運用コストが高いアクティブファンドはリターンもシャープレシオも低い傾向

水瀬ケンイチ

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モーニングスターに、運用コストが高いアクティブファンドはリターンもシャープレシオも低い傾向がわかるデータが掲載されています。



上記グラフは、先進国株式クラスのアクティブファンドについて、過去5年のフィーレベル(≒信託報酬の水準)を、「安い」「平均より安い」「平均的」「平均より高い」「高い」の5段階に分類し、それぞれのリターン実績とシャープレシオを比較したグラフです。

まず、リターン実績は、フィーレベルが「安い」「平均より安い」にカテゴライズされるファンドが高くなっています。それだけでこの記事は終わっても十分なデータだと思いますが、このグラフはシャープレシオの比較もあるのが素敵です。

シャープレシオとは「単純なリターンの大小ではなく、そのリターンを得るためにどれ位のリスクをとっているかを計測する。数値が大きいほど運用効率が高いことを示す」(野村證券証券用語解説集より)もので、「{(ポートフォリオの平均リターン)-(無リスク利子率)}/(ポートフォリオの標準偏差) 」で計算されます。

シャープレシオで見ても、フィーレベルが「安い」「平均より安い」にカテゴライズされるファンドが高くなっています。運用コストが安いファンドの方が、とったリスクを効率的にリターンにつなげていて、効率的に運用されている傾向があるということを示しています。

ここ1~2年、某金融機関のオウンドメディアの記者が、「リターンさえ高ければアクティブファンドの運用コストは高くても良い」「アクティブファンドの選定基準に運用コストを入れてはいけない」というような“低コストネガティブキャンペーン”を張って、同様の趣旨のコラムを何本も何本も垂れ流していました。しかし、モーニングスターのデータで見る限り、少なくとも先進国株式クラスにおいて、それは誤りであったといえるでしょう。

なお、運用コストが高いアクティブファンドはリターンもシャープレシオも低いという「傾向」と、個別に見てアクティブファンドの中に高コストだけど高リターンのレアケースな銘柄が「一部存在すること」は相反しません。ただ、ごく一部の優良アクティブファンド(しかも顔ぶれは毎年変わる)を投資家は自分で判断して探せ、という主張は、たとえるなら「干し草の山から針を探せ」というのと同じ。不可能ではないが苦労の割に報われず、費用対効果、いわゆる「コスパ」が悪すぎるというのが、投資が趣味でも仕事でもない一般生活者の感覚です。

一部のレアケースが存在することを、あたかも全体の傾向であるかのようにすり替えた主張はよろしくない。百歩譲ったとしても、アクティブファンドの選定基準から運用コストを外すべきだという主張は極めて不適切です。

金融業界側の苦しい事業状況をふまえてのことだったのか、逆らえない上司の方針だったのかわかりませんが、事実と異なる情報発信については、個人投資家の立場から「No」を突きつけたいと思います。


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