マスコミの年金叩き、バカな鶏が先かバカな卵が先か。

水瀬ケンイチ

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5年に一度実施される公的年金の財政検証結果が8月27日に発表されました。予想どおり、今回もマスコミの報道はネガティブ一色でした。

年金、現状水準には68歳就労 財政検証 制度改革が急務  :日本経済新聞
老後不安、年金も自助頼み 「100年持続可能」なのか:朝日新聞デジタル
年金財政検証:受給額は? 続く老後不安 - 毎日新聞
東京新聞:年金 若年層ほど低水準 受給後年々目減り 40%台も:政治(TOKYO Web)
年金、将来の給付水準低下も TBS NEWS
財政検証を公表 年金 経済成長でも目減り:ワールドビジネスサテライト:テレビ東京
「100年安心」の制度が24年後には…打開策にも??

年金については、制度も運用も、マスコミがネガティブな方向にばかり張り切る悪癖は、もはや「病気」レベルだと思います。改善する気もないようで、むしろ各社とも、「どれだけ不安をあおるネガティブタイトルを付けられるか」で競い合っている様相です。

だから、基本的に真に受けることはせずに、できるだけ一次情報(元ネタ)にあたるのがよいと思います。



厚生労働省のWEBサイトにある何十ファイル、何百ページにわたる元ネタのすべてにあたるのは難しくても、「2019(令和元)年財政検証結果のポイント」はまさにポイントだけ13ページにまとめられていて、お役所の資料にしては、まあまあわかりやすかったです。

将来の公的年金の財政見通し(財政検証)

将来の公的年金の財政見通し(財政検証)について紹介しています。



個人的な印象をひとことでいえば、思ったより良くも悪くもなっておらず、5年前とほぼ同じ。

5年前から相変わらず、わたし程度のしがないサラリーマンが定年まで勤め上げても、見込める年金は少ない。ましてや、少しでも早くリタイアする野望を持つ者としては、自分の収入を増やし、余剰資金を資産運用で増やす必要があるということを再確認しました。

身が引き締まる思いです。もう少し頑張ろうっと。

さて、マスコミの必要以上の年金叩きの悪癖はいったい何なのだろう? バカなの??? と思う皆さま、年金のプロ、大江英樹氏が良コラムを書かれているので紹介します。

年金に実態以上の過剰な不安を抱く日本人が多い理由

実態以上にネガティブなイメージで見られがちな、日本の公的年金制度。5年に一度実施される「財政検証」の結果がこのほど発表されたので、実際どうなのか考えてみよう。


大江氏は、マスコミが年金に対してことあるごとにネガティブな報道をする理由を、行動経済学における認知バイアス、中でも「代表性ヒューリスティック」と「確証バイアス」にあると分析しています。

例としてあげられている「グリーンピア問題」は2000億円の損でマスコミは大騒ぎをしたわけですが、当時、年金積立金は132兆4000億円あり、このうちの2000億円の損。もちろん小さくない金額で「ちゃんとしろよ!」と思うのですが、制度全体に与える影響は約0.15%に過ぎず相対的には小さい。

「132万円あまりの貯金を持っている人がパチンコで2000円をすってしまったというのと同じ」と大江氏は喝破しています。

それをあたかも年金制度「全体」が破綻するかのような大騒ぎが行われるわけです。それを見た視聴者・読者のうち、特にひねくれた一部の人たちが、「もう公的年金は信用できないので払わん!」といって、コスト割高かつ永続性に劣る民間の個人年金だけに入るという本末転倒な行動をしてしまった。

ある特定の事象が全体にわたって起こるように勘違いすることを「代表性ヒューリスティック」と言うそうですが、まさにこの最たる事例が引き起こす悲劇だと思います。

また、自分の考えに合う情報のみを受け入れたくなる心理のことを「確証バイアス」といいます。

「多くのマスコミはそうした一般市民の印象に合うような報道をしようとする。つまり「年金はダメだ」「年金は信用できない」という印象をさらに増幅するような報道になりがち」というのが大江氏の分析です。

つまり、マスコミが年金叩きに張り切るのは、マスコミが繰り返し報道してきた「年金はダメだ」「年金は信用できない」というイメージを、何度も確認できる情報を読者・視聴者も欲しているからだという面があるということだと思います。

まさに、バカな鶏が先かバカな卵が先か。

くだらないマスコミのイメージ戦略に右往左往するのではなく、事実を知りたい。

そう思った方々は、まずは冒頭でご紹介した、厚生労働省のWEBサイトにある「2019(令和元)年財政検証結果のポイント」を見ることからはじめましょう。

そして、日本年金機構の「ねんきんネット」で、自分が将来もらえる年金はどのくらいの水準か見ます。

今後の経済動向等によって、そこから多少増えたり減ったりするかもしれませんが、将来もらえる年金の金額の「レベル感」を確認して、相応の低コストライフを模索するか、将来実現したい暮らしと比べて足らないと考える生活費は、今から自分で備えればよい。

最後に、尊敬する岡本和久氏の言葉をご紹介して、このブログ記事を終えたいと思います。

今の自分が将来の自分を支える


こんな記事も書いています。

「年金2000万円不足問題」のばかばかしさ

金融庁の金融審議会がまとめた報告書「高齢社会における資産形成・管理」がきっかけとなって、連日とりざたされている「年金2000万円不足問題」。老後の生活費と年金の差分だけにクローズアップして「政府が年金の限界を認めた」と年金叩きに大騒ぎのマスコミ、それに乗じて「裏切られた」とヒステリックに煽り立てる無責任コメンテーターたち、さらには、ここぞとばかりに年金を「政争の具」にして国会の貴重な時間をムダ使いする...

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Posted by水瀬ケンイチ