モーニングスターの記事(記者)選定スタンスに対する懸念と提案

水瀬ケンイチ

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モーニングスターに、「つみたてNISA」(少額投資非課税制度)の対象商品について自由がない「お仕着せ」だとする記事が掲載されています。

つみたてNISAはお仕着せだが使いよう、資産形成の基礎に大胆な自由を足し合わせ

つみたてNISAは「使い勝手の悪い制度」だが、だからといって使わないのはもったいない。上から与えられる「お仕着せ」は、「アベノマスク」のように大概は満足度の低いものだ。ただ、使い勝手は悪くても効用はあるのだから工夫して使えば、その効果の意味も出てくる。


「つみたてNISA」の対象商品に、先進国株式や全世界株式連動の投信はあってもNASDAQ100連動や2倍3倍のレバレッジ型投信がないのでリターンが劣ると文句を言っています。「つみたてNISA」の対象商品に、対象外の商品を足し合わせてはじめて効果が出てくるという内容でした。記者の名前が書かれていない無署名の記事なので、これはモーニングスター全体の意思なのだと私は受け止めました。

「つみたてNISA」は長期分散投資に適した商品を金融庁が厳選したつみたて投資専用の非課税制度です。NASDAQ100などに一括投資したければ、「一般NISA」を選べばよいだけです。こちらは投資商品の制限が少なく投資手法もつみたてに限らない比較的自由な非課税制度です。他の選択肢があるにもかかわらず、それに一言もふれずに、ただ、「つみたてNISAは自由がないお仕着せだ」と批判するのはいかにも視野が狭い。恣意的な切り取り批判であると言われても仕方がない書きっぷりです。

そもそも、モーニングスターというメディアに対する長年の不思議なのですが、長年社長を務める朝倉氏は定期的に「長期・分散・低コストが良い」「アクティブファンドよりもインデックスファンドが良い」「日本の投信は高コストで米国よりも劣っている」と大規模セミナーで素晴らしいプレゼンをぶちあげます。誰も文句のつけようがない正論で、数々のご著書も同様の内容です。

そのわりに、部下である社員(記者)たちは必ずしもそうは思ってはいないのか、これまた定期的に、直近上昇しているだけの流行投信やレバレッジ・インバース型投信投信、仮想通貨をやたら褒めちぎる記事などを書いては掲載しています。特に、シャープレシオを持ち出すときには、まるで社長の朝倉氏のインデックスファンドが良いとの主張は間違いだと言わんばかりの特定アクティブファンドの「提灯記事」になるのが通例です。

投信評価・格付けがモーニングスターの主たる事業のはずです。しかし、投信評価会社とてその収入の大半は金融業界からの収入です。低コストなインデックスファンドは金融機関の手数料の儲けが少なく、高コストなアクティブファンドは手数料の儲けが多い。

理屈の上では朝倉社長が主張する低コスト・インデックスファンドが合理的だとわかっていながら、つい営業面でお世話になっているアクティブファンドのことも良いものだと書きたくなる、構造的インセンティブがあるはず。また、インデックスファンドはあくまでも初心者向けで、投資に慣れてきた中上級者はアクティブファンドに挑戦するのが王道であるかのような(ありもしないし合理的でもない)「手順」を夢想して書きたくなる構造的インセンティブが、モーニングスターの中にも必ずあるはずです。

これもまた大人の事情だろうと生暖かい目で、今まで15年以上見てきました。しかし、繰り返される二枚舌に「もうそろそろいい加減にしろよ」と思うようになってきました。

なぜなら、ゆっくりと「つみたてNISA」「iDeCo」「企業型DC」が一般に浸透してきた今、投信への投資はかつてのようにマニアだけのものではなく、ごくふつうの一般人が行うものになりつつあるからです。

金融業界のお約束を忖度できる投資家は、だんだんと少数派になってきています。だとすれば、メディアとしての投信評価について、「AではなくBが良い」「BではなくAが良い」「AもBも良い」「AもBもダメで、これからはCだ」みたいなとっ散らかった記事を無署名で書き続けるのは、もう潮時ではないでしょうか。いくら多様性が大切とかディスクレーマーがあるとか言ったところで、世間の常識に照らして明らかにおかしい矛盾した記事が量産されれば、今後、いつ誰に訴えられてもおかしくないと思います。

提案です。市場の懐は深いので、インデックス投資もアクティブ投資も、それぞれ独自で成立するカテゴリーです。モーニングスターの「ファンドの視点」「ファンドニュース」というごった煮のカテゴリーはそろそろ卒業して、たとえば「インデックスファンドの視点」「アクティブファンドの視点」と分けるとか、「ファンドニュース(コア)」「ファンドニュース(サテライト)」と分けるなどして、それぞれの立場で首尾一貫した内容を連載記事として書かせるコーナーをそれぞれ設置するなど、もうひと工夫が必要になってきたのかもしれません。

なにも変わっていないようで、刻々と時代は変わってきています。老婆心ながら、今のモーニングスターの記事(記者)選定スタンスに懸念と拙い提案をお伝え申し上げました。

上場企業であれば、時代の変化に合わせて変化し続けて永続的であれ。


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Posted by水瀬ケンイチ