メディアのイケイケどんどんの威勢のいい記事にご注意
水瀬ケンイチ
ちょっと見ていない間に、日経電子版に株式市場に対してイケイケどんどんの威勢のいい意見やコラムが増えているように感じます。
「株式などのリスク資産は全体の半分以下に抑えましょう」。1990年代半ば。まだ世の中に登場し始めた当時のファイナンシャルプランナー(FP)に個人の資産運用方法を尋ねると、決まってこんな答えが返ってき
「日経ヴェリタス」創刊以来の名物コラム。毎回1人の個人投資家を取り上げ、その人の投資歴の泣き笑いを赤裸々に紹介しています。 今回はタナカユウキさん。関西在住の独身アラフォー。残業が多く毎日相場は見てい
米大統領選挙は注目の第1回討論会が終わり、民主党のバイデン候補が、トランプ大統領に対するリードを広げたと言われる。だが筆者は、バイデン氏は有利であるものの、その差は僅差でトランプ氏が逆転することもあ
今は岩井コスモ証券のインターネット取引で毎日100回以上の注文をして、月の売買代金も4億円前後ありますが、2002年に66歳でデイトレードを始めたとき、パソコンと呼べるものは証券会社の店頭にあるQU
最近のイケイケどんどんの楽観的記事の数々です。
世の中には、私たち長期投資家だけでなく、短期投資家やデイトレーダーなどいろいろなスタイルの投資家がいます。市場のふところは深いので、様々な方法で利益を出すことができます。
だから、新聞は特定の投資スタイルの投資家のためだけに書かれているものではないということは承知しているつもりです。新聞記者さんたちや登場している個々人を貶すつもりは毛頭ありません。
しかし、それを差し引いても、最近のメディアに株式投資に対してイケイケどんどんの記事が一気に増えている風潮は、気味が悪いと感じます。
2020年の2月頃、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて株式市場が暴落した「コロナショック」。新聞を始めとしたメディアが、この世の終わりみたいな悲観的記事ばかり報道していたのは、半年ちょっと前です。
米国市場にコロナショック 記録ずくめの1週間(写真=ロイター)
【ニューヨーク=宮本岳則】新型コロナウイルスの感染拡大を受けた今週(2月24~28日)の米国金融市場は記録ずくめの1週間となった。ダウ工業株30種平均は28日まで7日続落し、週間下落率は12%を超え
「2008年のリーマン・ショックと重ねがちだが全く異なる」――。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う金融市場の動揺をめぐり、日銀内ではそんな雰囲気が漂う。米株価が史上最大の下げ幅を記録するなど混乱の様
今週は3日に主要7カ国(G7)で10年国債利回りが1%を超える国が一時消え、5日には米国10年債で初めて0.8%台を付けた。新型コロナウイルスが広がり、世界中がリスクオフになっている。今回の状況はリ
新型コロナウイルスの猛威を前に、グローバリズムの行方に暗雲が垂れこめている。感染拡大で企業のサプライチェーン(供給網)は乱れ、人々の移動は制限され、国際協調のほころびも目立つ。米トランプ政権下で逆風
新型コロナウイルスの感染拡大の影響は中小企業の経営を苦しめている。北海道中小企業家同友会の守和彦代表理事は、中小企業の経営が立ちゆかなくなれば地域の崩壊を招きかねないと警鐘を鳴らす。行政や金融機関に
新型コロナウイルスの感染拡大による影響が雇用や生産を直撃している。総務省が29日発表した4月の休業者数は597万人と過去最多だった。非正規の職員・従業員数(実数ベース)は前年同月比で97万人減少した
パートやアルバイトなど非正規の雇用に厳しさが続いている。雇用者数は前年同月と比べると120万人減った。男女別に見ると女性84万人、男性36万人で、女性への影響が大きい。
つい数か月前の悲観的記事の数々です。
……いくらなんでも、変わり身が早すぎやしませんか。
たしかに、今からふり返れば、結果的にコロナショックは市場下落のスピードが異常に早かったかわりに、回復のスピードも早かったです。半年で元どおりかそれ以上になっています。
日米の株価が上昇し、2月下旬のコロナショックの暴落ぶんはいったん概ね回復したようです。...
だからといって、新型コロナウイルス感染症が収束したわけでもないのに、株式市場に対してやたら前のめりの楽観記事ばかりが新聞記事に出るのは気味が悪いです。
せめて、投資にはリターンだけでなくリスクもあることを併記する慎重さを持ち合わせた記事であればよいと思います。ですが、楽観記事は単に楽観的なだけで、元来投資がもっているリスクを振り返って、勝って兜の緒を締めようというスタンスがほとんど見られません。
楽観にも悲観にも、新聞報道は一辺倒すぎる。世の中は本当に「喉元過ぎたら熱さ忘れる」のだなあとあらためて思い知らされます。
いまやっている資産運用が、自分のリスク許容度の範囲をこえていないか。年間いくらまで(何%)までの損失なら耐えられるか。これが重要だと思います。上記日経記事にあったような「株式100%」の資産配分で本当に大丈夫?
リスク許容度は、市場が下落した時に確認しましょうという解説がなぜか多いですが、本当は市場が上昇している時に「こそ」チェックすることが大切です。
上がりすぎた資産を売却してリバランスすれば利益確定になり一部「勝ち逃げ」できます。市場が下落してから「自分のリスク許容度を越えてました…」と気づいても、資産は想定以上に減ってしまった後でもう「手遅れ」なのです。
私がおすすめするリスクの意識の仕方は、市場がぐぐっと上がった時には、「上がった金額のプラスをそのままマイナスに変えてみて、その下落にも耐えられるのかどうかを自問自答する」ことです。
このブログでも何度か書いていますが、「浮かれていたところ我に返ることができる」とまあまあ好評です。
投資のリスクは、発生確率が高いと考えられる期待リターンを中心に、左右対称につりがね型に発生確率が広がっていると考えられています。正規分布とよばれているシンプルなモデルです。
厳密に言うと、実際の株式市場はきっちり正規分布に従うわけではないという研究(つりがね両端の発生確率が極めて低いはずの事象も想定以上に発生する=ファットテール)もありますが、大まかにはこのモデルで市場を捉えて世の中の実務は動いていると思われます。
そう考えると、上がった分だけ下がる可能性も同様にあると考えるのは、ごく自然な「目安」だと私は思っています。
理論の厳密性を求めて正規分布を前提とした「目安」をいっさい信じないという人がたまにいますが、だからといって、上げ相場で浮かれてリターンだけを追求しまくることが、投資を継続できる有効なスタンスだとは思いません。
目安は目安ですが、羅針盤として大いに活用しながら、自分の資産運用の航路を守っていきたいと考えています。
リスクについては、こんな記事もよく読まれています。
【第5回】 保有資産の値動きの9割を決める資産配分の「肝」は意外にも日本債券だった!
前回の連載(第4回 保有資産の値動きの9割がこれで決まる!? アセットアロケーション(資産配分)を簡単に計算する)の内容が、とても重要だったので簡単に振り返ります。 アセットアロケーション(資産配分)で保有資産の値動きがほとんどが決まってしまうこと、自分のリスク許容度(耐えられる最大損失金額)の範囲内でアセットアロケーションを作ること、そして、保有資産の期待リターンとリスクを自動計算してくれる超便利...
- 関連記事
-
-
自分がやっている投資はバイ&ホールド戦略なのか、トレンドフォロー戦略なのか 2021/01/09
-
個人投資家の9割が株で負けている理由と「信用取引評価損率」の推移 2021/01/06
-
2020年12月末の資産配分(アセットアロケーション)と主な投資商品、今後の投資方針 2021/01/02
-
いまの20代の若者の方は危機に対する対応がスマート 2020/12/27
-
Merry Christmas ! 2020/12/24
-
公務員に向いている投資手法は何か 2020/12/21
-