生保の節税目的の経営者保険、外堀から埋められて販売停止へ

水瀬ケンイチ

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節税目的の加入が増えている生保の「経営者保険」が、国税庁により外堀から埋められて、販売停止に追い込まれているようです。



生保、「節税保険」販売停止 国税が課税見直し方針

日本生命保険など生命保険各社は13日、節税目的の加入が増えている経営者保険の販売を一時取りやめることを決めた。国税庁が同保険の税務上の取り扱いを見直し、支払った保険料を損金算入できる範囲に制限をかける検討を始めるため。


今回、槍玉にあげられているのが、節税目的の加入が増えている経営者保険。保険料を全額会社の損金に算入でき、途中解約すると保険料の大部分が戻ってくる「どこが保険なの?」という設計で、実態は節税目的の利用が多いとのこと。

もともと、保険とは、節税しながら小金を増やすためのものではありません。保険とはなにか、百科事典をひも解いてみましょう。

偶然的事故の発生にそなえて最小の費用を事前に負担することによって,事故発生の際の経済的保障を達成するための経済的社会的制度。
(ブリタニカ国際大百科事典より)

火災・死亡など偶然に発生する事故によって生じる経済的不安に備えて、多数の者が掛け金を出し合い、それを資金として事故に遭遇した者に一定金額を給付する制度。
(デジタル大辞泉より)

リスクにさらされた人が,保険団体を形成して,自己の所定のリスクを,大数の法則を応用して計算された保険料の形に変え,これに移転しプールすることによって,偶然な事故発生の場合に損害・損失が保険団体から補償される経済制度である。
(世界大百科事典より)

「保険(ほけん)は、偶然に発生する事故(保険事故)によって生じる財産上の損失に備えて、多数の者が金銭(保険料)を出し合い、その資金によって事故が発生した者に金銭(保険金)を給付するための制度」
(Wikipediaより)


どこにも節税や貯蓄の話など出てきません。

保険のスキームを利用した節税目的の貯蓄性商品は、保険本来の目的を大きくゆがめています。もし、損金算入できなければ誰も見向きもしないような保険であるなら、それはもう保険ではないと思います。

上場企業の財務諸表や、投資信託の運用報告書など、投資家がリスクを取って運用する投資対象は、極めて厳格な情報開示が求められており、(完全とは言えないまでも)実際に開示が行われています。

それに対して、保険商品はコスト構造が開示されていません。10年前(2008年12月)にライフネット生命がコスト構造の一部を開示したことは、世間から驚きと賞賛を集めましたが、それ以降、後に続く保険会社はありません。残るは保険会社の怨嗟の声ばかり……。

私たち個人投資家としては、このようなコスト構造が開示されていない金融商品にはできるだけ「関わらない」のが合理的であるとともに、保険の趣旨を著しく逸脱したような商品に対する税制優遇措置は、今後縮小されていくことはやむなしだと私は考えます。

もちろん、世の中に保険は必要なものだと思いますので、必要な人にとっての保険として堂々と存続してほしいです。

一方で、貯蓄なら預貯金、投資なら株式・債券・投信など、個人の目的に対して目的どおりの手段(金融商品)を活用するのがシンプルかつ低コストで良いと思います。

保険業界の手数料の「闇」については、以下のブログ記事でも取り上げていますので、ご興味があればご覧ください。

週刊東洋経済2018年11月24日号「保険の罠」に恐ろしい業界圧力が垣間見える

いま発売中の週刊東洋経済2018年11月24日号を、とても興味深く読みました。特集は、「保険の罠 いらない商品すべて教えます」です。保険相談室後田亨氏や生活設計塾クルー内藤真弓氏をはじめとした識者が、生命保険・医療保険・がん保険などの保険商品の必要性について、消費者目線で容赦なく斬っていました。...

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Posted by水瀬ケンイチ