「相場予想は時間の無駄だ」、ふだん感じていたことが言語化されてスッキリ!

水瀬ケンイチ

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PRESIDENT Onlineに、「相場予想は時間の無駄だ」レジェンド投資家が“儲かる話”に耳を貸さないワケという記事が掲載されています。

ふだんモヤモヤしながらも、私が感じていて確信めいたものを持っていることが言語化されていて、まさに「我が意を得たり」という内容なのでご紹介します。

「相場予想は時間の無駄だ」レジェンド投資家が“儲かる話”に耳を貸さないワケ 勝てる投資家は周りに流されない

11月17日、日経平均株価の終値が29年ぶりに2万6000円を上回った。いまは株の買い時なのだろうか。農林中金バリューインベストメンツ最高投資責任者の奥野一成氏は「短期的な株価の動きに一喜一憂したり、専門家の予想を当てに投資したりしてはいけない。投資は長期で考えたほうがいい」という——。


詳しくは、上記の記事をご覧いただきたいのですが、無理やりまとめると、専門家も証券会社も市場予想はできないから、あてにせず自分で長期投資をするのがよいという内容だと思います。

専門家も証券会社も市場予測はできないとは、どういうことか。そんなことがありえるのか。

記事では、2016年の米国大統領選挙のことを引き合いに出しています。トランプ当選を予測した専門家はほとんどおらずヒラリー・クリントンの勝利、それも圧勝を予測していました。しかも、万が一トランプが当選した場合、株価は下落すると予測していました。

ところが、ふたを開けてみたらトランプ大統領が勝利、しかも株価は予測に反してぐんぐん上昇を続け、記事では専門家は「二重の間違い」をしたと指摘しています。

私も、当時、世界中のアナリスト、ストラテジストが「もしトランプが大統領になったら株価は暴落する」と断言していたのを見ています。実際は、トランプ大統領誕生で1日だけ株価が下落したものの、その後は大方の予想に反して株価は暴騰しました。

専門家たちが急に静かになり今度は「トランプ・ラリーだ!」と称賛しはじめるという鮮やかな手のひら返しをしました。私はそれを当時テレビCMでよく流れていたチベットスナギツネのような冷ややかな目で眺めていました。その時のブログ記事がこちら。

トランプショックが1日でV字回復してその後もトランプ・ラリーが続く過程で、大統領選予想を盛大に外し、悲観論を煽っていたメディアや識者がしりすぼみ的に静かになっていく様には失笑を禁じえませんでした。

大みそかだよ!2016年 梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー的、3大ニュース - 梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)より


人の相場予想などそんなものだと、私も経験上、理解できます。他にも、世の中の専門家が予測を大外しした経験が山のようにあります。

過去の研究でも、相場の転換点を当てることは難しいことが指摘されています。

カルガリー大学のリチャード・ウッドワード教授とジェス・チュア教授による研究の結果は、長期投資として株式を保有し続けるほうが、マーケット・タイミングをはかって売買するよりもうまくいくことを示している。なぜなら、強気相場の期間に株式から得られる利益は、弱気相場によって被る損失よりも遙かに大きいからだ。

両教授は、マーケット・タイミング型の投資家がバイ・アンド・ホールド型の投資家のパフォーマンスを上回るためには、70%の確率でマーケット・タイミングについて正しい判断を下さなければならないとの結論を下している。7割もの打率で市場の転換点をあてることのできる人物に、私はついぞお目にかかったことがない。

ウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資の不滅の真理」(バートン・マルキール著)より


余談ですが、私が尊敬する経済評論家の山崎元氏は講演やセミナーで「予想は嘘よ(よそうはうそよ)」と切り出して笑いを取るのが定番ネタとなっています。

専門家の相場予想とは「当たりゃしないもの」とわかったうえで楽しむという、大人のたしなみであると言えましょう。良心的に捉えれば、予想自体ではなく、専門家がなぜそのような予想に至ったのかという「考え方の過程」を見て、視点や切り口を参考にするものなのでしょう。

さて、上記記事が素晴らしいところは、「相場予想は時間の無駄」で終わらず、もう一歩踏み込んで、予想が当たらない構造的な要因についても考察されているろことです。

ひとつの要因が、「サラリーマン予想屋は、攻めた予想をすることのアップサイドが小さい割にダウンサイドが大きいので、真面目に予想をしようというインセンティブが湧かない」というもの。

しょぼいなぁと思いますが、私自身も雇われサラリーマンなので、荒唐無稽と周囲に思われる仕事よりも、無難で確実な仕事をしようとする考えは、よく理解できます。

だからこそ、ビシっとしたダークスーツにネクタイ姿のいかにも金融専門家ですという風貌は、サラリーマン根性を覆い隠した見かけだおしかもしれない、ということもまた、よく理解できます。私もふだんはチノパンとシャツなどラクな格好で仕事をしていますが、社内外でここぞという交渉や商談を行う際は、ビシッとスーツとネクタイで臨みます。

なにせ「人は見た目が9割」(竹内一郎著)というビジネス書がベストセラーになるくらいですから、仕方がありません。

もうひとつの要因が、「知識人バイアス」というもの。

世の中を懐疑的にみて、慎重論を述べている方が「賢そう」に見えるという要因です。要するに、大衆から「バカ」だと思われたくないという専門家の見栄です。

これが私がモヤモヤと感じていた肌感覚をとてもよく言語化してくれています。2008年のリーマンショックの時、「資本主義経済の崩壊」「すべての銀行が国有化」など、まるでどれだけ悲観的かを競っているかのような専門家たちの極端な悲観論の数々を見て感じたモヤモヤについて、当時私はこんなブログ記事を書いていました。

悲観論は知的に見える

誰のものか忘れてしまいましたが、「悲観論は知的に見える」という言葉を覚えています。たしかに、このような暴落相場の中で悲観論を延々と書けば、注目を集めるだろうし、時代を読めているようなイメージがしてなんとなく知的に見えます。しかし、声を大にして言いたいのは、将来を正確に予測できる人など誰ひとりとしていないということです。大切なことなのでもう一度言います。将来を正確に予測できる人など、誰ひとりとしてい...


PRESIDENT Onlineの記事では、これを「知識人バイアス」という言葉で言語化しています。

そうそう、言いたかったのはそういうことなんです。知識人バイアス。ああ、なんだかとてもスッキリしました。

今日もまたテレビでしかめ面の専門家が「あれもダメ」「これもダメ」「このままでは大変なことになる」と悲観論ばかり語る報道バラエティが放送されると思います。

「この人の意見は知識人バイアスにとらわれていないか」という健全な猜疑心を心の隅におきつつ、ほどほどの距離感でつきあっていきたいと思います。

上記記事では、それをふまえてどうすればよいかという対策まで書いてあるのがさらに素晴らしい。

他人の意見や雰囲気に流されない「自分の価値観」で、時間を味方につけるプラスサムゲームの長期投資を行う

はい、異論ございません!

上記記事はとてもよい知見にあふれていると思います。ただ、作者は人気アクティブファンド「おおぶね」シリーズの運用会社のCIO(最高投資責任者)であり、リンクされている別の記事では、「必ず伸びる企業を見抜く」といった銘柄選定や投資タイミングを図るアクティブ運用をすすめています。

その点に関しては、上記記事のロジックからはアクティブ運用であることはべつに必須ではなく、私が実践しているインデックス投資(世界中の株や債券に分散したインデックスファンドの積み立て投資)も、時間を味方につけるプラスサムゲームの長期投資だというのが「自分の価値観」です。

PRESIDENT Onlineの記事にあるとおり、専門家や証券会社の予測などあてにせず、自分で決めたスタンダードな投資方針を守って長期投資をしよう、あらためてそう思いました。

スッキリする良記事をありがとうございました。

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Posted by水瀬ケンイチ