「無料」証券投資サービスのカラクリがわかるレポート

水瀬ケンイチ

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米国ではフィデリティが信託報酬ゼロのETFを上場したり、証券会社が株やETFの売買手数料を無料にしたりと、「無料」証券投資サービスが盛り上がってきています。

日本においても、楽天証券が東証上場の「iシェアーズ」「MAXIS」シリーズETFの売買手数料を無料化、マネックス証券が「ウィズダムツリー」シリーズETFの売買手数料を無料化、カブドットコム証券が「MAXIS」シリーズETF等の売買手数料を無料化するなど、米国の動きに追随しているように見えます。

いったいどのようなカラクリで、無料証券投資サービスは運営できているのか。

気になるところですが、野村総研のWEBサイトに、米国における無料証券投資サービスの採算化の仕組みを解説したレポートが掲載されていました。



野村総合研究所 金融ITフォーカス 2018年11月号
「無料」証券投資サービスを巡る虚実

詳しくは、上記レポートをご覧いただきたいのですが、カラクリ部分をざっとまとめると以下のとおりでした。

(a)銀行グループによる株式売買手数料「無料」化

①預金で調達した資金を短期金融市場で運用した利ザヤ

(b)売買手数料「無料」のディスカウント証券

①信用取引の金利
②証券口座の現金を短期金融市場で運用した利ザヤ
③他社投信提供時に残高連動で受領する手数料
④注文をマーケットメーカーなどの執行業者に回送することの対価

(c)ラップ手数料「無料」のロボアドバイザー

①ラップのなかで運用する商品に自社グループのETFを組み入れ
②キャッシュポジションを一定程度組入れ、短期金融市場で運用した利ザヤ

(d)運用報酬無料の投信

①他の有料サービスに誘導

米国と日本では、金利水準や、金融機関同士の商慣行が違うため、上記のカラクリがそのまま日本のケースに当てはまるわけではなさそうですが、非常に参考になります。

楽天証券やマネックス証券のETF売買手数料無料サービスは、おそらく、(b)の①信用取引の金利、③他社投信提供時に残高連動で受領する手数料、(d)の①他の有料サービスに誘導、あたりで儲けるカラクリになっているのではないかと推測します。

もうひとつ興味深いのは、レポートで「これらの無料サービスの多くが2010年以前からほぼ同じ仕組みで提供されてきた」「これらサービスを無料で継続的に提供しながら他の方法で収益を十分以上に獲得し採算化する構造も基本的に同じである」と説明されている点です。

米国では、昔から無料サービスを採算化する構造があり、それは今も変わっていないということです。べつに証券会社が奉仕の心で出血大サービスをやっているわけではないらしい。

一方、日本では、前述のとおり金利水準や、金融機関同士の商慣行が違うため、米国のように採算化する構造が十分にあるかどうかは疑問です。

特に、日銀のゼロ金利政策が長らく続いており、短期金融商品で運用する代表的商品のMMFがすべて繰上償還され、絶滅してしまうほどの運用難状態です。上記の(a)(b)(c)のいずれにも出てくる、集めた資金を短期金融市場で運用して利ザヤを稼ぐという基本的手段がとれないのが痛い。

また、注文をマーケットメーカーなどの執行業者に回送することの対価という商慣行は、証券会社の最良執行義務と若干相反するし、日本では聞いたことがりません(私が知らないだけかもしれませんが)。

となると。

日本の無料証券投資サービスは、継続的に提供されるとは限らないサービスだと覚悟だけはしておいた方がいいかもしれません。

もちろん、投資家にとってうれしいサービスなのでできるだけ継続してほしいし、証券会社さんにはがんばっていただきたいです。なにとぞ、なにとぞ。

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Posted by水瀬ケンイチ