引用データはいいが結論がおかしい(不穏な空気が漂う)記事

水瀬ケンイチ

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投資信託について、引用データはいいが結論がおかしい(不穏な空気が漂う)記事があったのでブログに記録しておきたいと思います。

女性に強い「私のお金は私のもの」意識、女性特有の長生きリスクに投信業界は回答を用意できるか?| モーニングスター

上記記事では、フィデリティ投信が今年1月に行った「女性とお金に関する調査」を引用して、モーニングスターが女性のお金に対する意識を解説しています。女性の方が長生きをするという現実が、男女の間の「お金に関する意識」にも色濃く反映されているとの指摘です。

「男性60歳、女性55歳の夫婦がいるとして、ともに平均寿命まで生きたとすると、男性が82歳で亡くなった時に女性の年齢は77歳で、そこから平均寿命の87歳まで10年以上が残っている。この10年間を女性は、男性のサポートなく生活していく必要がある」という現実と、「女性の方が、貯蓄や年金についてわが物として抱え込んでいたいという気持ちになる」という指摘は、なるほどとうなずきながら読み進めました。

ところが、後半から主張の雲行きが怪しくなります。

近年の投信業界は、「貯蓄から資産形成へ」の流れを後押しし、「ノーロード・低コストのインデックスファンド」に代表される「資産形成型商品」の開発が主流だった。

そのとおりだと思いますが、「だった」ってなんだろう?

「ロボテック」「AI」などのテーマ型投信の投入は、高い産業の成長性に期待して、より高い資産の成長への投資機会を提供するもので、「資産形成型商品」の範疇に入るだろう。

入りません(断言)。

テーマ型投信は、投信業界が儲けるための高コスト商品の代表格です。過去には環境、バイオ、シェールガスなどその時代時代のトピックスに則したテーマ型投信が登場してきました。しかし、新規投信を組成するには金融庁への届け出など数ヶ月の時間がかかり、実際に新規テーマ型投信が発売される頃には関連銘柄の株価はすっかり高騰していて、投資家が買うと自動的に「高値掴み」となってしまう。

結果的に、構造的な低パフォーマンスが続くというのが過去のデータを見る限り通例です。「時代のあだ花」とでもいうべきか。

テーマ型投信はテーマの流行り廃りと株価水準の見通しを持てる人が、タイミングを見計らって買い、ピークアウトする前に売り抜けるというような玄人向けの商品だと思います。相場にかまっていられない資産形成期の個人投資家にとっては、テーマ型投信は見送って差し支えない投信の代表格だと私は考えます。

<ご参考>
テーマ型投信、やっぱりお勧めできない3つの理由―楽しく増やす!「北澤式」資産運用術【20】 - |QUICK Money World -

リスク管理を第一の重点要素とした「資産活用世代向け商品」の開発も続いている。昨今の人気商品には、アセットマネジメントOneの「投資のソムリエ」があり、2018年~19年には東京海上アセットマネジメントの「円奏会」などが支持を集めた。

国内に6000本の公募投信があるなかで、各メディアで投信の事例として判で押したように「投資のソムリエ」が出てくるのが非常に気持ち悪いというのはいったん横に置いておくとして、いくらなんでも「円奏会」はない。

「円奏会」といえば、2018年の「つみたてNISA」制度開始以降の丸3年で、対象ファンド140本中139本が含み益である中、唯一含み損という不名誉なデータが、先月2021年2月、界隈を賑わせたばかりです。2018年~2019年に売れた(売った?)のは事実かもしれませんが、目下のところ、つみたてNISAの代表的ダメ投信です。(今後もダメとは言いませんが)

<ご参考>
つみたてNISA丸3年、対象ファンド140本中なんと139ファンドが含み益! - 梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)

個別の投信(特にアクティブファンド)の評価が難しいのはわかります。去年のトップパフォーマンス投信が今年はビリ近くに低迷するようなことはよくあります。

しかし、くり返しになりますが、国内には6000本の公募投信があります。リスクコントロール型の投信など他にいくらでもあり例示には事欠かない中で、特に1~2本の投信名を出すのであれば、それに値する投信を出さないと失笑を買うだけだと私は思います。

一般的に、加齢とともに投資家のリスク許容度は下がっていきます。相場で損失を被った場合のリカバリーの期間が短くなっていくからです。だから、投資家は加齢とともに保有資産のリスク資産(株式、株式投信など)比率を下げて、無リスク資産(現金など)の比率を上げていきます。これをリアロケーションといいます。高齢者のリアロケーションは、リスクコントロール型の投信に目一杯投資することではなく、投信を減らして現金の比率を高めるのがセオリーです。

夫に先立たれる不安を抱えた高齢女性が「円奏会」に投資することが適切だと、当該記事の執筆者は本気で考えているのでしょうか。それとも、その銘柄名を記事に出すことで、なんらかの便益でも受け取っているのでしょうか。

記事の最後にはご丁寧にその銘柄の商品ページと解説動画へのリンクまで付いているところを見ると、不穏な空気が漂っているように感じてしまいます(個人の感想です)。なお、当該記事に執筆者の署名はありません。


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