「にわか投資家」はプログラムに任せて、個人投資家は堂々と「ほったらかし投資家」に
水瀬ケンイチ
日本経済新聞 電子版に「にわか投資家」について書かれたセゾン投信中野会長の『なぜ投資? 「株が上がってるから」の間違い』というコラムが掲載されています。
投資の世界で「積立王子」のニックネームを持つ筆者が、これから長期投資に乗り出す後輩の若者にむけて成功の秘訣を伝授するコラムです。20年前にはITバブルがあった投資を始めたい人は確かに増えている。コロナ禍の下、大手ネット証券の口座開設数は劇的に増加していると聞く。多くの人が今見ている右肩上がりの上昇相場に触発されているようだ。株価が上がっているから今が投資の始め時といった風潮が強まっているね。
誰だって最初は初心者で「にわか投資家」なのだから、なにもそこまで言わなくてもいいじゃん…と思って読んだら、そういうことではありませんでした。
ブームに乗っかった投資家が、上げ相場では、遅れてはならじとばかりに目先の欲でギラギラした目で大挙して参入してきて、下げ相場では一転してパニック売りに走り「投資はもうこりごり」と退場する。そんな投資家のことを指して「にわか投資家」といっているようでした。これは手厳しい。
資産形成を目的とした「長期投資家」は、相場が下がることも想定してどっしり構えられるから、積み立て投資が適していると積立王子はコラムで主張していました。
さすが、積立王子。主張にブレがない。「この先もマーケットは上昇と下落を繰り返していく。しかし世界経済は長い目でみれば成長を続けるものだとすれば、マーケットの価格水準は成長軌道に沿って相応に切り上がっていく」(上記コラムより)という言葉が心に響きます。
私もまったく同感で、長期積み立て投資家です。しかしながら、市場自体には様々な立場の投資家が必要だとも考えています。買い持ちするだけの長期投資家だけでなく、激しく売買する短期投資家もいないと、必要な時に適切な価格で売買することができません。
短期投資家の主役はプロ、それもHFT(High Frequency Trading)と言われる高速・高頻度で自動売買を繰り返すプログラムです。取引所システムと同じ場所にサーバーを置くコロケーションサービスを利用し、最短の執行時間で大量の売買注文をくり返します。証券会社を経由する個人投資家の手動の短期売買では、とてもかなう相手ではありません。
一方で、高速・高頻度で投資判断をし続けるHFTのプログラムは、「何もしないこと」をずっと継続することが苦手です。
仕事に、趣味に、子育てに、忙しくしている人間は、あっという間に1週間や1ヶ月くらい経ってしまい、投資のことなど平気で忘れられます。というか、人生、投資どころではないことの方が多い。ちなみに、私の妻は1~2年くらい平気でネット証券のサイトにログインすらしません。
そういう人間が存外強いのが、長期積み立て投資です。もちろん、投資の基礎を勉強することは大切ですが、一度基礎を学んでしまえば、売買するかどうかの投資判断を頻繁にする必要がないのが長期積み立て投資のいいところです。実に人間向きな投資法だと私は実感しています。
積立王子の仰るとおり、資産形成を目的とした「長期投資家」は相場が下がることも想定しているので「どっしり構えられる」し、水瀬流にいえば「ほったらかせる」のだと思います。
「にわか投資家」はプログラムに任せて、個人投資家は堂々と「ほったらかし投資家」になればよいのではないでしょうか。
全然関係ありませんが、長年、長期積み立て投資を啓発してきたセゾン投信中野会長におかれましては、そろそろ「積立王子」ではなく、「積立王」もしくは「積立大王」に即位してもよい時期に来ている気がします。ご検討を👑
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