去何十年も1年預金金利が、インフレ率に勝っていた時期が長かったのですから、自分の成功体験等によって物事を短時間で判断してしまう(ヒューリスティック)ケースがあることは、ある意味仕方のないことだと考えられます。

もし、私が今の高齢者と同じ立場だったら、おそらく、自分の経験から「資産形成は預貯金が無難」と言っていたかもしれません。

いずれにしても、教科書によく書いてある投資をすべき理由、「将来のインフレ対策」「将来の購買力の確保」というのは、少なくとも日本ではここ70年近く、あまりあてはまっていなかったという事実は知っておいて損はないでしょう。

一方、直近は状況が大きく変化してきています。長年続いたデフレ脱却を掲げ、政府・日銀がインフレ率を2%まで上げると目標設定して、あの手この手を繰り出し躍起になっている状況です。

今までの成功体験(預貯金で資産形成)は、曲がり角に立たされていると私には見えます。そして、今後も投資を継続していこうという思いを新たにしました。そう思わせてくれる具体的な長期データを提示してくれた、平山賢一氏に感謝したいです。

私も一度でいいから国会図書館に行って、様々な昔のデータを見てみたいなと思いました😊

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Posted by水瀬ケンイチ