批判されている毎日新聞の記事「身近になったコツコツ投資『低リスク』は思い込み」は正しい!

水瀬ケンイチ

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ヤフーニュースに、毎日新聞を元記事とする「身近になったコツコツ投資『低リスク』は思い込み」という記事が掲載されています。

身近になったコツコツ投資「低リスク」は思い込み(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

若い世代を中心に「コツコツ投資」に取り組む動きが出てきた。株式などの市場平均並みの収益を目指す「インデックス投資信託」を長期で積み立てる手法。だが、この流れが定着するかどうかは、今後の焦点になってく - Yahoo!ニュース(毎日新聞)


詳しくは上記記事をご覧いただきたいのですが、インデックスファンドを長期で積み立てる手法(=うちのブログでインデックス投資と呼んでいる手法)は、「低リスク」でも「安全な商品」でもない、というのがこの記事の趣旨です。

記事の主張は、一見、インデックス投資に否定的な意見にみえます。



◆インデックス投資は低リスクなのか高リスクなのか

ヤフーの記事に付いている批判コメントをみると、「この毎日新聞の記事には悪意を感じる」「この記事書いてる奴は、NISA口座も作ってない ノーポジションの空想投資家だろう」と手厳しい。

インデックス投資について、「リスクが低いというのは個別銘柄の株式投資とか小型株投信などと比較してのことだろう」という、投資手法全体から見たらハイリスクではなく、ことさらコツコツ投資、インデックス投資がハイリスクであるかのように主張するのは不適切だという意見だと認識しました。

一定の納得感はあります。

ただ、私は上記の毎日新聞の記事は間違っていないと思います。

記事では、リスクについて、日常生活では「危険なこと」を指すが、投資における「リスク」の意味は異なり、リターンの変動のブレ幅を指すことを正しく説明しています。

その上で、誤解されやすいとして、2024年予定の一般NISA制度改定について、メディアが2階建ての1階部分(つみたてNISAの対象商品と同様)を「低リスク運用」と報道したことを金融庁から「誤報」と断じられた事例まで紹介しています。

(ご参考)
2019/12/15 大和総研の新NISA(案)の表から金融庁の意図がちょっと見えてきた? - 梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)

そして、結論部分を見ると、

コツコツ投資は身近になってきたが「国が勧めるから」「みんなが始めたから」では長続きしにくい。取り組むなら「長期・積み立て・分散」の効果を理解し、最悪時にどれぐらいの損失なら許容できるかを想定するなど、自分なりのリスクとの向き合い方を考える必要がある。

とあります。

つまり、インデックス投資を否定しているのではなく、インデックス投資をするなら「リスクとの向き合い方を考える必要がある」というのが記事の最終結論です。

これは、私がこのブログやSNSや著書でも繰り返し主張している、「投資は自分のリスク許容度の範囲内で行うこと」という主張とまったく同じです。

リスク許容度とは、1年で何%まで(または何円まで)の損失に耐えられるかという度合いです。これは投資家本人の年齢、収入、家族構成、性格などが影響するもので、人によって異なります。

だから、誰かや何かの事例を参考にすることはあっても、最終的には自分で決めるしかない性質のものです。


◆インデックス投資=「低リスク」にも「中リスク」にも「高リスク」にもなる

インデックス投資でも、インデックスファンドの割合が、「株式:債券=100:0」のポートフォリオはハイリスクであり、「株式:債券=50:50」はミドルリスク・ミドルリターンであり、「株式:債券=0:100」はローリスク・ローリターンであるといった具合に、資産配分によってリスク水準は変わります。

別の言い方をすれば、リスク水準は投資家が自分でコントロールできる、いやコントロールすべき事項です。

つまり、

インデックス投資=「低リスク」

という認識は、やはり誤りであり、

インデックス投資=「低リスク」にも「中リスク」にも「高リスク」にもなる

というのが正しい認識だと私は思います。

批判コメントのなかにあった、「個別銘柄の株式投資とか小型株投信などと比較して低リスク」というのも、標準的なリスク水準の基準をどこに置くかで、比較対象が低リスクなのか高リスクなのかは変わってしまいます。

悪意の有無にかかわらず、読者(ないし筆者)の基準がそろわない中でのリスク評価は、ただの感覚論といわれても仕方がない不毛なものになりがちです。


◆どんな投資対象、投資商品であっても最終的には資産配分でリスクは決まる

インデックスファンド、個別株、ブルベア投信……なんであっても、それらの投資対象・投資商品を、最終的にぜーんぶまとめて合算したあと、どのような資産配分になるかで、ポートフォリオのリスク水準は決まります。

資産配分次第で、低リスクにも高リスクにもなりえます。

だから、投資家は、そのリスク水準の値動きに耐えられるかどうかという判断を自分でする1ステップがどうしても必要です。

それはまさに、毎日新聞の記事でいうところの「自分なりのリスクとの向き合い方を考える必要がある」こととまったく同じです。


◆では、どれくらいの値動きなのか。比率と金額の「数字」で見るべし

先ほど、基準がそろわない中でのリスク評価はただの感覚論と、少々手厳しいことを書きました。だから、具体的な数字で見てみましょう。

ポートフォリオのリスク水準は、主に国内債券クラスの比率によって大きく増減します。

株式部分を全世界株式クラス(世界の株式時価総額比率)に固定して、国内債券クラスを10%ずつ増やしていった場合の、最大損失(目安)のイメージを、拙著「お金は寝かせて増やしなさい」の執筆原稿より引用して掲載しておきます。

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(出所:拙著「お金は寝かせて増やしなさい」執筆原稿)

株式100%の資産配分で投資すること、例えば、人気の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」に100%投資するということは、100万円が1年後に、最大で143万円に増える可能性がある一方で、最悪の場合67万円に減ってしまうことを許容するということです。(全投資期間を通じて、ではなくたった1年後ですよ!)

しかも、これはあくまでも確率的な目安なので、これを超える損失が絶対にないという保証はありません。細かい話をすると、2標準偏差の範囲内に収まらない4.5%のうち半分の2.25%の確率で、上記の最大損失金額を超える可能性があるといえます。

これは、いくら「国が勧めるから」「みんなが始めたから」といっても無しにはならない、投資家が必ず背負わなければならないリスクの確率・統計的な数字です。


◆是々非々(よいことをよいとして賛成し、悪いことは悪いとして反対すること)でいこう

私は正直にいって、毎日新聞のすべての投資関連記事が正しいとは思っていません。むしろ、毎日新聞に限らずメディア全般の金融リテラシーは酷いなと思うことの方が多いです。

昨年夏の「年金2000万円不足」騒動の時には、金融庁の金融審議会がまとめた報告書「高齢社会における資産形成・管理」のごく一部を切り取って、「国が年金不足を認めた!」と騒ぎ立てたことは記憶に新しいです。

(ご参考)
2019/06/24 「年金2000万円不足問題」のばかばかしさ - 梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)

また、毎年の恒例行事として、公的年金の短期(四半期)の運用結果が良い時はスルーして、悪い時だけ鬼の首を取ったような大騒ぎで年金叩きをします。個人の資産形成に関連したニュースでまともな報道をするのは、ごく一部のメディア(のごく一部の記者)だけだと感じます。

無理もない事情もあります。複数の新聞記者に聞くところによると、社内規定により、記者本人の投資は制限がかかっているそうです。個別株はNGで投資信託ならOKなど濃淡はあるようですが、面倒な規制がある。だから、多くの記者は預貯金しか経験がなく、批判コメントのように「ノーポジション」の記者もいると思われます。

しかし、上記の毎日新聞の記事に限っていえば、リスクの説明とよくある誤解、個人がリスクとの向き合い方を考える必要性について、正しい内容が書かれていると私は考えます。是々非々(よいことをよいとして賛成し、悪いことは悪いとして反対すること)で評価したいです。エラそうですんません。

個人投資家は、「何も知らない新聞記者にコツコツ投資、インデックス投資をdisられた」と怒るのではなく、これを機に、投資対象のリスク水準を数字でしっかりと認識して、自分のリスク許容度の範囲内になるように資産配分を考える機会とした方が有意義だと思います。

インデックス投資は、資産配分しだいで低リスクにも中リスクにも高リスクにもなります。「国が勧めるから」「みんなが始めたから」ではなく、リスクを見て資産配分を「自分で」決めるのですぞ。

ゆめゆめ忘れることなかれ。

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Posted by水瀬ケンイチ