米国株式一本が最強!という主張の謎

水瀬ケンイチ

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インデックス投資といっても、S&P500(米国株式インデックス)のみへの投資をすすめる人が、ここ2~3年で急増している印象です。



米国株式に限定した投資が容易になってきたのはついここ数年のことです。それまでは、米国株式に低コストで投資できる手段(インデックスファンドやETF)が限られていました。また、米国を含む外国株式の特定口座対応も一般的ではありませんでした。

最近は、米国株式に低コストで投資するための環境が整備されてきてとても良いことだと私も思っています。

ここ数年(2013年~2016年頃)の米国株式インデックスのリターンは、米国を除く先進国株式や新興国株式のリターンを大きく上回っています。特に、最近の新興国株式の不調もあって、米国株式だけに投資してきた投資家が報われた局面が続いていたと思います。

ただし、それは今後も永続するものなのでしょうか。

投資のバイブルと言われているような米国の古典的名著が、米国株だけに投資することをすすめているのか、米国以外も含めた国際分散投資をすすめているのかは、事実として知っておいた方がよいと思います。

資産配分に関するインデックス投資の古典的名著3冊の結論を、手短かに書いておきます。


ウォール街のランダム・ウォーカー<原著第12版> 株式投資の不滅の真理」(バートン・マルキール著)
米国株だけでなく国際分散投資を

敗者のゲーム」(チャールズ・エリス著)
米国株だけでなく国際分散投資を

インデックス・ファンドの時代」「インデックス投資は勝者のゲーム」(ジョン・C・ボーグル著)
米国株だけでなく国際分散投資を

<追記> 2019/09/11
ボーグル氏の著書は主に米国株式への投資をすすめていて、国際分散投資はコラムでの紹介レベルに過ぎないというご意見をいただきました。事実として、ボーグル氏の著作は米国株投資と国際分散投資の「両論併記」であると加筆させていただきます。


つまり、米国人著者によって米国人向けに書かれた上記の古典的名著では、米国株式だけに特化して投資するようには主張していません。米国を中心にしつつ、米国以外の国も含めた国際分散投資をすすめています。

それが事実です。

古典的名著では国際分散投資をすすめているのに、そこに書かれていることと異なることを堂々とすすめる日本の個人投資家、ブロガーが幅を利かせているのが私は不思議です。

彼らは古典的名著を読んでいないのでしょうか。それとも、古典的名著など時代遅れのカタブツで信用に値しないと考えているのでしょうか。それとも、長期投資家のフリをしていながら、数年レベルの短期的パフォーマンスで資産配分を決めるような、短期的視野で投資をしているのでしょうか。

話は少し変わりますが、「インデックス投資の出口戦略がない」という言説もよく聞きます。しかし、古典的名著「ウォール街のランダム・ウォーカー」にはそのものズバリの章がきちんとあり、資産と取り崩し方の目安が具体的数字とともに書かれています。

それなのに、長年インデックス投資をやっていてブログを書いているようなベテラン投資家でも、「出口戦略の情報がない、出口戦略の情報がない」と言う人が後をたたないのは、本当は、古典的名著を読んでないのではないかと疑ってしまいます。

あるいは、読んだものの、自分に都合が良いように歪曲して記憶しているのか。疑問は尽きません。

話を米国株式に戻します。

米国人著者によって米国人向けに書かれた上記の古典的名著で国際分散投資がよいと書かれているにもかかわらず、それを覆して、日本人は米国株式だけに投資した方がよいと断ずる根拠は何なのでしょうか。

為替レート? 購買力平価?

直近数年の米国株式のパフォーマンスが、全世界株式のパフォーマンスよりよかったという程度の理由では、近視眼的であり、今後永続する理屈としては心許なさ過ぎます。

そもそも2008年リーマン・ショックの震源地は米国でした。米国の金融機関と格付け機関が、信用力の低いサブプライム・ローンとその証券化商品にAAAを付けて乱売するようなバカをやらかしたせいで、世界中が信用不安で覆われ、100年に一度と言われる未曾有の株式大暴落に見舞われました。

過去には、日本株式がジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた時代もありましたし、新興国のBRICsやVISTAが世界を席巻すると言われた時代もありました。個人的な経験でも、2008年リーマン・ショックのあとの数年は、新興国株式の上昇にずいぶん助けられたものです。ついでにいえば、「21世紀は債券の時代」とまことしやかに言われていた時代もありました。

今後どこの国の何に投資すれば儲かるか、もっともらしいことはたくさん言われていますが、結果的にふり返れば、私がインデックス投資を実践してきたたかだかこの15年間ですら、当時は次にどこの国の何が来るかは誰にもわからなかった。それが真実だろうと私は感じています。

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Commodities: The Top Asset Class of 2018 So Farより)

毎年、各アセットクラスのリターンを高い順に並べたこのグラフを見れば、毎年、S&P500(米国株式)が上位にいる年もあれば、MSCI EAFE(米国以外の先進国)が上位にいることもあれば、MSCI EM(新興国株式)が上位にいる年もあります。

そして、その順位は毎年目まぐるしく入れ替わっています。だからこそこの上位グラフが複雑に絡み合うグラフは、絡まったスパゲティのように見えることから、スパゲティ・チャートと呼ばれているのです。

各資産クラスの期待リターンの算出方法は諸説ありますが、少なくとも、過去数年のリターン実績の単純平均ではありません。

「リスクと期待リターンは過去のデータから計算できる」の嘘 (その1)

インデックス投資に詳しいかたでも誤解している場合があることのひとつに、「リスクと期待リターンは過去のデータから計算できる」というものがあります。何を隠そう、自分も昔はそう思っていました。だって、自分が読んできた投資本の中に、そう書いてあるものが結構あったのですから。例えば、橘玲氏の名著「臆病者のための株入門」にも、「過去の株価データさえあれば、個別銘柄のリスクとリターンは容易に計算できる」とさらり...


最近人気のブロガーが米国株式一本が最強!と言っているからとか、同じようなことがSNSでもよく流れてくるからといった、ふわっとした理由で資産配分を決めることは、できれば避けたいものです。

国内外の研究により、資産配分で投資成果(ポートフォリオの時系列変動)の8~9割が説明できるという学術的調査結果が出ています。資産配分はそれだけ重要な問題なのです。

私は、古典的名著の教えと、個人的に無駄に長い経験の両面から、国際分散投資が良いと考えて、実際に実践しています。

今後、リーマン・ショック級の大暴落がいつきてもおかしくないと言われています。いざ大暴落に直面して資産が毀損しつつある時に、ふわっとした理由で決めた資産配分のポートフォリオで、自分が投資を継続できるかどうか。

資産配分は、自分なりに腹落ちさせておく必要があると私は思います。


P.S
世界の株式時価総額で国際分散投資すると、約半分は米国株式に投資することになります。私も米国株式に投資しています。米国株式を否定しているわけではありません。本記事は、米国株式一本が最強!という限定的な主張は何が根拠なのか?という疑問について書いたものです。あらかじめご了承ください。
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Posted by水瀬ケンイチ