企業型確定拠出年金のデフォルト商品を投信にする企業が増え始めました。でも理想は自分で選ぶこと!

水瀬ケンイチ

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投資信託によるリスク運用を初期設定(デフォルト)とする企業の確定拠出年金(DC)が増え始めたとの日本経済新聞の報道があったので、取り上げてみます。



◆デフォルト商品のリスク商品化は、もはや世界的な流れ


確定拠出年金、広がる「投信運用が基本」 リスク許容

投資信託によるリスク運用を初期設定(デフォルト)とする企業の確定拠出年金(DC)が増え始めた。DCの窓口業務などを担う運営管理機関大手10社によると、2018年度末で1年前の2.7倍になった。預金な


上記記事では、「預金など元本確保型の商品ばかりだと運用成績はかえって伸び悩む可能性がある。老後の不安を巡る「2000万円問題」も話題になるなか、今後はDCによる個人の資産形成の後押しを期待できそう」と好意的に捉えています。

金融先進国の米国の先例を見ても、確定拠出年金401kの普及によって、個人のミューチャル・ファンド(≒米国の投信)保有が浸透してきました。

セイラー教授などの行動経済学の見地から、確定拠出年金の加入者の自由意思と自己責任に全ての判断を委ねるという仕組みが最善でないことが認められてきています。

確定拠出年金をはじめる際、放っておいたら、商品を自分で選べない加入者は自動的にみーんなデフォルト商品である元本確保型商品になってしまい、インフレによって最終的に年金の価値が不十分になってしまう例が出てきました。そこで、デフォルト商品は元本確保型商品ではなく、年金運用に適したリスク商品を設定する国が増えてきました。


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第13回社会保障審議会企業年金部会(平成26年12月15日) 資料1 「確定拠出年金における運用について」より)
 

私も個人投資家として、投信やETFによる資産運用を行なっており、ブログまで書いている身です。DCが個人の資産形成の後押しになるのも間違いないと思います。

DCのデフォルト商品を、株や債券に投資する投信等のリスク商品にすることは、結果的に、最大公約数的には良い結果になるのではないかと私も「推測」します。

私が尊敬していて、このブログでたびたび取り上げさせていただく方々でも、たとえば、日本経済新聞の田村正之氏やファイナンシャル・プランナーの山崎俊輔氏などが、デフォルト商品のリスク商品化に対して賛成意見を著書等で表明しています。

以前言われた「全員にゆっくり勉強してもらっていてはもう間に合わない」という田村氏の言葉は本質を突いていると思います。


◆自ら選んでないのに、年金が増える人と減る人が分かれる事態に


ただ、会社では毎年社員が入社してきます。つまり、DCに加入する時期、取り崩す時期が人により異なります。

最大公約数的には資産形成に成功する社員が大半になるとしても、どうしても、うまい具合に資産が増えた状態で取り崩しに入れる人と、資産が減った状態のまま取り崩す人が分かれる可能性は否定できません。

何十年もDCに拠出し続けてきたのに損益がマイナス状態で取り崩しが始まった場合に、運用商品を自分で選んでいない社員が会社に対して「DCでそんなものに投資した覚えはない!」「会社の制度が悪い!!」と騒ぎだすケースが容易に想像できます。

なにせ、世の中には、投資信託や外貨建て保険など、自分で意思決定して購入した投資家でさえ、損失を被ると「騙された!」とクレームをつけて騒ぎ出す人が一定数いるのですから。自分で選んでもいないもので損失を被ったら、そりゃあ騒ぎだす人も出てくるでしょう。

会社の福利厚生担当が気の毒になるケースですが、デフォルト設定を投信などリスク資産にすれば、避けられない事態です。

冒頭の日本経済新聞の記事タイトルにある「リスク許容」というのは、「株や債券の価格変動リスクを社員が許容する」という意味ではなく、「社員からクレームが入って揉めるリスクを会社が許容する」という意味なのでしょう。

本当にいいのかそれで。


◆困ったら基本に立ち返ろう


使い古された言葉ですが、投資は自己責任です。リターンが自分のものになる代わりに、リスクも引き受けるのが大原則です。それは企業の確定拠出年金においても変わらないはず。

理想論かもしれませんが、やはり、DC加入者がリスクを理解した上で将来の企業年金の価値保全、あるいは将来の豊かな生活期待して、投信などのリスク商品を自ら選択するというのがベターだと思います。

そのためには、会社側が実施するDCの導入研修、継続研修の充実が求められます。わかりやすいテキスト、わかりやすい説明、わかりやすい講師などが必要だと思います。

まずは、運用商品を自ら選べる社員を増やす(=自ら選べない社員を減らす)のです。

規制でがんじがらめで、講師は言いたいことも言えず、おすすめ商品の提案もできない(言うなら全商品を公平に言わなければならないとか)、有益な追加情報も教えられないような状況も変える必要があるでしょう。


◆会社なんかに頼らずとも学べる


さらに良いのは、会社のDCの導入研修なんかに頼らなくても、会社とは無関係に個人が自分で投資のことを学び、実践することです。

数年前、私の勤務先がDCを採用した時の導入研修資料は、長期・分散・低コストの国際分散投資を説明しており、内容はほぼインデックス投資(国際分散投資したインデックスファンドの積み立て投資)のテキストで、何の違和感もなくすんなり理解できましたから。DCとインデックス投資の知識は親和性が高いのです。

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昔は個人向けのまともな投資情報は限られていましたが、今やインデックス投資(国際分散投資したインデックスファンドの積み立て投資)に関する書籍やWEBサイト、ブログ等の情報は、世の中にあふれるほど出てきています。

やる、やらないは別として、若い方々がインデックス投資(国際分散投資したインデックスファンドの積み立て投資)のことを学んでおくことは、将来会社に入社してからDCの商品選択で迷わなくて済むというメリットもありそうです。


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DCと親和性が高いからインデックス投資に関する参考情報を提示しましたが、投資の基礎が学べるのであれば、べつにアクティブ投資の情報でもよいと思います。(さすがにFXや仮想通貨は、DCのメニューにはありませんが…)

でも、少なくとも、自分の確定拠出年金(DC)の運用商品は、自分の意志で選びたいものです。そして、願わくば将来、運用がうまくいき豊かな生活を送れますように。

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Posted by水瀬ケンイチ