余命宣告を受けたコワモテの事業再生屋が、10代の若者へ遺したメッセージ

水瀬ケンイチ

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今日は、あるフォロワーさんからのメッセージで教えていただいた、1冊の古い本をご紹介したいと思います。

お金で泣かない大人になれ!―本当は恐ろしいお金とのつきあい方」(田崎達磨著)です。



本書は著者の田崎達磨氏の「遺作」で、既に絶版となっていることもあり、あまり長く書くつもりはありません。ただ、胃がんで余命宣告を受けたコワモテの事業再生屋が、新潟県燕市の中学生へのお金の講演会で最後に伝えたかったことはいったい何だったのか。

それだけは伝えられたらいいなと思い、ご紹介させていただきます。

目次です。

第1章 お金で泣かない大人になれ!
第2章 お金の勉強をしよう!
第3章 大人になること、そしてお金について
第4章 お金についてのレッスン
第5章 お金のふしぎ
第6章 社会人になったら気をつけたいこと
第7章 お金で苦労しない大人になるには
第8章 タダほど高いものはない!
第9章 お金と命

お金で泣かない大人になれ!―本当は恐ろしいお金とのつきあい方」(田崎達磨著)


目次を見ても、何について書かれたマネー本なのか、いまいちわからないかもしれません。

本書はズバリ、若者の借金についての注意喚起本です。

借金の注意喚起といっても、学校へ行くための奨学金や住宅を購入するための住宅ローンを否定しているわけではありません。しっかりした目的と十分な計画性があるものならいいです。

本書で問題視しているのは、気軽にお金を手にすることができる「消費者金融」(本書出版当時は「サラ金」が一般的な名称でした)や「カードローン」「クレジットカードのリボ払い」です。

そして、それらを重ねるうちに、ふつうの人がいとも簡単に「多重債務者」になってしまうことです。そして一度このループに入ってしまうと、詐欺師の「優良顧客」リストに名前が載り、何度もむしり取られることです。

いずれも、れっきとした借金なのですが、可愛い動物やタレントを使った明るいイメージのテレビCMや広告で、ふつうの人が見ても借金と意識させないように巧妙に仕組まれているものだといいます。

次のうちどんな人が多重債務者になるのでしょうか?

1. 真面目な人
2. 几帳面な人
3. 潔癖な人
4. ルーズな人

答えは、1~3の人だと著者はいいます。一見ダメそうな4のルーズな人は、借金をきちんと返済しないのでブラックリストに載り、どこからも借金することはできなくなるから多重債務者にはならない。

逆に、なんとかして、他から借りてでも借金を返そうという真面目で、几帳面で、潔癖な人ほど多重債務者にいともかんたんになってしまう。借金取りたては、善人にこそ効くのです。

著者の友人が自殺してしまった話が書いてあります。

事業が経営不振に陥り、借金をする際に連帯保証人になってくれた親友に迷惑をかけたくないがために、保険金を当てにしての自殺だったそうです。

命の価値は資産とは比べられません。

「命より大切なものはありません! 命がお金よりも軽いはずがありません!」

著者は特大級の文字でそう記しています。

お金の教育として、10代の中学生にする話ではないかもしれないと悩んだそうですが、死期が迫っている50代の著者が10代の若者にいちばん伝えたかったお金の教育は「心」だったとあります。

お金に負けるな、お金で死ぬな。幸せとは、志とは、未来とは。

講演会では10代と50代という世代のギャップを超えて、生徒、教師、PTAの方々から「感動した」という感想をもらったそうです。

著者は講演会の内容を本にまとめようと決心しましたが、2006年10月に亡くなりました。そして翌年、2007年6月に出版されたのが本書です。文字通り「遺作」となりました。

余命宣告を受けた事業再生屋が10代の若者に最後に伝えたかったのが、借金への注意喚起と心の話だというのは、含蓄があると思います。

事業再生という「お金の修羅場」で仕事をしていた著者には、若者の気軽な借金がふつうの生活と隣合わせのお金の「危機」に見えていたのだと思います。

私もお金や投資についてブログや本に書かせていただいていますが、いま現実をつぶさに見た時に、若者にいちばん最初に求められているお金の知識は、借金への注意喚起なのかもしれないと思いをあらたにしました。

のちの貸金業法の改正で、いわゆる「グレーゾーン金利」が廃止され、上限金利は金額に応じて年15%~20%に引き下げられました。それでも、リスクを負った投資の平均期待リターンがせいぜい年5~6%であることを考えると、この借金の金利はバカ高いことには変わりません。

本ブログの読者の皆さまで学生のかたは少ないかもしれませんが、いま一度、消費者金融のカードローンやクレジットカードのリボ払いなどの安易な借金にはご注意いただけたらと思います。

インデックス投資を含めて、「投資は借金をすべて返済してから」のお楽しみということを、私からお伝えしたいと思います。


以下の過去記事は、投資を始める前の「家計診断」を自分でやる方法について書いたものです。ハコの形で借金返済を優先すべしということがわかる内容にもなっていると思います。ご興味がありましたら、ぜひご覧ください。

投資を始める前の「家計診断」を自分でやる方法

ミもフタもないお話ですが、世の中には、家計的に投資をやっていい人と、やらない方がいい人の二種類がいらっしゃいます。しかしながら、家計的に投資をやっていい人がひたすら貯金に勤しみ、本来やらない方がいい人が熱心に投資して苦戦しているケースがしばしば見受けられます。投資を始める前の、この出発点の判断を間違えると、将来、苦しい局面に追い込まれかねません。投資は自己責任で自由にやればいいという考え方もありま...

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Posted by水瀬ケンイチ